ダンジョン探索する際に配信を行うのが義務付けられている世界。探索一日目の少年・世迷言葉はリスナーの冗談を真に受けて転移魔法陣の罠に引っかかり(※概ね事前講習を居眠りして聞いていなかったせい)、未到達の五百階層に飛ばされてしまった。面白半分で配信を見ているリスナー達にアドバイスを乞いながら、ダンジョンを上層に向かって攻略することになるが……!?
う〜ん人の生命が軽い!!!
レベル1の初心者が配信を行いながらダンジョン最下層からの逆RTAを目指す物語。有用スキルや頭を絞って大物喰らいを繰り返し、レベルアップで強くなる……のではなく、一部ユーザーから面白半分で投げつけられる超高額スパチャで高額ポーションを飲みまくり、スナック感覚で四肢を吹き飛ばしながらダンジョン脱出を目指して試行錯誤を繰り返すという捨て身戦法でゴリ押していくスタイルだった。そんなことってある!?いやまじで、他のダンジョン物でよくあるような、なんてことないと思われていたスキルが実は強いとか、特定行動をすることで取得できるスキルや敵を倒して手に入れた魔石から取得するスキルなどの要素もあるにはあるんですが、魔石から取得するスキルはいちいちピーキー過ぎて足を引っ張ることもままあるし、特定行動で取得するスキルに至っては熱耐性・苦痛耐性を取得して満足している感がある。どうして捨て身戦法ばっかり磨こうとするの!?いやでももう中盤からは何の疑いもなく主人公が自分の手を捨てにいってたしなんかもうそれが基本戦法になっていたのでこれはこれで完璧なスキルツリーだったのかもしれない。いややっぱり色々とおかしいよ。
主人公が初期取得していた「鑑定」「アイテムボックス」なんて作品によっては隠れ鬼強スキルの代表格みたいな顔してることもある気がするんですが、絶妙に戦闘には使えないスキルとして調整されているの徹底している。一周回って普通のダンジョン成り上がりもののアンチテーゼなのか?とか思えてくるけど作者の人そんな難しいこと考えてないと思うよという言葉も脳裏をよぎる。調理用として購入したはずの中華鍋が無駄に強いのにまた笑ってしまった。
主人公とリスナーの掛け合いが色々と無責任すぎて面白かった
ダンジョン探索時に配信を行うのが強制になってる世界=死亡事故配信も少なくない……ということで、集まったリスナーがみんな人のリアルな生き死にを肴に酒飲めるタイプの奴らでヤバいし、なんなら公営放送が自ら生中継をしつつ面白半分でスパチャを投げつけてくる。現代日本をベースにした世界観なのに人の生命が軽いというか、とにかく倫理観が地に落ちすぎててやばかった。でもそれ以上に主人公が絶妙にクズかつメンタル超合金かつ素の思考が狂気(※決して異常な状況下で狂ったわけではない)なので、全くシリアスになれないんだよなあ。事前講習を全部寝てて何も聞いてないあたりからお察しなのですが、結構自分を棚に上げてリスナー達を煽るし、いいこと言ったかと思えば即手のひら返ししたりもするし。でもこの主人公、クズで思考放棄しがちで頭おかしくても結構ギリギリの線でちゃんとしてるところはしてるというか、変にスジが通ってるから嫌味には感じないんですよね。もともとの配信のファンだったとはいえ、ダンジョン最下層に転送されたきっかけを作ったランカー配信者・ユキカゼが責められそうになった時の流れとか大変しっかりしていて好感度が高い。
無責任に酒呑みながら勝手なこと言ってるだけな一般リスナーと、それぞれの立場からたまに有用なアドバイスをくれる(6割位はしょうもないことを言ってる)コテハンランカー達と主人公がテンポ良い掛け合いをしているのがとにかく面白いお話でした。いやでも、普通に考えたらあまりにも四面楚歌かつ絶望的な展開で、もうちょっとシリアスになってもいいんだよ……!?
ラストの500層ボスモンスターくんの独白が面白可哀想すぎるし彼は泣いていい。