迷宮街クロニクル3  夜明け前に闇深く | 今日もだらだら、読書日記。

迷宮街クロニクル3  夜明け前に闇深く

 
津雪

それは迷宮内部の写真から起こした商品スケッチだった。探索者なら一度は目にしたことがある、第一層濃霧地帯の奥にある縦穴のものだ。 その図には後藤が売りたい商品が描かれていた。天井に滑車が据え付けられ、鎖が吊るすのはゴンドラだ。 後藤のアイディアは画期的なものだった。リスクを減らし第四層まで一瞬で移動できる。迷宮内部でのみ産出される不思議な石が金属の強度を高めることも判明し、探索の効率は向上するように思われたが……。 生まれる希望と、同じだけの絶望。迷宮街での生活は、ゆっくり何かを蝕み、静かに壊してゆく。 好評の書き下ろし短編も収録した群像劇、第三弾。

新年を迎えた迷宮街。迷宮探索事業団の後藤は冒険者たちに、とある商品スケッチを見せていた。第一層から第四層までを貫く縦穴に滑車を据え付け、ゴンドラを通すと言う計画。これがあれば第四層までの道のりを大幅に短縮する事が出来る。真城達上級探索者は喜んで飛びついたが、その実現には一つの条件があり──現代日本に突如として現れた「迷宮」で怪物達と戦う人間たちの姿を描いたシリーズ第3巻。完結編となるはずだった3巻が分冊されて、全4巻シリーズになるようです。

新米パーティ「チーム笠置町」のメンバー達の人間関係と成長を主点に据えていたこれまでの2冊より、「迷宮街を取り巻く人々の群像劇」としての色合いが若干濃くなったように感じられました。というか物語りそのものはこれまで通り真壁の周囲を中心に進むのですが、以前よりも真壁視点の話が減ってきたような。2巻では、迷宮街の外の人間が見た真壁の「冒険者としての」乖離っぷりが描かれていましたが、3巻では迷宮街の冒険者として何故真壁が「凄いのか」が描写されているように感じました。特に書きおろしでの人外っぷりは結構強烈。

それにしても、群像劇とはいえ1巻まではそれなりに「主人公」として描かれてきた気がする真壁が、徐々にその位置から距離を置いて描かれ始めたような気がしてならないのが気になります。真壁を巡る恋愛関係もかなり不穏な流れになってきてるし…なにより3巻の終わり方が、まるで死亡フラグにしか見えないんだが大丈夫なのか……。

その一方で迷宮街そのものを巡る動きも、迷宮探索事業団の後藤誠司を中心にして様々な新しい動きが巻き起こっており……第四階層を結ぶゴンドラというアイデアの実現に向け、少しずつ迷宮街の人々が一体となって動き出していく姿は見てて胸が熱くなるものがあるのですが、一方でこちらにも色々と不穏な影が見え隠れするのが心配です。越谷の死は特にインパクトがありましたが、第三階層の謎やこのタイミングで物語が分冊されていることも含め設置作業は一筋縄ではいかない予感がひしひしと……

完結編が物凄く楽しみです。
出来るだけ犠牲の少ないエンディングになるといいなあ……とおもいつつ、やっぱ最後だし、大惨事になるんだろうなあと思っている私がいる。

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