ラゲーネン王国vsヴェルンスト王国、『鉄球姫』vs『血風姫』、最大の戦いが描かれるシリーズ最終幕。
もう今回は最初から最後までエミリー姫がかっこよすぎて困った!!“詭弁”ともいえるむちゃくちゃな論法で強引に一度捨てたはずの王座に立ち、寡兵と奇策で圧倒的多数のヴェルンスト軍を翻弄していく姿に惚れる。なんだかんだいいながらも、段々エミリーという人間の男気(女だけど)に惹かれている家臣達の姿にニヤニヤします。猿騎士はつんでr(強制終了)
特に今回は戦闘場面がめちゃくちゃ迫力あって、始終テンション上がりまくり!わらわら沸いてくる敵を、ばったばったと寡兵をもってなぎ倒していく姿が脳裏に浮かぶよう。そして河岸要塞で彼女が起こした最大の「奇策」が成ったシーンはもう、挿絵効果もあって物凄い勢いで漲った。巻を追うごとに大きく成長したグレンの戦いぶりも素晴らしくて、ラストで見せた二人のコンビネーションには胸が熱くなるばかり。
1巻、3巻のあれを覚えていると、もう後はひたすら、「誰も死なないでほしい」と祈るのみだった。特にリカードとセリーナは死亡フラグ立てすぎですから!!最終決戦直前に主人公&ヒロイン以外が突然通じ合うのは死亡フラグなんだぞ!!!ほんとにまったく心臓に悪いよ!!
多くの犠牲を払って手に入れた平穏の中、喪われた人達を思い出させてしんみりさせてくるラストといい、もうほんと文句なしに最高の作品でした。次回作の企画が早くも動いているという事なので、そちらも楽しみにしてます!
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戦場のエミリー 鉄球姫エミリー第四幕
[著]八薙 玉造 [絵]瀬之本 久史 ラゲーネン王国を襲った惨劇。諸侯から責められる兄・パーシーの姿や、絶望し悲しみにくれるエミリーの姿を見て自らの無力さを実感したグレンは、護衛騎士の身分を捨てて自ら戦場に赴く。少しでも兄やエミリーの役に立てれば、という強い思いからの行動だったのだが、父の護衛騎士であったライオネルはパーシーに疑いを向けて…… |
2巻、3巻で見えた希望が何かの冗談だったかのように悪趣味全開です。やっぱこっちが作者の本性か…(違)
ラゲーネンを襲う惨劇の真犯人については、読者側からは「花園のエミリー」の時点でしっかりと明かされているわけだけどグゼンやエミリーにとっては謎のまま……というわけで。読者側からも犯人を曖昧にしておいて、ラストでどーんと落としたほうがショックが大きいのではないかという印象があるのですが、とにかくこの巻だけ見ると真犯人が「イイ人」にしか見えないというトラップがありまして。「グレン、まえまえーーーっ!!」的な何かもあるわけだけどそれ以上に、「あれ、じつはこの人じゃなかったんだっけ…?」みたいな、目撃した読者までを惑わすいい人っぷりがとても憎い。え?惑わされたの私だけ?
事件の真相を知っているだけに、グレンの行動がどんどん裏目に出て行くのが判ってしまっていたたまれない。今までの容赦ない死にっぷりを知っているといつ死亡フラグが成立してしまうのかハラハラしながら読んでました。
それだけに、終盤でエミリー姫が戦場に現れた時の爽快感、喜びといったら無かったです。様々な想いはあれども復活した、セクハラ姫様の言動を聞いただけでも思わずニヤリとしてしまう何かが!!そしてエピローグでのツンデレっぷりはもう垂涎モノですよ。エミリー姫のごとく涎じゅるりですよ。漢らしい戦いっぷりを魅せる「鉄球姫」の雄姿も、セクハラ発言しまくるご無体なセクハラ姫の姿もとっても素敵なのですが、なんだかんだいいつついざとなると素直になれないツンデレ全開なエミリー姫様、マジ可愛いっ!!
彼女の復活があったとはいえ、ラゲーネンの置かれた状況はどうしようもなく絶望的なのですが、今後どうやって彼らが再起を図り、持ち返していくかがとても楽しみです。今ラノベの中でも有数に続きが楽しみなシリーズかも。
余談ですが、絵師さんの後書きでおーいお茶噴きました。ラ イ オ ネ ル さ ん … !
花園のエミリー 鉄球姫エミリー第三幕
[著]八薙 玉造 [絵]瀬之本 久史 このままでは皆を護る事はできない…そう悟ったエミリーは、かつて彼女の命を狙い、大切な人たちを奪い去ったグレンの父・ノーフォーク公ジョゼフと直接対決することを決意。僅かな供を引き連れ、敵地に侵入したエミリーは諸侯を王宮に集め、王位の完全な返還を提案するが… |
とりあえず、真っ先にひとこと。
「2巻の展開が生ぬるい。がっかりだ」とか思ってる人は
今すぐ書店に行って買ってくるといいですよ?
