宝島社様より献本をいただきました!
自称「天才詩人」だが実力も才能もない駄目大学生・柏木は食糧を求めて迷い込んだ山の中の遺跡で女の子をみつける。天才的な詩の才能を持つ彼女に嫉妬心を募らせながらも柏木は彼女を家に連れて帰り、「デシ子」と名付けて彼女の詩を盗作しようとするが……というお話。
金はないが色々な理由をつけて働かない。口だけは無駄にでかいが才能が無いことは自覚していてそれを表だって認めることはできない劣等感の塊な男。悪い意味でどうしようもなく人間らしい駄目さ加減を持った「汚い大人」な柏木の行動にとにかく序盤は嫌悪感しか覚えなくて辛い。ある意味、理解できる/共感できる駄目さ加減だからこそ嫌なんだなあ。デシ子に劣等感を持ちながらも完全に見捨てることはできなかったり、尊大な態度を取る一方でいつ友人たちに見捨てられるかを怖がっていたり……と悪い意味で本当に人間臭い主人公。盗作した詩を売りさばきだしたときにはお前本当に創作者としてのプライドないんかと思いましたが。
デシ子には盗作の事、バレてるんだろうなあという伏線はかなり初期からあったけど、バレてからの展開はなかなか熱かった。特に盗作した詩で稼いだお金の「使い道」は上手いなあと。もはやお金と自分や世界の命を天秤にかけてるような状況で、それでもやっぱり金に執着してしまう柏木はやっぱ改心したように見えても根っからの駄目人間で、続編があるってことはまだまだ駄目っぷりを見せつけてくれるんだろうけど、それでもそんなしょうもない人間臭さが少しだけいとおしく感じられました。
クライマックスの「詩」も下手糞っぷりが半端ないんだけど、ちょっとデシ子が惹かれてしまったのもわかる気がする。
序盤のとっつきは悪かったですがおもしろかったです。