突然学園にやってきた世界最大のオートマタメーカーのCEO・ハウエルズから国内最大のオートマタイベント、ディーツェ・フェアに招待されたカノン。彼女の護衛も兼ね、水無月とリタも同行することに。吸血鬼や白檀式に懐疑的な発言をするハウエルズに反感を覚えつつも目を輝かせるカノンだったが、とんでもない罠が待ち受けていて…。
自分の「意志」でカノンを守ることを決めたけど、人間の感情の機微にはまだまだ疎い水無月がカノンを守ろうとしてから回ったり、いろいろな意味で誤解させるような行動を取ってリタやカノンを振り回す姿が微笑ましい。気感情を学びはじめたばかりの彼に恋愛感情の機微や気遣いを求めるのはいくらなんでもハードル高いのでは…!?と思ってしまうのですが、ふたりともなんだかんだと恋する乙女だから仕方ないね。
カノンを守ることに執着して周囲が見えなくなっている水無月と、そんな水無月に人間の男の子としての気遣いを求めてしまうリタが衝突してしまうのはある意味当然のことで。気まずい状況でカノンが敵の手に落ちてしまい、水無月も前回の戦いから本調子ではなく…と転がり落ちるように悪化していく展開に圧倒される。
いろいろな意味で前巻以上の水無月の空回りぶりにハラハラしてしまった2巻だったんだけど、1巻と同じく一人で抱え込んでしまおうとしていた水無月がリタときちんと対話することで、「何が悪かったのか」と自ら見つめ直し成長していく姿が頼もしくもありました。「守るべき相手」としてのカノンに続き、プログラム上では敵だったリタを「背中を預けられる仲間」と認識し、ともに戦う姿が熱かったです。
そして新キャラのユーリがまた可愛かったなぁ…!!軽妙な言動の裏に隠された水無月達への複雑な感情が印象的でした。水無月がカノンの家で目を覚ます前の出来事もちょっとだけ明かされて、少しずつ確信に近づいている感じ。続刊も楽しみです。
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リベリオ・マキナ -《白檀式》水無月の再起動-
対吸血鬼戦闘用絡繰騎士“白檀式”―ヘルヴァイツ公国が誇る天才技師・白檀博士の“五姉弟”は、欧州を吸血鬼軍の侵略から救う英雄となる…はずだった。十年ぶりに目覚めた“失敗作”、第陸号・水無月は想定外の戦後を前に愕然とする。起こるはずのない暴走事故により、“虐殺オートマタ”として歴史に名を刻んだ五体の姉兄たち。さらに大公と吸血鬼王による突然の和平を経て、公国は人間と吸血鬼が平等に暮らす世界で唯一の共和国へと変貌を遂げていた。亡き博士の娘・カノン、吸血鬼王女・リタとの出会いを通じ、新たな“日常”を受け入れていく水無月だったが―。第25回電撃小説大賞・銀賞受賞・オートマタの少年と二人の姫が織りなす、正義と反抗のバトル・ファンタジー起動!!(「BOOK」データベースより)
吸血鬼と戦うために作られ、しかし戦うことのないまま“不適合”と判断され休眠させられた絡繰騎士の《白檀式》第陸号・水無月。次に彼が目を覚ました時、5人の『兄姉』たちは暴走によって人間や吸血鬼を虐殺した虐殺人形として名を馳せていた。ままならぬ想いを抱えたまま製作者の白檀博士の娘・カノンと共に人間として学校に通うことになった水無月は、そこで吸血鬼の王女・リタと出会い……。
人間と吸血鬼が手を取り合い、平和になってしまった世界の中で「吸血鬼を殺す」という自らの存在意義を持て余していた水無月。再起動させられたことをよく思っていないまであった水無月がカノンの真摯な想いに触れたことをきっかけに、少しずつ彼女をかけがえのない存在としていく。自分を人間と同じように扱うカノンの真意を理解し、次第に受け入れようとする。好感度最悪の状態から少しずつ距離を縮めていく二人の関係が楽しい。
そして、すれ違っていた二人の関係を正す鍵となるのがもうひとりのヒロイン・リタ。白檀博士の血縁として学校でも肩身の狭い思いをしていたカノンと、吸血鬼を『敵』として認識してしまう水無月の2人きりの世界が、吸血鬼でありながら《白檀式》に対しても偏見を持たない彼女の登場で少しだけ変化する。1巻はカノンと水無月の関係がメインでリタの方はあまりクローズアップされないんだけど、彼女の存在をきっかけに二人の世界が少しずつ広がっていきそうな予感を感じて、わくわくする。
リタに執着し、水無月の同型機である《白檀式》を利用して平和な世界を壊そうとする敵。自分よりもスペックの高い《敵》との戦いでボロボロになりながらも、プログラムの条件付を乗り越えて自らの意志で立ち向かう水無月の姿が最高にかっこよかった!とにかくド直球で王道なボーイ・ミーツ・ガール展開がアツく、楽しかったです。
カノンもリタも割と周囲を振り回す系ヒロインであるのですが、オートマタだからこその純粋無垢さで時折二人の行動を超えていく水無月にふたりが逆に振り回される展開が大変楽しいのですよね。「はじめてのお使い」の展開とか、笑いが止まらなかった。水無月が休眠していた間の白檀式の暴走事故の真実などまだまだ様々な秘密が隠れていそうで、続きを読むのが楽しみ。