“有川 浩” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

キーワード:有川 浩 (12 件 / 2 ページ)

キケン

 

成南電気工科大学機械制御研究部略称「機研」。彼らの巻き起こす、およそ人間の所行とは思えない数々の事件から、周りからは畏怖と慄きをもって、キケン=危険、と呼び恐れられていた。これは、その伝説的黄金時代を描いた物語である。 (「BOOK」データベースより)

 新入生の元山・池谷が上級生に勧誘されて連れて行かれた部は成南電気工科大学機械制御研究部、略称「機研」。快適空間を謳う部室や設備の数々に惹かれて入部を決めたが、そこは“敵に回してはいけない”と周囲に恐れられるアクの強い部活で……!?男子大学生達が部室を根城に“本気の”遊びを繰り広げるお話なんだけど、色々と本気すぎる彼らの巻き起こす騒動の数々と最初は上級生達に振り回されるだけだった下級生達が段々『機研』の部員らしくふてぶてしく成長していく姿が楽しい。

 特に文化祭を前にした彼らの大人気ないまでの本気っぷりが本気でやばかった。それでさえヤる気マンマンだったところに、(自称)ライバルのPC研が露骨に企画をぶつけてくるんだけど、相手が可哀想に思えるほど正攻法で本気出してくる機研の面々の死角のなさときたら……やぶれかぶれに直接攻撃を仕掛けてくるPC研にもひるまない下級生達の本気の怒りにもニヤニヤが止まりませんでした。

 そして、最後を締めくくる「卒業後の文化祭」の話がとても爽やかな終り方でまた素敵。どうしようもない位に楽しかったからこそそこに自分の居場所が無くなってしまっている事を、自分達の知っている場所ではなくなってしまった事を認めたくない気持ちとか、とてもあるあるすぎてしんみりするんだけど、そんな心配をぶっとばすような最後の黒板にホロリとした。

 なんかこいつら、大学卒業してもなんだかんだで仲良くやってくんだろうなあ。良い友情モノでした。いつまでもお幸せに!


別冊図書館戦争2

[著]有川 浩 [絵]徒花 スクモ

「過去に戻れるとしたらいつがいい?」 そんなたわいも無い会話で盛り上がる堂上班。副隊長・緒形は大学時代に始まったかつての恋を思い出す。公務員を志していた彼がかつて配属されたのはメディア良化委員会だった。当時は「嫌われ者の職場についてしまった」程度にしか思っていなかったが…「あの二人」のその後もわかる、スピンオフシリーズ第二弾。
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かつてメディア良化委員会に所属していた緒形の恋の思い出と図書隊での出来事を描く短編と、郁達が配属される前の堂上達の過去を描いた短編、そして手塚&柴崎のその後を描く短編三本だての中編。ちょっとしんみりしっとりと暖かくなる緒形の過去話も、間に挿入される堂上夫妻のイチャつきっぷりにニヤニヤせざるをえない堂上・小牧コンビの過去話も勿論おもしろかったのですが、やはりキモは手塚&柴崎のその後でしょう!!

柴崎がストーカーに遭遇したのをきっかけに、3年前(「図書館革命」時)ちょっと接近があったものの未だ付かず離れずの関係を維持していた手塚との関係が一気に進展するというお話なのですが、今まで割りと女性としての優秀さ・強さが強調されてきた柴崎の脆さ・弱さが全面に押し出された展開で、読んでいてハラハラしっぱなしでした。特に3編構成うち後半2編は本当に読んでいて恐怖感や生理的嫌悪感を始終感じるような展開で……とにかく重たい。つかどっちのストーカーも痛い人すぎて……。

ていうか主犯についてはしょっぱなでなんとなく予想できてしまったんですが……ああ、まちがいなくこいつの地雷踏みまくってるよ!余計な恨み買ってるよ!みたいなの。いや、決して柴崎が悪いんじゃなくて、彼女は通常とは真逆な意味で「空気読めない」部分があるんじゃないかなーと思うのです…「デキるオンナ」であるがゆえにどうしてもそれ以外の人間に自分と同じ事を求めてしまい、それが故にどうしたって「見えない」部分があるというか。まあ、かといって今回の犯人に同情しようとは1ミリも思いませんけどね!

