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エリスの聖杯

 
夕薙

「いいこと、コンスタンス・グレイル。お前のこれからの人生をかけて、わたくしの復讐を成功させなさい! 」 誠実だけが取り柄の地味な子爵令嬢コニーは、とある夜会で婚約者を奪われ、窃盗の罪まで着せられる絶対絶命の窮地に陥っていた。しかしそんな彼女の元に、10年前に処刑された希代の悪女、スカーレット・カスティエルの亡霊が現れる! かつてその類稀なる美貌と、由緒正しき血統と、圧倒的なカリスマでもって社交界の至宝と謳われたスカーレットは、コニーに憑依するや瞬く間に形勢を逆転し、危機を救う。だが、その代償としてコニーが要求されたのは、スカーレットの復讐に協力することだった!? 利害関係から始まった二人のコンビは、貴族社会に潜む悪意や陥穽を蹴散らすうちに大切な絆で結ばれた真の相棒へと成長し、やがて過去から続く巨大な陰謀と対峙していく……!

婚約者の浮気相手から身に覚えのない罪を着せられて糾弾され、絶対絶命の大ピンチになっていた子爵令嬢・コニーを救ったのは10年前に処刑されたはずの令嬢・スカーレット(の亡霊)だった。婚約者の浮気やなにやらの傷心に浸る暇もなく、助けられた対価としてスカーレットが処刑された事件の真相追求と復讐を請け負う事になってしまう…!?正反対の二人の令嬢が過去の事件を追って貴族社会の闇に踏み込んでいく物語。

コニーとスカーレット、正反対の二人の令嬢が繰り広げる「相棒もの」

家訓である『誠実』を頑なに守る地味で平凡だが優しい令嬢・コニーと稀代の悪女と名高く圧倒的な美貌と高い知性を兼ね揃えるスカーレット。正反対の二人の令嬢がひょんなことから運命共同体となり、ある時は協力しある時はぶつかり合いながらも少しずつ仲良くなっていく姿が微笑ましかった。

優しいけれど弱腰で臆病だったコニーが逃げ道だった偽りの「誠実」を捨て、強く成長していく姿が印象的でした。また、水面下で手を組むことになったランドルフとの恋愛的な意味での進展も気になるところ。

それにしても、貴族社会の闇が深すぎる。

ちょっとでも隙を見せれば食い殺される、貴族社会の闇がひたすら怖い。しょっぱなでコニーに罪を着せようとしてコニーじゃない人たちに「やり返された」パメラどうなったの……。犯罪行為が横行するあやしげな『夜会』やら不審死を遂げた事件の関係者などなど、一寸先は闇といわんばかりの展開が満載。女は消えるしイケメンだって気を抜いたら喰われる(性的な意味で)。いや、スカーレットの存在以外のオカルト要素はないんですけど、完全にホラーですよねこの貴族社会!!コミカライズに「ひぐらしのなく頃に」や「ルートダブル」のコミカライズをされている桃山ひなせ先生を当てたのが大正解すぎてガンガン編集部のわかりみの高さに膝を打つ。(ルートダブルはいいぞ……)

ただ、そんな陰鬱でホラーな展開をコニーとスカーレットとの掛け合いが適度に薄めてくれるので、怖くなりすぎず楽しく読めました。また、章ごとに入っている登場人物紹介がいい感じにテンション高くてガス抜きをしてくれる。

それにしてもなんてところで…

謎の死を遂げたスカーレットの親友・リリィが残した「エリスの聖杯を破壊しろ」という遺言、キリキ・キリククなる謎の言葉……と謎が謎を呼ぶ展開の中、とんでもないところで次巻に続いたーー!?2巻は春に発売が決定しているようなので安心ですが、うっかりこれが発売未定とかだったら卒倒していたところです。

続編が読めるのを楽しみに待ってます。


異世界テニス無双 テニスプレイヤーとかいう謎の男がちょっと強すぎるんですけど!

 
夕薙

超高校級の天才テニスプレイヤー相馬王助。全国を制した彼はある日、異世界に『英雄』として召喚される。「ボ、ボールが分身した!?」「残像だったの!?す、すごい!」「『ゾーン』!?なにそれ!?」彼を召喚した魔術師エリーシャは究極のテニスに驚愕してばかり。「この程度、全国じゃ必須スキルだ」異能を超えた異能―テニス。竜を一撃で葬り、魔の軍勢を殲滅し騎士団の精鋭を容易く撃破する。魔王も勇者も、強くなりすぎたテニスプレイヤーには敵わない!常識置き去りのスーパー・テニスファンタジー、試合開始!!(「BOOK」データベースより)

 異世界ファンタジーの世界に召喚されてしまったのは普通の高校生。しかし彼は、インフレを繰り返して異能力バトルのレベルまで昇華されてしまった「高校テニス」の頂点を極めた男だった……というお話。あらすじの時点で某ジャンプのバレンタインチョコの数が凄い某異能高校テニスマンガを彷彿した人、だいたい合ってます。

 インフレ能力系スポーツマンガ×俺TUEE系異世界ファンタジーという混ぜちゃいけない洗剤まぜちゃった感じのあらすじ時点でヤバイんだけど、どこかで聞いたことあるようなトンデモ技やトンデモ能力が次々と繰り出され、周囲が驚いては「こんなの全国なら常識だぞ」とあっさり受け流される姿に笑いが止まらない。発想だけでも勝利感すごいのに、そこにいちいち中二病丸出しの必殺技名くっついてるのズルいでしょ……美味しいところを持って行かれまくるヒロインが、徐々に解説ではなく「驚き担当」化していくのにめちゃくちゃ笑った。

 スポーツ漫画と異世界ファンタジー、双方のお約束をしっかりネタにしてメタメタな笑いに変えつつ、それでいてド直球の正統派王道ファンタジーなのがとてもアツかった。気がなさそうに見えてしっかり意識しちゃってるヒロインとのラブコメあり、現実世界で背中を追い続けた憧れの先輩との男と男の約束あり。ラブコメとスポ根、どちらの要素も美味しく頂けて一冊で二度おいしい。

 そして、どんなに圧倒的な能力を持っていても「スポーツ漫画の登場人物」には踏み入ることが出来ない場所があり、そこを「異世界ファンタジー」ならばやすやすと踏み越えていける。2つの世界が交わったからこそたどり着くことが出来たクライマックスが最高でした。まだまだ物語には様々な謎が隠れていそうで、続きがとても楽しみです。

 それにしても、あとがきでさらっと明かされた「異能バトル〜」のあの人の話にニヤニヤせざるをえない。めちゃくちゃ中二丸出しのネーミングセンスで笑いまくってたら……その草の根運動で定着しちゃったのかよ!!「異能バトル」は未読なのでスルーしてしまったんですが、アニメイトの店舗特典のコラボ小説確保してくればよかったなあ……。