消えちゃえばいいのに | 今日もだらだら、読書日記。

消えちゃえばいいのに

 

撲殺、刺殺、斬殺、毒殺、薬殺、銃殺、絞殺、殴殺…数えあげたら、キリが無いほどに人が人を殺す方法は存在する。この世界は死であふれている。でもそれは僕の知る世界とは違うセカイの話。そう思っていた…。「好きです」「好きだよ」「好きだって」「好きなの」四人の女の子に告白された、あの日からすべてが変わってしまった。突如、現れた死神の少女モルは告げる。「僕のために、百人が殺される」って。そんなことを言われても高校生の僕に出来ることなんて、とりあえず女の子たちに何て返事をするか考えることぐらいじゃないのかな。ファンタジア文庫、最大の問題作登場。(「BOOK」データベースより)

 美術部の女の子達4人から突然告白された。そして祖母が死んだ。その翌日に死神を名乗る少女が現れ、彼女達の名前を含む100名の名簿を手渡される。その100人はこれから「主人公のために」殺される、というのだ。

 蓋を開けてみたら清々しいまでに真っ直ぐな、気持ちが悪い「愛」の物語だった。主人公と大量殺人にまつわる謎はほぼ全て解き明かされたけど、「ただ謎が解けただけ」で特に何か良いことが起こるわけではないという程度の悪趣味感。こういう、とにかく気持ち悪い血なまぐさい感じの話は凄く久しぶりに読んだ気がする。

 一部の登場人物を除く人間達の死はあくまでデータのように、恐ろしいほど淡々と処理されていき、何十人死んでもあくまで主人公にとっては対岸の火事でしかないのが凄い。小さな町で何十人もの人が殺される、という異常な状況下にあり、その張本人でありながらも主人公はいつも通り学校に行き、ヒロインたちと会話し、そしてある程度の感情のブレはあれど死神の「報告」を聞く。彼の感情が動いたのはせいぜい、自分に告白してきたヒロインたちと一番の親友と、憧れの人が傷つきそうになったときくらい。

 現実感のない、データ上の「死」は大量虐殺事件の物語として読んだら物足りないかもしれないけど、むしろそれだけ沢山の身近な人達の死を淡々と処理していく異常性、相容れないものに対する気持ち悪さだけがつのっていく感じでとてもよかったです。そして、あまりにも異常すぎる「愛」のお話でありながら、その愛さえも実は……。でもすっごいこれ、疲れてるときに読むと削られる。ほんと、気持ちに余裕があるときでないとオススメできない。

 終わり方はなんとなく予想がついたというか多分そこに持っていくんだろうなあという予感はあったけど、どこまでも救いの見えない終わりを貫いてくれてとてもよかったです。何よりラストのやり取りが好きだ。もうどうしようもなく、好きだ。

 あと真ヒロインは西島(♂)。探偵パートが、凄く良かったです!!

「好きだ。だけど殺してやりたい」
「よかったね、一樹くん」

——それを愛っていうんだよ。

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