比翼の日(バレンタィン・デー)を前に浮かれるアルザーノ学園の生徒達。ところが、『愛の片翼血盟』を名乗るモテない男子生徒たちの襲撃を受けてしまう。奪われたチョコレートを奪還しようとするシスティーナ達だが、敵は予想外に強くて……!?
最後だからかいつもよりはっちゃけ具合が凄い!
「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」シリーズの短編集、システィーナ達の卒業が描かれる本編完結編。最後の最後ということもあるのかやたらハッチャけた短編が多かった気がします!というかバレンタィン(誤字ではない)を舞台にモテない男達が(某教授のドーピングで)大暴走する『大惨事チョコレート大戦』の破壊力が酷かった。バレンタィンの話、原作初期の短編だったらグレン先生はむしろカロリー欲しさに男子達に迎合する流れだったんじゃないかと思ったのですが、しっかり男子たちからモテ側の人間と認識されて全力で襲われてるの感慨深い。そして同じ方向で色々と酷かったのがシスティーナ達がグレンの魔獣退治に付き合う『世界最強の魔獣』。世界を揺るがす大戦すらも乗り越えてきたシスティーナ達がグレンの姿で誘惑してくるサキュバス達にメロメロにされる展開に笑ってしまうんですが、グレンならなんでもいいマリアはともかく、ルミアとシスティーナで出てきたグレンの方向性がほぼ真逆なのめちゃくちゃ面白いな。二人がグレンに惚れた一因を考えたらまあたしかにこうなるよな、という感じではあるんですけど……そしてもはや悲しき合成獣と化しているリィエルのグレン……。
その他、ポンコツ極まりないグレンの後輩が謎のラッキーパワーを発揮して大活躍(?)する『魔導探偵ロザリーの事件簿・飛翔編』、いつもはシリアス担当な過去の特務分室を描く『偽装夫婦のシンフォニー』すらまさかの色ボケ(押せ押せのセラ、やたらとグレンに童貞捨てさせようとする男性陣)展開でめちゃくちゃ笑った。いや、真顔で房中術の本渡してくるアルベルトも大概だけど、セラを取られたくなくてグレンに嫉妬ましましなイヴちゃん可愛いね……現在を考えると色々としんみりするところもあるけど……というかこの色ボケ話で最後の最後に泣かせてくるのズルいんだよぉ……。
彼らの前途が楽しみになってしまう、書き下ろしが良かった
書き下ろしの『最後の卒業試験』は本編完結後、システィーナ達の卒業の日を描く未来の物語。卒業式の直前にグレンが最後の授業として自分を倒せと言い始めて……というお話なんですが、これがとてもよかった。システィーナたちを信頼しながらも、いろいろな意味で「安寧な学園生活」を送れなかった教え子たちを心配して試練を与えるグレン、そんなグレンを苦笑いしながら見守る大人組……という構図がなんともエモく、彼らの期待通りにグレンの望んだ答えを掴み取るシスティーナ達が頼もしい。物語の中で見ることは叶わないかも知れないけど、彼らの前途が楽しみになってしまうお話でした。
グレンが今後どのような道を歩むかは巧みにぼかされてしまったんだけど、その辺はイヴのスピンオフで明かされるのかな?まだまだ終わらない「ロクアカ」の前途に期待しつつ、とりあえず本編完結お疲れ様でした!!
……ところでドラマガ掲載の短編、確認したところ現在連載中の「if」を除いても未収録の短編があと1冊分くらいあるんですけど、この辺はシリーズ名を微妙に変えて出すとか、今後出てくるらしいイヴのスピンオフにさりげなく挿入される形になるのなあ。ドラマガの方には店舗特典まとめ回とかもあったので、その辺含めて全部収録してほしい。さすがにこれほどの人気作で未収録短編がこれだけ発生するのはなしだとおもうので何らかの形でまとまるとおもってるんですが。
「if」もそろそろ纏める流れだと思うんですが……雑誌掲載分でメインヒロイン級のキャラクターのルートはほぼやってるんで、書き下ろしで誰が来るのか密かに楽しみなんですよね。あと来てないのはセリカとかか、個人的にはもしもの可能性でもいいからジャティスルートが見たいんですが……。