アベルの国で起こった革命を阻止し未来を描き出す日記帳も消え、平和な毎日を送っていたミーア。人のいない学園でつかの間の休暇を楽しんでいた彼女は未来からやってきた自分の孫娘・ミーアベルと出会う。自分の軽率な行動をきっかけにして、再び暗黒の未来に変わってしまったらしく…!?
ポンコツ姫とポンコツ孫娘の奮闘劇!
ミーアの未来の孫娘・ミーアベルを迎えての新展開。過去生とは全く違う状況、日記の導きもなくなって未来のバッドエンドを回避するカギは孫娘の記憶のみ…という正しいルートがほとんど見えない状態で手探りで右往左往する姿が新鮮で面白かった。それにしてもミーア+アベル=ミーアベルって安直すぎて微笑ましい。平和な未来のためには絶対に負けられないけど勝ち目などまったくない生徒会選挙、選挙させてしまったら負けるんだからどう考えてもラフィーナ本人を落とすしか切り抜ける方法はないわけだけど、ミーアが全くそんなこと考えてないまま思考がすれ違ったままラフィーナが勝手に勘違いして自爆していくのがもう清々しいし何もかも面白い。いやまあ、思惑がすれ違っているだけで冷静に考えるとミーアのとった行動は最終的には廻り廻ってラフィーナの求めている「対等な関係」に近いナニカだったのでは……と思えなくもないけど……いややっぱりだいぶ違うかな!?ミーアはそんな理由で彼女に手を差し伸べたわけじゃない(っていうか手を差し伸べてすらいない)んだよなあ。
蜘蛛の糸のような細い足場の上で繰り広げられる綱渡りをたまたま飛んできたヘリコプターで渡り切るみたいな展開、安定感があって大変に面白かったですが、その一方でどこまでも根は善人なミーアがおっかなびっくり起こした行動が、少しずつ彼女の周囲に強固な味方を増やしている…という展開が心強かったです。ティオーネをイジメていてミーアにとっちめられた貴族の子供たちが強い味方となって生徒会選挙を共に戦い抜いてくれる展開にはほっこりしてしまった。そしてミーアの親戚である四大公爵家のサフィアス、悪役にしても小物っぽいなあと思っていたら完全にミーアと同じタイプの根は善人なポンコツだったので今後に期待しかない。
次巻以降は未来のエリスの書いたヨイショ本がミーアの日記の代わりを果たすことになるみたいだけど、色々な意味で未来はどう変わってしまっているのかが気になる。というか日記を持ち歩くのはまだ違和感なかったけど、自分がヨイショされまくってる自伝を持ち歩いてるの色々な意味でハードル高いですよね。ミーア姫は強く生きて欲しい。
書き下ろしと特典SSも良かった
今回は本編も面白かったけど、後ろに入っている書き下ろしの中編と電子特典SSがすごく良かった。書き下ろしの中編は前巻で仲間になったディオン隊長の、ミーアベルの経験した未来での最期の記録。そしてディオンに命がけで逃してもらったミーアベルが過去のディオンと出逢うお話。戦いばかりだったディオンの生が、ミーアによっていかに変化していったのかがなんとなく見て取れる未来のお話でした。そしてそんな彼の忠義に生命を救われたミーアベルが、その記憶は持っていなくても精一杯その忠義に報いようと奮闘する姿が微笑ましい。そんな彼女の精一杯につきあわされて大の苦手なディオンと必要以上に接触することになったミーアは強く生きてほしいですが。
電子特典SSは昔懐かしのゲームブック形式で綴られる、ミーアの平穏な一日。選択肢を選んでいくと色んなキャラクターとのエピソードが読めるシステムになっているのですが、これのルードヴィッヒルートがすごく良かった。一度目の生の時のルードヴィッヒが夢の中で現在のミーアと会話をするという内容なんですけど、ミーアに軽口を叩きながらも滲み出る彼女への強い親愛の情に胸が熱くなってしまった。他のキャラのルートもどれもたいへん可愛かったです。
特典SSは小さい頃にゲームブックを膝に受けた世代なのでページの作りからしてもう懐かしさしかなかったですが正直紙でページをめくれない電子書籍でこの形やられると読みづらくてしょうがないですね。選択肢で該当のページに直接飛ぶくらいできなかったのか。