何はともあれ、本編ではずっと付かず離れずを保っていた二人が遂に結ばれたのは本当に嬉しかったです。手塚かっこよすぎだろ…!!!その後、柴崎が漸く自分の弱いところを見せられる相手をみつけて、泣きながら大切にしてほしいと叫ぶ場面では胸が熱くなりました。そしてエピローグでの、堂上夫妻にも負けず劣らずなイチャつきっぷりに萌えた…!!特にウェディングドレスのくだりとか、可愛すぎる…!!

あと、地味にニヤリとしてしまったのが「教官モード」の郁。フルメタルジャケットばりの鬼教官っぷりが漢らしすぎる…というより、もろに旦那の影響受けたのが丸判りで。一瞬篤さん(笑)のセリフかとおもいましたよ、マジで。

大団円なラストでとても満足でした。御馳走様でした。


別冊 図書館戦争1

[著]有川 浩 [絵]徒花 スクモ

前回の事件で負傷した堂上が、漸く退院して関東図書隊に戻ってきて暫くたったある日、図書館の書籍が盗まれるという事件が発生した。捜査の担当となった堂上班は、手塚と郁に大学生のフリをさせて張り込みを開始するが…堂上・笠原の「武闘派カップル」成立から、婚約までの様々なエピソードを語るスピンオフ短編集。
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アマ??????イ!

"ベタ甘全開スピンアウト"という公式紹介文に恥じない、なんともあま?いあま?い短編集。本編でも終盤になると少しずつバカップルっぷりを発揮しつつあった二人ですが、正式にカップル成立の後の話となるのでもう色々と全開です。本人は真剣に悩んでいるのにもう完全にオノロケにしか聞こえない会話に、柴崎と一緒にニヤニヤしつつ同時に酒もってこい酒ー!!と叫びたくなったり。

何より、本編「戦争」の頃は男勝りの健康優良児という印象だった郁が、堂上と付き合いだした事をきっかけにどんどん女の子らしくなっていく姿がとても可愛らしい。女の子らしい服のレパートリーを増やしたり、急に堂上の自宅に呼ばれてワタワタしたり、殆どしてなかった化粧を覚えたり…という、"女としての成長"がはっきりと見て取れる1冊でした。一方で、やっぱり田舎育ちの天然純粋培養な郁との関係がなかなか進まなくて、ヤキモキする堂上にニヤニヤ。それでも"はじめて"のエピソードにいたってはこの二人らしすぎる顛末に、思わず噴き出してしまったり。

図書館シリーズらしく、様々な考えさせる部分もありましたがやはりキモはベタ甘部分といって良いのではないかと。もうとにかく頭を軽くして、美味しく頂かせて貰いました。次巻ではメイン二人以外にも焦点を当てていくということなので是非とも手塚×柴崎の進展を!!!よろしくお願いします!!!


図書館革命

[著]有川 浩 [絵]徒花 スクモ

敦賀原子力発電所で無差別テロが発生。その手口が『原発危機』という小説と似通っていたことから、メディア良化委員会はその本の作者である当麻蔵人を狙い、断筆を迫ろうとしていた。最初の一人の「事例」を作ってしまえば、それを盾にしてますます表現の自由が束縛されてしまう。世相社の折口から依頼を受けた関東図書隊は秘密裏に当麻を匿うことにしたのだが…
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図書館戦争シリーズ完結編です。

すっかりツン期を抜けてデレモードに半分以上突入している堂上・笠原カップルの微笑ましい初デート☆の姿にキュンキュンしていたら、手塚と柴崎の「担保」のやりとりに心臓をどっくんどっくん打ち抜かれました。あれは反則だ!!ヘタレで柴崎の尻に敷かれっぱなしの手塚の精一杯の反撃に激しく萌えた!!担保!担保!!!