…今回は本気で……凄いです。作者本領発揮しすぎです。
ノーフォーク公との形の上での和解、弟王ガスパールとの姉弟関係改善、そしてエミリーの完全な王位返上……と物語が希望に向かって動き出す……と思ったらラストで盛大なちゃぶだい返し。
1巻での容赦ない展開とは打って変わって2巻・3巻で描かれてきた展開は全てこのエピローグで全部叩き壊す(←ネタバレ)為の布石だったと言う訳なのですね。あんまりにもあっさりと語られるのであやうく見落としそうになりましたがまさか物語最後の1行だけで今までの努力を全部無に返すとは…なんという容赦のない物語だろう。そしてなんて悪趣味なんだこの作者!(※最大級の褒め言葉です)
とにかく3巻終盤までの希望に満ちた展開が、とても幸せそうに見えるだけにラストのどんでん返しの威力が絶大すぎる。仲の良さそうなエミリーとガスパールの姉弟の姿も、愛憎を経て今までのような「憧れ」ではない、等身大の父親の姿を漸く見ることが出来るようになったグレン親子の関係も、そして「もう誰も大切な人を失いたくない」と懇願するエミリーの姿も、全てが痛い。全てが良い方向に向かっていたと思えるだけに。
本当にここからどういう展開になってしまうのか…楽しみのような、心配のような。
この物語だったらあっさり全滅エンドとか来てもおかしくないんじゃないかと思い始めました。
とりあえず、来月発売の「第四幕」に期待。
修道女エミリー 鉄球姫エミリー第二幕
[著]八薙 玉造 [絵]瀬之本 久史 ノーフォーク公の3男で、マティアスを「師」と仰ぐグレン。父や兄達の役に立とうと護衛騎士として修行を積む彼に、ノーフォーク公はエミリー姫の護衛を命じる。師が命を賭して護り抜いた憧れの姫を護衛できると喜び勇んでエミリーが院長を務める修道院に赴いたグレンだったが、彼女は想像とは全く違う下品な姫様で…!? |
エミリーにとってはまさに仇敵以外の何者でもないノーフォーク公の息子が、真実を何も知らされないまま派遣されてきた事を皮切りに新たな陰謀の影が浮かび上がるのですが、前作のふてぶてしいまでの倣岸不遜ぶりを知っていると、罵詈雑言を吐きつつも親しいものを再び喪うまいと一人で必死になって今にも倒れてしまいそうなエミリーの姿が痛々しくてしょうがない。下品な言葉の応酬も、やっぱりちょっと強がりの裏返しと言う気がして、前作と比べるとキリがないですね。世間では「鉄球姫」と呼ばれ怖れられる彼女ですが、今回は新キャラクターであるグレンの視点から見ることによって、エミリーの精神的に弱い部分がかなり露に描かれてきて、とにかく哀しい気分になります。教会でのシーンではちょっと泣いた。
以前はものすごいセクハラを働きつつもなんだかんだと慕われていたエミリー王女、修道院では外敵を気にしてかなり強引に様々な方向転換を行った結果、修道女達からはお世辞にも受け入れられているとは言いがたく……。前作でのジュディのようなポジションにいるお人よしで心優しい少女・ロッティの意外な台詞にはハッとさせられてしまいました。それだけエミリーも精神的に余裕がなかったということなんだけど、ポジションがまんまジュディだっただけに、彼女だけはエミリーの良いところを解っているような展開を期待してしまっていたんだなあ。前回のように大量の死者が出るような展開ではないのですが、どこか冷徹で残酷で容赦のない物語展開は、紛れもなく「鉄球姫エミリー」の続編なんだと感じさせる部分が多々あります。
そんなこんなで、とにかく人が死にまくりな1巻から、残酷な事件を糧に少しずつ信頼できる仲間を得て新たに強く立ち上がる2巻という感じで既に完結した話から無理に2巻を作らなくてはいけないのであろう新人さんの作品にしてはものすごい上手い繋ぎ方をしたなあという印象で、凄く面白かったのですが、相変わらず戦闘描写が読み辛いのはなんとかならないものか……。
鉄球姫エミリー
[著]八薙 玉造 [絵]瀬之本 久史 王女ながら自ら大甲冑を纏い、「鉄球姫」という二つ名で呼ばれる少女・エミリーは跡目争いを回避するため辺境の古城で静かに(?!)暮らしていた。しかし病弱な弟王に代わり彼女を王位に据えようとする動きは後を絶たず、遂には親王派筆頭である貴族が彼女に暗殺者を送り込んで… |
序盤では王女のあまりに唯我独尊まっただなかな発言に正直閉口したりしましたが、その発言の中に王女なりの自尊心とか意地みたいなものが見え隠れし始める頃から一気に面白くなりました。意地を張って修道院入りを見送っているうちに取り返しの付かない事になってしまい、それを悔やんでいるのに、人前でそれを言えないエミリーが意地らしくてそして可愛く思えて、一気に惹きこまれます。特に城攻めに遭ったときにエミリーが呟いた本音(傍にいないマティアスに向かって「妾も修道院のこと、考えていなくもなかったのだぞ」的なセリフの部分)なんかは胸に堪えました。
そして彼女達を襲った"亡霊騎士"と呼ばれる暗殺者の側にもまた彼らなりの"事情"があって、快楽のために殺すとかではなく生きるために仕方なくやっている…というのがまた。彼らが"亡霊騎士"に身を堕とす切っ掛けにはまた切ないドラマがあって…というのが素敵でした。作中で行われる殺人は本当に容赦なく、登場人物の生存率は限りなく低いという展開が続くのですが、どんなに酷い展開でも敵側を憎むことが出来ませんでした。
圧倒的な力を持つ強敵である亡霊騎士達に、独りで立ち向かう王女の姿が凄く熱かったです。ただ、キャラクターたちの会話(特にエミリー)は非常に面白いんだけどバトル描写がイマイチ読み辛くて、イマイチ何が起こっているのかわかりづらかったのが残念だったような。描写が多すぎて文章が読み辛いというかテンポが悪いというか…ううむ。