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フォルマント・ブルー リミックス

[著]瑞智 士記(木ノ歌 詠)  [絵]むらた たいち

奇病に侵され、18歳の誕生日に生命を落とす事を運命づけられた少年・楷名春希。絶望のままに無気力な毎日を送る彼は廃棄場で自らの事を「シンセサイザー」だと言う少女・庭瀬伽音に出会う。彼女との出会いを経て、少しずつ生きる気力を取り戻していく春希だが…

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富士見ミステリー文庫の「フォルマント・ブルー カラっぽの僕に、君はうたう。」を加筆+文庫未収録の短編を加えた新装版。不治の病に冒された少年と自分の事を「電気の歌姫」と名乗る少女が出会い、二人の過去や未来に立ちふさがる出来事を乗り越えていく、というお話。

笹野響哉の存在が序盤から示唆されていること、敵側の事情がある程度明かされてくること、ラストで主人公が死の運命から逃れた事に対する説明が加えられていた事など、富士ミス版では結構唐突に思える事が多かった伽音が攫われてから先の展開に対するフォローが加えられていて、旧版よりも判りやすくなった印象を受けました。楽器屋の主人と庭瀬教授の関係とか伽音の出自なんかも、富士ミス版では明かされてなかったっけ…?とにかく、そんなに多くを加筆しているわけではないのですが、説明不足だった部分に細やかな修正が施されていて、これだけの加筆でも結構雰囲気変わるものだなあ。

主人公達と同じくらいに、チョイ役のはずのガルバニックの辿った顛末が胸に残る。主人公達よりも誰よりも、色々な意味で「悲劇的」な運命をたどったのは彼だよなあ。ガルバニックとしての「それ」と、若き音楽家だった「彼」が誰も知らない所で鬩ぎ合い、破滅へと進んでいく姿が切ない。

音楽の奏でる美しい雰囲気と、人間という種の醜さという対称的な要素が同居する物語ですが、個人的にはやはり春希と伽音がコンテストに応募する用の音楽を一緒に作っていく場面が好きです。なにかを創り上げていく場面というのは、凄くワクワクするなあ。そして「心音」を音素材として撮るシーンは、別に何もしてないのにエロいですよね!!

同時収録の短編「皇帝の棲家には、電気仕掛けの歌姫。」は、ピアニストを目指す一人の若者が、春希と出会う前の伽音と出会うお話。存命の頃の庭瀬親子の人間関係等が透けて見える一方、普通に良い青春話だーと思っていたら、オチに噴いた。そ、そう来るのかーーーっ!

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