ストーリー本編は最終巻ということもあり、メディア良化委員会との事実上の最終決戦が描かれます。本来の図書隊のホームグラウンドではない政治を舞台に立ち回り、更に味方内にも様々な問題が……と、様々な意味で未だかつて無く苦しく重い闘いとなりましたが、その合間にすかさず挿入されるLOVEの姿にいちいち過剰反応してしまう自分がいました。このバトルとラブの絶妙な割合がとてもツボ。そしてすっかりブラコン丸出し状態の手塚兄が最高です。敵に回すとこれほど嫌な奴もいないですが、味方に回したらこれが心強いの何の。なんだかんだと兄貴が心配な手塚の姿にもニヤニヤしてしまいました。

しかし、今回の殊勲賞といえば、何といってもこの人たちですよね。
大阪のオバチャンパワーSUGEEEEE!

表現の自由に関する問題は、現実問題にも繋がる事が多くて、相変わらず他人事ではないのだなあと思う部分が多かったです。当麻が例として挙げた『片手落ち』の問題なんか、現実でも普通にあるんだろうなあ。最近でも「ちびくろさんぼ」の廃刊とかありましたけど…

しかし、エピローグの堂上夫妻のラブラブっぷりは異常。もどかしい手塚・柴崎コンビにもニヤニヤさせられて、大変ご馳走様でした。さてと、明日辺り「別冊図書館戦争」買ってくるかー。


図書館危機

[著]有川 浩 [絵]徒花 スクモ

長いこと憧れ続けた"王子様"が、郁のすぐ傍に居るあの人だった…!?何の前触れも無く知らされてしまった真実に、郁は大パニック。今まで本人を前にして言ってしまった恥ずかしいセリフの数々に赤面する一方、"王子様"の話を露骨に嫌がっていた彼の態度を思い出して、浮かない気分に。悩みに悩んだ末、郁は一つの事を決意するが……
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郁の"王子様"の話や両親の件などに一端の蹴りがつく(?)シリーズ第三弾。

王子様の正体を知って、すっかり恋する乙女モードの郁は可愛いけど、それだけに二人の仲を引っ掻き回してくれた手塚慧が憎らしいなあ。ぐるぐる悩む一方で自分の堂上への気持ちが「王子様への憧れ」なのか等身大の「堂上教官への恋心」なのかわからなくなってしまって沈み込む郁の姿は見ていて痛々しかったです。それでも、そんなモヤモヤを吹っ切って堂々と本人を前に「王子様卒業宣言」をかます姿がとても可愛い。

「ねじれたコトバ」は割と他人事ではなくなっている事例に色々と考えさせられる一方、世相社(折口)と香坂の心意気に呼応して立ち上がってくれた人々の心意気に胸がスっとなる思いでした。床屋・魚屋が軽度とはいえ現実でも規制の対象になってるなんて知らなくてびっくりした。ほんと、こういう知らないところから少しずつメディア規制が侵食していくのかとおもうと、背筋が寒くなる話です。

そして、今回はなんと言っても郁の父親が美味しいところを持っていきまくり。初めて母親に対して郁の味方をしてくれた、最後に県知事と一緒に現れた時の頼もしさは格別でした。他にも見所は沢山あるのですが個人的にはひたすらお父さん(と手塚)に座布団1枚。しかし、母親の過保護っぷりに磨きがかかり、それを父や兄達が歯止めをかけられなくなった理由は………思わず爆笑してしまった。

様々な苦難を乗り越えて以前よりも少し大人になった郁と、彼女に感化されて少しだけ強くなった茨城の防衛員の女の子達の姿も素敵でした。次で本編は最終巻とのことですが、どのような結末を迎えるのか、本当に楽しみです。

……しかし、「内乱」あたりからどんどん手塚が私好みのヘタレになっていくのですがほんとどうしましょう。意外な弱点が透けて見える「昇任試験、来る」もよかったのですが、「ねじれたコトバ」「図書館は誰がために」で柴崎の為に、不器用ながら色々と奮闘する姿に激しくキュンキュンする。特に香坂大地のサインの一件、どんな顔してサイン貰いに行ったのかと考えるともう……手 塚 可 愛 す ぎ ! 兄貴との複雑な関係も健在で、もう今回の手塚には最初から最後までときめかされっぱなしでした。最後は柴崎と幸せになるといいね!!


