幼い頃の記憶を思い出し、自分の中に眠る『すべての式を解く者』の力を手に入れ、ガスタークとの戦争で仲間を守るために多くの人間を犠牲にしたライナ。目を覚ました彼の前に現れたのは、幼い頃に別れた『父』と全く同じ姿を持つ、父の名を名乗る男だった。一方、ガスタークとの戦争を終えたヴォイス達はライナの名を利用して暗躍を繰り広げており……。
ライナ不在の間に進行する各国の駆け引きが熱い
ヴォイス側の今回の戦争の目的はざっくりと前巻でも語られていましたけど、ライナが身動き取れない間に同盟相手だったはずのゲイルフィックラントの土地の一部を奪って奪えなかった土地を対ガスタークの盾にしつつ「悪魔王」の噂を広めて各国に『忘却破片』を戦争で使わないよう圧力を掛けていく姿勢さすがヴォイス詐欺師の一族だけあって汚い。とはいえ『忘却破片』の力を使って進軍してきたローランドやガスタークは当然『忘却破片』がないと困るわけで。互いの力をチラ見せしつつ政治的なところから個人(シオン)の感情にまで揺さぶりを掛けてくる、ルール無用な駆け引きがアツかった。ところで「勇者」に「悪魔」に「女神」に「司祭」……と超常的な存在がますます増えてきたこの作品ですが、ミルクの身体を乗っ取った「円命の女神」さんがカップリング成立させ女神にしか見えなくなってきたので困る。最終的にミルクの方に身体の主導権が行く感じならあんまりへんなことにはならないだろうけど、こっちはこっちでどうなるんでしょうねえ。
それにしてもヴォイス、勝ち取った自国の名前に失われた故郷・イエット共和国の名前つけるの、なんだかんだで彼なりにあの国が好きだったんだろうなあ……あの頃は良かったな……。
能力の代償と話の切り方がえげつない!!
不自然な長い眠りから覚めたライナは若い頃の姿のままの父親・リューラと再会し、彼から自分の家族に起きた悲劇と自分が手に入れた能力、絶大な力の代償について聞かされる。いやもうライナの両親が辿った数奇な運命もリューラ&ライナ父子の微妙にぎくしゃくしたやりとりも大変良かったんですけどもう色々な意味で代償周りの話が全部持っていきましたよね!!シオンの変貌やクロウヴィルを振るう代償の話を踏まえるとどう考えてもなんの代償もなく使える力ではないだろうなとは思っていたんだけど、「大切な仲間を守るため」に力を得たライナに大切な人々を代償として払わせるという、予想を遥かに超えて重たい設定をぶちこんできたなぁ……。これまで無敵の存在っぽい感じでこれまで語られてきたリューラにもカウンターとなる勢力が存在して……からの、そんな所で次巻に続くの!?本当に大伝になってから切り方がえげつない!!あとがきがアニメ化とゲーム化と「紅月光の生徒会室」の話してて、本編からの温度差で笑ってしまった。テンション高けえ。