私と陛下の後宮生存戦略 ‐不幸な妃は巻き戻れない‐ | 今日もだらだら、読書日記。

私と陛下の後宮生存戦略 ‐不幸な妃は巻き戻れない‐

 

すぐ死ぬ少女と不憫な最強陛下の、【死に戻り禁止】の後宮攻略ストーリー!
若き賢帝の唯一の妃『最愛』を決めるため、後宮に集められた妃達。 その中で最も格下の、五十番目の妃ソーニャには秘密があった。 それは【死に繋がる不幸を招く呪い】と【死ぬと時間が戻る祝福】を持つこと。 玉の輿を狙う妃達により魔境と化した後宮で、彼女は毎日『死に戻り』続けていたのだ。 (早く『最愛』を決めてくれないかな。そして家に帰りたい) そう願うソーニャだったが―― 「貴様を私の『最愛』にする!」 皇帝エルクウェッドが指名したのはソーニャ。 その上『最愛』のはずなのに陛下は大層お怒りのご様子で……!?

リィーリム皇国の人々はそれぞれが相関する『祝福』『呪い』という2つの力を持っている。「自然死以外の理由で死亡した場合1日前に時間が巻き戻る」という祝福と「死につながる不幸を招き寄せる」という呪いを持つソーニャは幼い頃からこの力のせいで死んでは巻き戻る日々を送っていたが、皇帝陛下の50番目の妃として選ばれて後宮に入れられて以降は他の49人の妃から命を狙われまくり、これまで以上に命を落としまくる日々を送っていた。この日も皇帝陛下の前で死んで1日前に戻って来る羽目になったが、何故か直後に自分の部屋を皇帝陛下が訪れて……!?

絶対にシリアスになれないデスループ365日

死ぬと1日前に時間を巻き戻す「祝福」を持つソーニャと彼女が引き起こすループを感知できる皇帝エルクウェッドが次々と襲いくる「死を呼ぶ苦難」を乗り越えて暗殺者だらけの後宮からの脱出を図る、というお話。

世界観設定の根幹・キャラクターたちの境遇を知るともう本当にシリアスで重いお話を想像してしまうんですが、これが意外なことにめちゃくちゃ「笑える」お話でした!!ループに巻き込まれてはキレ散らかし、キレ散らかすついでに自分に降りかかる苦難を全て吸収して自分のものにしていった結果望まずして「なんでもこなせる超人」になってしまった皇帝陛下が死ぬとループを引き起こすのに自ら死を呼ぶ不運を招き寄せる体質のヒロインと運命の出会い(※10年以上探してた)をし、なにがなんでもこれ以上ループさせてなるものかと彼女に降りかかる苦難を全部ループ中に得た妙技の数々で物理的に突破していくの強過ぎて腹が痛い。

剣の腕や知力でも超人的な能力を発揮する賢帝エルクウェッドですが、基本的に状況突破のカギとなるのは「女装姿で妃教育を受けた経験」だったり「自国を訪れた有名サーカス団に入門して曲芸を極めた経験」だったりするのでどこまでもシリアスになりきれない。ヒロイン・ソーニャが自分を守ってくれるエルクウェッドにときめきながらも内心めちゃくちゃ辛辣にツッコミ入れまくってるのも面白すぎる。国一番の権力を持っているはずの彼が自国民であるソーニャをみつけられない原因が彼自身の持つ『呪い』のせいというのがまた上手かった。

いつ起きるかわからないループで精神が摩耗していくのを防ぐため必死にキレ散らかしながら遭遇する苦難の数々を「趣味・特技」として吸収していくしかなかったエルクウェッドって冷静に考えると大分普通にキツい設定だし、なにより死に戻りしすぎて能力発現してから3日以上生きられたことのない・死を「日常」として受け入れて自死すらも淡々とこなしていく主人公の精神性があまりにも人間の枠を逸脱していてヤバい(というかこれはもう完全にニンゲンとは別のイキモノなんだよなあ……)んだけど、そういう物語の根幹に眠る本質的なヤバさを皇帝陛下のオモシロ妙技で吹き飛ばしていくの最高すぎて続きが読みたい。今季一番笑った。その他にも「仕事中はお肌がシワシワ将軍」「女性におもしれえ女と言わないとハゲる宰相」など個性豊かな能力を持つキャラクターが多すぎてとにかくどこまでも楽しかった。選ばれなかったお妃組にもなかなかのオモシロ人材が揃っていて、再登場してほしいキャラが多すぎる。

良い笑いをありがとうございました!!!綺麗に1冊でまとまってはいるけど続きが読みたい……!!!

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