図書館内乱

[著]有川 浩 [絵]徒花 スクモ

笠原郁の両親が、郁の仕事ぶりを見たいとやって来た。図書館防衛員を志願したことを未だ伝えていない郁は焦る。図書館員を目指す時にも散々ひと悶着あったのに、過保護で心配性な母親にバレたら実家につれて帰られてしまうかもしれない。慌てて周囲と口裏を合わせ、その期間は内勤の仕事を貰うことにしたのだが……
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郁の親子関係、小牧とその幼馴染の少女、手塚の家庭の事情、柴崎の真の姿などなど、各キャラクターに焦点が当たったシリーズ第二段。タイトルの通り、今回は良化委員会との争いよりも図書館内部での「内乱」がメインに押し出されてます。

男勝りの郁に、「女の子らしさ」を強要する郁の母親だの、ぶった切り書評の話題だの、「あるある」感が強すぎて各所で共感しまくり。郁と同僚の女の子達が気まずくなる話なんかはもうそのストレスが容易に想像できて、こちらまで胃が痛くなる思いでした。ほんと、ああいう時は女子のほうが全然残酷だったりするよね…。

特に感想サイトをやってる身としては、やはり「一刀両断レビュー」の話は他人事とは思えませんでした。まあ、砂川のようにそれを「公の」企業サイトでやるというのは問題外ですが、常に自分の書いたレビューが他人の気を悪くすることがあるというのは考えた方が良いのかもしれないなあ、となんとなく思わされました。まあそれでも地雷を踏んだら文句の1つや2つくらいつけたくなるのが人間と言うものですが!(でも、散々作中でも言われてるけど個人のレベルならまだアリだとは思う…w)

そして、キャラクターに重点を置いた連作というだけあって、今回もキャラクターの魅力が凄すぎる。郁と堂上のもどかしく微笑ましい関係には毎度毎度ニヤニヤさせられるばかりなのですが、今回は柴崎とその周辺が美味しすぎます。朝比奈との関係も好きだったんだけど、それ以上にエピローグでの手塚とのやりとりにはマジで身悶えた。いいなあこの二人。あと、玄田隊長&折田のしっとりした関係も素敵で、そっけないメールのやり取りで胸が熱くなる。

……といいつつ、仲悪兄弟萌えとしては、小牧と鞠江に関する騒動のあたりからもう、手塚兄弟にニヤニヤモエモエしっぱなしだったわけですが。イイヨイイヨー天才系フリーダム腹黒兄貴と、そんな出来の良い兄と志を違えながらもなんか嫌えないブラコン弟イイヨー!エピローグで手塚が「俺、ブラコンなんだ」と言い出したときには萌えを通り越して大爆笑してしまいましたが。このフリーダム兄貴にはぜひとも今後とも良き悪役として大活躍して欲しいものです。

そしてそんなフリーダム手塚兄によって投下された爆弾のおかげで、続きが気になって夜も眠れません。
どうしてくれるあの兄貴。

こんな酷い引きだとわかってたら続編はAmazonじゃなくてリアル書店で買ったのに!!!


