ティアムーン帝国物語4〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜 | 今日もだらだら、読書日記。

ティアムーン帝国物語4〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

「姫殿下、その叡智で我が師を説得していただきたい」
孫娘ベルと、未来改変の一歩を踏み出した元わがまま姫のミーア。帰国した彼女を待ち受けていたのは、忠臣の無茶振りーー偏屈頑固な超変人賢者の説得だった! 理由を聞けば、ある公爵令嬢の妨害工作で、開校目前だった聖ミーア学園の学園長候補が全員逃走。唯一の頼みの綱はその師匠らしく......?  目指すは、来たる大飢饉に備えた「未来の天才児たちによる新種小麦の開発」。優秀な長を手に入れ、帝国に学問の門戸を開くべく、叡智・ミーアが動き出す! 「こうなったら、わたくしが教鞭を取って差し上げますわ!……あらアンヌ、なぜ止めますの?」 保身上等! 自己中最強! 小心者の自称敏腕教師が、孫娘と運命に徹底抗戦する、歴史改変ファンタジー第4巻!

ルードヴィッヒからの呼び出しを受けてティアムーン帝国に戻ったミーア。四大公爵家のひとつ・グリーンムーン公爵家の妨害によって建設中の聖ミーア学園の学園長や講師候補が獲得できなくなっているという。代わりの学園長候補として、ルードヴィッヒの師匠である放浪の賢者ガルヴを説得してほしいと言われるが……。

「自分の幸せ」のためならいつでも全力!!(良い意味で)

賢者ガルウ獲得を巡るお話がとても良かった。「帝国の叡智」の人となりをを計るため「三顧の礼」を求めて扉を閉ざすガルヴと、そんなガルヴの家の前でわざと待ちぼうけを喰らうことによって相手の非を指摘し、断りづらくしてやる!!と意気込むミーア。例によって思惑がすれ違ったままガルヴがミーアの行動を良い方に解釈して先に折れる……といういつものパターンなんだけど、その一方で「ガルヴに反撃の余地を与えないため」にミーアも全力で礼節を尽くして相手を待つ…という展開がとても良かった。

ミーア、とにかく自分が良い思いをするためならなんでもする人間ではあることは一貫しているんだけど、その一方で一貫して「自分の行動のせいで他人が嫌な目をしたら自分も気持ちよくなれない」「他人に悪い思いをさせたらいつかそれは自分に返ってくる」ということを知っている人間なんですよね。だからこそ、自分が気持ちよく生きるために他人を思いやり、全力を尽くすことが出来る。だからこそ、(様々な誤解はあれど)人々が彼女の二度目の生に惹きつけられる。

その一方で、そういうミーアの気質は決して二度目の生だけで育まれたものではなくて……一度目の生でルードヴィッヒが最期までミーアに尽くした本当の理由。そして、師との問答によって「帝国の叡智」ではなく「ただの人間のミーア姫」に仕えることを改めて決意するルードヴィッヒの想いに胸を打たれます。

ティアムーン帝国没落を巡る謎のひとつが、ついに明らかに…!?

学園に戻ったミーアはグリーンムーン家の令嬢・エメラルダから夏の舟あそびに誘われる。護衛としてシオン、キースウッド、アベルの三人を引き連れてグリーンムーン家とつながりの深いガヌドス港湾国に向かうことに。一方、一度目の生での飢饉の際のガヌドス港湾国の動きに違和感を感じていたミーアは、ルードヴィッヒに相手のことを調べさせようとするが……。

一度目の生でミーアを真っ先に裏切ったとされるエメラルダと、その際に食料支援を断ったガヌドス港湾国。楽しいバケーションの裏でルードヴィッヒ達が動き、ティアムーン帝国没落を目論む恐ろしい陰謀の存在が見えてくる!!という展開がアツい。四大公爵家のどこかに潜むといわれている「敵」の影も少しずつ鮮明になってきた。

それはそれとしてアベルとミーアのイチャイチャっぷりがすごくてお前ら早く婚約しろ!!すぎる。そして、良くも悪くもミーアの親戚筋としかいいようがない、人がよくてポンコツで何故か最近距離を置かれがちなミーアにかまってほしくて仕方がないエメラルダの行動にニヤニヤしてしまった。彼女もなんだかんだでお貴族の習わしや家の事情に縛られているだけなんですよね。いやだって自分のメイドのこと、あれだけ下げる発言をしておきつつ名前ちゃんと覚えてるじゃん……毎度名前を呼びかけては言い直すところとか、可愛すぎるじゃん……これこのままだと絶対に近いうちに破裂する爆弾だなとおもうけど!!

実質前後編の前編みたいな終わり方なんだけど物語はここから第三部に突入。波乱の予感しかない終わり方で、続きがどうなるのかとても気になる。楽しかった!!

今回も書き下ろしがよかった

書籍版書き下ろしはミーアがまっさきに手を入れた新月地区の人々を巡る「現在」と、ミーアベルの回想によって描かれる「未来」のお話。ミーアの善行が巡り巡って孫娘のミーアベルが窮地に陥った際に心強い味方として返ってくるの、本当に胸が熱くなるし、それによって救われたミーアベルがおばあさまの教えに従って「現在」の新月地区の人々に少しでも気持ちを返したい、と思う展開がとても良かった。それにしてもルードヴィッヒの晩年、丸くなり過ぎでは?

電子書籍版特典SSはミーアの家の料理人・ムスタの一度目の生でのささやかな後悔と、現在の輝かしい栄光のお話。黄月トマトのシチューに纏わるエピソードは第一巻の一番最初でも印象的に描かれるだけに、彼の中にどんな葛藤があったのか、そしてその彼がどう変わっていったのかを知ることが出来たのはとても良かった。それにしてもこの話のムスタといい今回の本編でのエメラルダやルードヴィッヒといい、一度目の生での記憶を自覚はしていないないものの継承しているっぽい描写がとても気になる。ミーアが幼少期に「時を戻して」やり直していると思っていたけど、ひょっとして世界そのものがどこかの段階でやり直しているのか?

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