出演作のヒットを受けて遅咲きながら声優として勢いを付けてきた歌種やすみ。マネージャーの加賀崎が次に持ってきた仕事は、やすみの長年の夢である「プリティア」シリーズのオーディションだった!人気声優の登竜門であり、競争率も凄まじく高いプリティア。しかもオーディションには最大のライバルであり相棒でもある夕暮夕陽や頼れる先輩・桜並木乙女も名乗りを上げると言う。絶対に負けたくないオーディションのその結末は、彼女にとって意外なもので……。
※ネタバレがいつもより多めに含まれますのでご注意ください。
“「あなたの夢を──、我々にください」”
いやこれ言っちゃうとネタバレかもしれないんですが人の心ォ!!!!!!!!!!いろいろな意味で、彼女がプリティアの役をストレートで穫れたらこのシリーズ終わっちゃうでしょってレベルの大願なわけでそりゃそんな簡単にはいかないんだろうな……という予感はありましたし、そういう方向性の歌種やすみが見たいと思ってしまった気持ちは実際にあるんですけど……いやもうほんとうに容赦がない。ひとのこころがない。前半の大学生活の話とか、高校時代のクラスメイト達と行った卒業旅行の話とか卒業旅行の夜の由美子と千佳の百合百合なやりとりのこととかマジで吹き飛んだわ。
これ恐ろしいのは番組側が無作為で彼女を傷つけたわけではなくて、歌種やすみが憑依型の声優であることを理解して、ガチの演技を演ってもらうために作為的に絶望させたってことなんですよね。いやまあそれだけ自分の手掛ける作品を最高にしたいということなんでしょうけど、それで未成年の心を粉々にしていくの、マジで人の心ないかよ……もうちょっとなんかなかったのかよ……。
ひとのこころがなかっ…………やっぱりあっ……やっぱなかった。
いつか「プリティア声優」になるためにこの道を選んだのに、ぶち当たったのは声優を続けるかプリティアへの道を諦めるというかという選択。表面上はいつも通りを装う由美子にいつもの覇気を感じない千佳は彼女を立ち直らせるために不器用ながらも奔走していく。いやあ、喧嘩中にやすが本気で返してこなかったからやっぱり落ち込んでる!という流れで不調を確信する千佳ちゃん最高に良かったですね。それはケンカップルの文脈なんですが。今回の当事者でもある千佳や桜並木乙女だけじゃなくてラジオ番組でそれとなく心配している描写が描かれる柚日咲めくる、そして初代プリティアである偉大な先輩達。プリティアの制作側だって彼女が最高の演技をしてくれることを信じてアレを突きつけてるわけだし、本当に「歌種やすみ」という声優は周囲から実力を認められいて、もっと大きくなってほしいと望まれているのだな……と胸が熱くなる物語でした。でも何より、周囲からの励ましを受けてなんとか立ち上がった彼女が望まれた通り(それ以上)の最高の演技をして、やっぱりどうしても絶望してしまうクライマックスが最高によかったし最高に人の心がなかった。
ところでファンの知らぬところでプリティアシリーズオーディションにまざってくる初代プリティアの森先輩男前すぎんか。いつかどっかで森&大野のスピンオフとかやりません?