【死に繋がる不幸を招く呪い】と【死ぬと時間が戻る祝福】を持つ少女・ソーニャは【他者の祝福・呪いの影響を受けにくくなる祝福】を持つ皇帝・エルクウェッドになんとかかんとか見つけ出された。知らないところで彼女の巻き起こす死に戻りに巻き込まれ続けて限界寸前だった彼から、これ以上の死に戻りを阻止するために自らの【最愛】──婚約者になれ──と申し渡されてしまう。それ以来なんやかんやあったりしたものの一度も死に戻ることもなく、お妃教育や両親との顔合わせなどが進んでいって……?
エルクウェッド、本当にどこまでおもしれえ男なんだ……
2巻も引き続きめちゃくちゃおもしろかった!!肝であった死に戻り要素が1巻でほぼ(物理的に)解決していたので続巻が出ると知ってどう続けるの??と思っていたんだけど今回はなしくずしに婚約者となった二人の心の距離を縮めていく話にシフトしていってて、1巻読んだときに少しだけ思った「これお互いに恋愛感情ないままゴールインしちゃうやつだな!?」という部分をしっかりフォローする内容になっていました。世界でただひとり同じ時間軸に生きている相手同士でありながらも全く正反対の半生を過ごしてきたふたり。片や祝福に目覚めて以来短い期間で死にまくってきたせいで(死の危険に繋がりかねない)無駄なことは一切出来ず、ただ「生きて」きたソーニャ。そして、ソーニャの死に戻りに巻き込まれ続けたせいで未来予知に近い万能の対応力を備えつつ自他ともに認める「超」趣味人となってしまった賢帝エルクウェッド。趣味特技に「死ぬこと」と書いてしまうようなソーニャを幸せにするためにエルクウェッドが自分の趣味の数々を一緒に体験させるぞ!!選ばれなかった后候補達と絡ませて女友達も作らせるぞ!!とにかく楽しいことをさせるぞ!!と張り切る姿が印象的で、そんな彼の突拍子もない行動に巻き込まれてツッコミまくりながらも彼から様々な人生の悦びを教えられてどんどん幸せになってしまっているソーニャが微笑ましかったです。
そして必死に彼女を幸せにしようとして彼女のことばかり考えているうちに……そんな彼から「幸せ」をおすそ分けしてもらって振り回されていくうちに……お互いに形だけで始まった恋愛関係に中身が伴っていく。同じ記憶を共有する同士であることを越えて互いの人柄に惹かれ合っていくのがとても良かったですし、最後にはしっかりと両思いのカップルになっていったことに心底ホっとしてしまいました。1巻のラストでは少し不穏なフラグも見え隠れしていたし、ソーニャの祝福が力を失うことによってエルクウェッドがなしくずしに獲得していた未来予知にも近い力が失われ、スーパー賢帝からただの人間になっていくことへの心配も少しあったりしたのですが、そんなものを笑って吹き飛ばして幸せになっていくような力強いエンディングが最高でした。
……それはそれとして、やっぱりエルクウェッド本当に面白え男なんだよなあ!!!事あるごとに奇声を発してソーニャをビビらせるのには笑ってしまったけどめちゃくちゃ自然にソーニャに襲い来る死の危険を防ぎまくってたり、なんならお妃教育すら誰よりも完璧にこなしてしまう経験豊富さとか、いやそれを得るまでの道のりを考えたら全然笑えないかもしれないんだけどやっぱおもしれえ男だよお前……女装の挿絵が無かったことだけが心残りです(コミカライズに期待)。そんな超趣味人の陛下にあてがわれるために集められた、全体的に一芸特化型でおもしれえ女しかいない后候補の面々が次々とソーニャに自分の得意分野をプレゼンしながら「でも陛下にはかなわないんですが」と負けを認めていくところとかもうこんなん笑わずに読めるわけ無いんですよねえ。今回は不自然にガタいが良く運動神経の良く時折陛下とともに奇声を発しながらアクションしてくれる侍女(意味深)も加わって奇声2倍増しなのも最高でしたね!!
最後に語られる結婚後のソーニャの伝説がまたいちいち面白く、そしてこのくだりだけで言葉とおりエルクウェッドがソーニャを幸せにしてしまったのわかるのがズルい。もう本当に命果てるその日まで夫婦で面白おかしく幸せな毎日を送ったということなんだろうなって。最後まで楽しく笑って読める、最高の完結編(だよね?)でした!