図書館戦争

[著]有川 浩 [絵]徒花 スクモ

昭和の終わりに公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる「メディア良化法」と呼ばれる法律が制定され、様々な書物が検閲の上で没収・破棄されてしまうようになった。その悪法に対抗すべく、図書館は『図書館の自由法』によって彼らの超法規的な検閲に対抗する。高校生の頃、一人の図書館防衛員に助けてもらった経験を持つ郁は、彼を追いかけるように図書館の防衛員を志すが…
   個人的お気に入り度数
政府のメディア弾圧に対抗する為、武装した図書館の中で繰り広げられるバトル&LOVEなお話。あらすじだけ読むと熱血系の人情系軍隊モノ?なんて思っていたのですが、見事に騙されました。これは良いバトルラブコメ。…というわけで、物凄い色々な人からひたすらお奨めされていた「図書館戦争」、結局アニメと漫画版の勢いを得て漸く読むことが出来ました…よ…。電車通勤時間が主な読書時間な人間にとって、ハードカバーは重くて敷居が高い…。

「メディア良化法」が昨今話題の児童ポルノ関連法案とオーバーラップしたり、何かと子供の犯罪を読書傾向の所為にしようとしたり……と架空の世界観ながら色々と現代と似通ったような部分が多くて、そういう現在の世相と照らし合わせて読むと倍面白かったです。検閲の理由がまた、凄くそれっぽいんだよなぁ…「“こじき”って単語がサベツ用語だから没収」とか、ちびクロサンボの話とか思い出して懐かしい。図書館からラノベを撤去されて怒った小学生達が、『大人の喧嘩』で立派に反論するくだりなんか、世間の政治家どもに読ませてやりたいところです。や、フィクションだけど。

本編の物語も非情に面白いんだけど、それ以上にキャラが魅力的。男勝りでズボラでバカだけど実はちょっぴり泣き虫で“王子様”に憧れちゃうような女の子・郁が凄く可愛くて、その破天荒な行動にひとときたりとも目が離せない感じ。そしてツンデレ全開な上司・堂上教官や、郁の良きライバルにして天然カタブツな手塚とのやりとりが非常に素敵なのです。特に手塚はイヤミなカタブツから天然ボケへの変わり身が早すぎて噴いた。

とにかく、まっすぐで人の考えの裏表なんて判らない郁と、遠まわしにしか郁への好意を表現できないツンデレ堂上の関係が、もどかしいやらこそばゆいやら可愛らしいやら…!!二人を取り巻く他のキャラクターたちも魅力的で、ニヤニヤが止まらない。個人的にはメインの3人も好きなんですが、玄田隊長と記者の折田さんの関係が非常に気になります。似たもの同志な二人の独特な雰囲気もさることながら、なんか色々と面白そうな過去がありそうで…。

ストーリー的にも、キャラクター的にも最高に魅力的で、まさに文句なしの面白さでした。
本が好きな人、昨今の児ポ法とかメディア統制に興味がある人には無条件でお奨めできるかも。
とりあえず早いところ続きを読まなくては…!!


塩の街 Wish on my precious

[著]有川 浩 [絵]昭次

突然降って来た隕石により人々が次々に塩の柱と化し、塩で埋め尽くされるという“塩害”に見舞われた世界。社会機能が凍結した世界で偶然であった秋庭と真奈は、隕石が落ちた場所に程近い街で静かに暮していた。二人の前を、様々な人々が通り過ぎていく…
 

今「空の中」「図書館戦争」ですっかり有名になってしまった有川浩さんのデビュー作。

次はいつ自分が死ぬか判らない、世界の終末といっても過言ではない極限状況でも生きようとする人々を描いたストーリー。塩害に立ち向かう人々を描くのではなく、そこで懸命に生きようとする人々の姿をどこか冷静な主人公二人を軸にして描いたストーリーは、良くも悪くも新井さんの「ひとめあなたに…」を思い起こしてしまいました。どちらも終末ものだけど、凄くしっかりとラブストーリーなのです。

一つだけ気になったのが、デビュー作で完結作品だから仕方がないとはいえ最後の締め方は少々展開が強引というか…それまでの淡々としたゆっくりした時間の流れを感じるストーリーとはまるでベツモノに感じた点。あれよあれよという間に燃え展開になっていてびっくりした(笑)クライマックスでは必然的に二人が「世界を救う」という展開になりますが、個人的には序盤のような滅び行く世界で生きる人々の姿を最後まで描いてくれてもよかったんじゃないかなとか思ったり。

