休暇を取って街に下りたダイは、花街で懇意にしていた医者・ロウエンと再会し、彼からとある人への伝言を頼まれる。数日後、女王候補の筆頭格であるアリシュエルに招かれ、どこかギクシャクとした家庭環境や意外な素顔の一面を目にすることになり……。
夜会(の準備)楽しいなあ!!!
今回はとにかくもうミズウィーリ家で開催された「夜会」(の準備)の話が好きすぎて!!資金力に乏しいミズウィーリ家ではたった1度催すのが限界で女王選に向けて失敗できない夜会、人員も資金も足りない中でマリアージュがダイの化粧の力を駆使したとある催し──「仮面舞踏会」を思いつく、というお話なんだけど、女王候補として支援者が少ないこと、人員整理するのに致命的に人数が足りないこと、更には貴族たちが「化粧」に偏見を持っていること……などといういくつもの問題を画期的に解決していくという展開がとにかく気持ち良いし、その上でゲストたちが偏見を捨てて素直に「化粧の楽しさを味わえる」イベントになっていくのがめちゃくちゃ楽しくて、それに向けて主催するミズウィーリ家の人たちも忙しくなりながらも楽しく準備している姿を見ているのが楽しくて仕方なかった。そしてそれを企画したのがマリアージュ様というのがまた、2巻までの彼女を見ていると感慨深いものがありますね。あとがきでも言われてたけどイベント本体はオマケすごくわかります。
楽しい夜会からの報われない恋のお話に、感情が追いつかない
楽しい夜会の後は…というかまあ夜会の前から伏線は張られていたのですが、女王候補の最有力者・アリシュエルと花街の医者・ロウエンをめぐるお話。アリシュエルの幸せを願いって国を離れようとするロウエンと、父親からの過剰な監視を受けて疲弊していくアリシュエル。お互いに深く想い合うがゆえにすれ違ってしまう二人の恋の結末に、胸が苦しくなりました。決して万人に祝福される関係ではなかったのですけど、少しでも何かが噛み合っていたらもっと幸せな結末がどこかにあったと思うんですよね。ロウエンがアリシュエルともう少し良く話し合っていたら、ダイがヒースに二人のことを打ち明けられていたら……しかもそれがすべて、二人のことを思っての行動だったことがまたとてもやるせない。まあそれはそれとしてどうかんがえてもヤバいのはアリシュエルの父親だったので彼の人には相応しい報いを受けて欲しい…と思わずにいられない。しかしなんかこれ、結構本人はのうのうと生きてそうなのがまた本当にやるせないわけですが……。
成長したマリアージュ様のかっこよさがすごい
楽しいお話も悲しいお話もあって感情のジェットコースター的な意味で盛りだくさんだった3巻ですが、今回はとにかくマリアージュ様の成長で胸がいっぱいになってしまう巻でした。夜会の催しに関してこれまでになく積極的に周囲を引っ張っていこうとする姿には館の女主人としての成長を感じましたし、何よりも一番のライバルであり複雑な感情を抱いているアリシュエルを助け、叱咤する姿がかっこよすぎました。まだまだ軽い癇癪を起こしてダイ達を困らせるような部分もないわけじゃないけど、次期女王としての貫禄が身についてきたと言うか……いやこんなのはアリシュエルだって惚れてしまう。それにしてもあとがきによるとこの3巻でもまだ序章でしかないのか。女王選のシステムが面白くてこれがメインのお話のような気がしていたけど、確かにタイトルは「女王の」化粧師なのでどう考えても女王になってからが本番なんですよね……次はいよいよ序章である女王選の完結編とのことで、続巻が読めるのを楽しみにしています。