マリー・アントワネットが処刑台から筋肉で無双してフランス革命をひっくり返す、史実if。細かい部分の粗は筋肉(パワー)でゴリ押ししていく感じが一発ネタ小説として大変楽しかったし、それはそれとして割としっかり史実ネタも盛り込んでくる(多分)のが大変良かったです。
マリー・アントワネット、ギロチン台からの大逆転劇
処刑台に送られたマリー・アントワネットは民衆からのとある言葉をきっかけに覚醒する。たったひとりの「筋肉(フランス)」として、そして一人の母として。心優しき処刑人、親友の仕立て屋、彼女を護る麗しの騎士──仲間たちと共に、立ち上がる。とりあえず麗しきフランス女王マリー・アントワネットが筋肉むきむきの狂戦士となりフランスの王政復古を目指して大活躍するお話、と言って気になるか気にならないかで買うかどうかを判断していいくらいに気持ちよくそういうお話でした。元はと言えばTwitterの一発ネタがバズってそのまま長編小説化したものということでいろいろな意味で細かい整合性が気になり始めると色々とアレなんですけど、読んでる時はそれを気にさせないだけのパワーがある物語だったと思う。考えるな感じるんだ。
ネタだけでは終わらせない、魅力的なキャラクター達が印象的
一度は処刑を受け入れたはずのマリーが、断頭台すらも跳ね除けて立ち上がったのはひとえに残された子どもたちのためでした。物語では彼女と子どもたちの絆も描かれていきます。普通の人間は断頭台を跳ね除けられないとかルイ17世のキャラが濃すぎるとかそういうことを考えちゃだめだ。オドオドとした女性のような外見とは裏腹に処刑人としての高い矜持とこだわりを持つデオン、陽気なパリピとしてのキャラを貫きながらマリーの処遇とそれに対して何もできない自分に誰よりも憤る仕立て屋ローズ・ベルタン、誇り高き女騎士デオンなど魅力的なキャラクターが多数登場するのも楽しかったです。この時代あまり詳しくないのですけど、中盤は割としっかり歴史の掘り下げが行われていくのが印象的なんですよね。というかこの手の一発ネタ小説で巻末に参考文献出てくるのいろいろな意味でインパクトあるよな(騙されやすい顔で)。
何より、マリーの最大のライバルであり彼女と互角の格闘術を持つデュ・バリー夫人との対決はいろいろな意味で本作最大の見せ場と言っても過言ではなかった。生まれながらのお姫様と市井からの成り上がった烈女、フランスを揺るがした気高く美しい女ふたりが己の筋肉全てを掛けて戦う姿に燃えない訳がないですよね(?)。まあ正直筋肉用語がわからないので何が起こってるのかよくわからないところは多かったんですけど!!
やはり筋肉は全てを解決する
こどもたちを取り戻したマリーだったが、力を使い果たした直後を革命軍に狙われ、大ピンチに陥る。ところが、そこに「筋肉(フランス)」を臨む市民たちの声が響き渡り──革命を主導して漁夫の利で権力を狙う革命軍のトップと劣勢ながらも正しき筋肉(フランス)のため、ノブレスオブリージュを掲げてギロチンを振り回して可憐に舞うマリーのアツい最終決戦!!……のはずなんですけど始終飛び交う「パワーワード」の応酬で腹筋がつらい。筋肉を鍛えてないので笑いすぎて腹筋がとてもつらい。中盤はマリーを取り巻く人間達の関係性や史実の掘り下げを交えつつ筋肉を押しつつもわりと堅実な物語が描かれていた印象なんですけど最後になってまた一気にめちゃくちゃ筋肉で押してきました。いやでも読みたかったのはコレという気がしなくもないのでいいんですけど最後の最後で力押しがすごい!!
良くも悪くも勢い重視というか、Twitter小説ならではのライブ感というか、微妙なスタンスのブレみたいなのが気になったりはしたのですがそれ以上に圧倒的なパワー(筋肉)と勢い(筋肉)で強引に押し流される物語を見ていくのは大変楽しかったです。Twitter連載ではアンケートで続きを決定するみたいなお遊びもあったみたいで、それはリアタイで追いかけてたら楽しかっただろうなあ。
やはり筋肉は全てを解決するんだよ(洗脳)