入江が真奈を前にして言った台詞がこの物語の真髄を改めて現しているようで、凄く印象的でした。一言で言えば、世界を巻き込むラブストーリー…ではなく、ラブストーリーに世界を救うという事実が便乗しているというか。こういう話はかなり好きなので今更ですが有川さんの本をもっと色々読んでみたい所です。


読了記録まとめ[2011年11月分]

 11月のラノベ(?)読了冊数は13冊でした。そのうち4冊BLだけど多分気にしちゃ駄目だ!少年向けラノベレーベルの作品だけでトータルすると4冊しかなかったことも気づいちゃだめだ!!

 漫画を節約した結果、おそろしくBLと少女小説ばかり読んだ月になりました不思議。もう暫くは積読消化月間が続きそうです。自宅にあったBLを読み終わってその直後にブックオフでうっかりもう少し買い込んでしまったなんてそんなことはちっともない。

 4冊しか読んでないマンガのうち2冊が「屍姫」と「そらのおとしもの」なあたりに業を感じます……あと「Pandora Hearts」の最新刊は本当に良かった。

11月の読書メーター

読んだ本の数:17冊 / 読んだページ数:4306ページ / ナイス数:64ナイス
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電撃コラボレーション  まい・いまじね?しょん

[著]電撃文庫記念企画
(うえお久光、時雨沢恵一、上月司、有川浩、中村恵里加、五十嵐雄策、有沢まみず、柴村仁、古橋秀之、岩田洋季、成田良悟)
[絵]西E田、むにゅう、京極しん、田上俊介、さそりがため、三日月かける、山本ケイジ
   
西E田さんの書かれたイラストを元に電撃文庫の作家・イラストレーターがストーリーを作っていくというコラボアンソロジー。15周年企画の一環?で今月から毎月こういったコラボ小説が発売されるようです。男女の学生、手紙、UFOというキーワードの縛りがあるのに王道ラブコメあり、SFありホラーありで各作家さんの味が出まくってる辺りがおもしろかったです。

色々な意味で「いつも通り」で学園キノ系はっちゃけギャグの時雨沢恵一、ベタ甘ラブコメな有川浩とかもおもしろかったですが、ダブルブリッドやソウルアンダーテイカーから一転・コテコテの脱力系メタメタギャグをやらかしてくれた中村恵里加とギャグ系エロコメ・シリアス泣きゲー系のどちらでもなく何故か超ダークでホラーな展開の有沢まみずが最大の衝撃だったかも。中村さんはまだ著者近影や初期の後書きのゲーム語りからなんとなくこういう芸風もアリかなあと思ったんですが(ていうかいつかギャグコメ書けばいいと思います)、有沢まみず×ホラーラノベは想像したこともなかったぜよ…確かにインフィニティ・ゼロはちょっと欝グロも入ってましたが!半分くらい未読の作家さんでしたが、やはり既読の人の方が普段と比較できる分二重の楽しみがありますね。

そのほか、ある意味王道といえなくもないような、古橋さんのお話と最後という事を最大限に利用した他の短編ネタが炸裂の成田さんの短編がお気に入り。未読の作家さんの中では上月司さんのスレ違いラブコメに1票。男の子と女の子で同じ行動に対する見解がどんどんズレていくのが素敵過ぎる。こういうギャグコメディは大好きだ…!

…ところで岩田さんの「シンデレラ」、大筋は切ない恋愛モノで結構好きなんだけど、男の子の方の行動の理由があまりにもしょぼすぎると思ってしまう私は駄目なんでしょうか。本当に好きな相手ならそんなの愛で乗り越えられるだろ。女を断る理由がほしくてそういうこと言った、とまでは思わないけどもうちょっとまともな理由がほしかったです。