シリーズ第6巻。ヤケに薄く見えたけど、個人的にはこのくらいのボリュームで短編いくつか、のほうが好きかもしれない。
前半は「鳥人類コンテスト」の進行をまかされた「わたし」が危険度満点なコンテストを妖精さんの助力でなんとか安全な方向に導こう……とするお話。色々な意味で妖精さん活用しすぎ!と思っていたら予想通りラストで落とし穴が。あまりにも自らの危険を顧みないフリーダムな参加者達と、片っ端からツッコミを入れる「わたし」の姿が面白かったです。
後半は「わたし」の悪友にして隠れ腐女子のYさんがお仕事で過去の漫画のデータを発掘し、「同類志」としてまんが文化を布教しようとするお話。ひとことでいうと“妖精さん版『バクマン。』ただし、打ち切られたら人生終了みたいな!!”っていうお話。全体的にバクマンのアンケート主義のアレを思い出さずに居られないお話でしたが全体的に「バクマン。」以上にブラックな……
それにしても、Yさんはほんといいキャラだなあ。今後もどんどん活躍していただきたいです。
キーワード:山崎 透 (6 件 / 1 ページ)
人類は衰退しました5
大人たちを欺き、遊びましょうか?
わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は"妖精さん"のものだったりします。そんな妖精さんと人間との間を取り持つのが、国際公務員の"調停官"であるわたしのお仕事。そしてこの仕事に就く前、多くの時間を過ごしたのが《学舎》と呼ばれる人類最後の教育機関です。寄宿舎で出会った友人たち。RYOBO230r。秘密の倶楽部・のばら会。妖精のお茶会。感傷に浸るにはまだ早いのに、なぜ思い出すの……? 里に現れた侵略者! 奪還チームを組んで地下に潜ったわたしたち――死亡!? ピロリロリン♪でCONTINUE? (ガガガ文庫公式サイトより)
「新人類」な妖精さんたちと「旧人類」である「私」たちが繰り広げる、ほのぼのまったり時にブラックな異文化コミュニケーションストーリー、1年ぶりの最新刊。今回は調停官に就任する前の主人公の学生時代を描く過去編と、いつも通り(?)の村の小さな(?)騒動を描くお話の2本立て。
過去編「妖精さんの、ひみつうのおちゃかい」がすごく良かった!祖父と上手くやっていけなかったという学舎はいる前の経緯からすっかり周囲に対して壁を作ってしまった「わたし」が様々なヘンな人や人以外やらと出会い、現在の外面は良いけどしぶとくふてぶてしい「わたし」になるまでのお話なのですが、「わたし」と「Yさん」との悪友関係がたまらなくニヤニヤしてしまいました。最初は天敵のような関係だったのですが、結局似たもの同士というか…とある一件を切っ掛けにして打ち解けたらすっかり仲良くなってしまう姿がたまらない。学生時代の悪友ぶりもよかったけど、その後二人が再開した時の和やかな関係にもニヤニヤしました。Yさんは是非とも今後とも登場して欲しいなあ!再登場希望。
2編目の「妖精さんの、いちにちいちじかん」は、妖精さんの不思議パワーで村中がゲーム世界みたいになってしまうというお話。ゲーム好きには思わずニヤリとしてしまうような小ネタ満載でしたが、「敵キャラがアルファベットで表されてる」とかもう何世代前のゲームの話ですか!!!
しかし、この話の最大のポイントはやはりオチだとおもう。
助手さんおそろしい子!!!!!!
さりげなく着々と主人公に対してフラグを立てまくっていく姿に爆笑しました。もうお前らとっととくっついちまえよ!!!主人公にはそんな気1ミリもなさそうなのが哀れですがw
人類は衰退しました4
[著]田中 ロミオ [絵]山崎 透 前回の一件の罰として自慢の髪を切られてしまったので、しばらく外に出たくありません……などという主張がこのご時世に通じるわけもなく、今となっては貴重な肉を得るため町の娘さん達とお手伝いにやってきました。ところが慣れない作業に手間取った挙句、鶏さんたちを逃がしてしまって… |
1編目は衰退してしまった人類の乏しい食糧事情に妖精さんたちが鋭いメスを入れる(違う)「妖精さんの、ひみつのこうじょう」。相変わらずなんとなく癒されるようせいさんの言動に癒されつつ、要所要所で挟まれるブラックさがたまりません。特に序盤で、この世界での食糧事情がそれとなく明かされたのは地味に衝撃でした。なんかあまりにもまったりとスローライフ送っているからわからなかったけど、実は結構食糧事情からして深刻だったのですね…。
お菓子を作くれない“私”から聞かされた、意外に深刻な食糧事情を改善するためようせいさんたちが立ち上がるのですが……微妙な味の缶詰が量産されたり、加工済鶏肉が村を駆け回ったり……と例によってしっちゃかめっちゃかに。喜んでいいのか悲しんでいいのか複雑な気分なオチといい、いろいろと最高でした。文化局長の駄目人間っぷりがさらによい味出してる。
とりあえず小学館は早くこの「助手さんの絵本」を商品化すべき。
子供には間違っても読ませたくない一品になりそうだけど私がほしい!前回の「ごちそうさまぁっ♪」と合わせて、ぜひお願いします。
2編目はようせいさんが過密に集まりすぎてしまった弊害でネガティブになってしまったようせいさんたちと"私"のサバイバルな国家興亡を描いた「妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ」。これ以上のようせい過密状態を防止するため、ネガティブになってしまったようせいさんたちを元に戻すため、そのようせいさんたちを連れて村から離れた場所で生活を余儀なくされた“私”の話。
ようせいさんたちをポジティブな方向に持ち上げようとしつつもさりげなく自分の主張を通しまくり、気がつけばようせいさんたちが築いた王国の女王として君臨してしまっている主人公。後半でようせいさんが●●を製造してしょっぴかれるシーンとか、結局国が滅んだ理由とか、無駄に現実味あって猛烈にシュールだ。でも自分はしっかり楽して過ごすようせいさんとのサバイバル生活はとても楽しそうです。
不思議科学力に頼って、増長し、最後やりすぎて自滅するパターンはかの有名な「ド●えもん」を思い出すなぁ。何か来年は「新展開」があるそうですが、案外15分1話形式の子供番組風アニメとかも向いてるのかも知れないとか思いました。
人類は衰退しました 3
[著]田中 ロミオ [絵]山崎 透 人類は衰退し、妖精さんたちが“新人類”となった世界。衰退してしまった人類の記録を後世に伝えようという「ヒト・モニュメント計画」の一環として、数世紀前に滅んだ都市遺跡の調査の為にクスノキの里に一時的に電気が通う事になりました。里はたちまちお祭り騒ぎになるのですが、一方で電磁波が苦手な妖精さんたちは不吉な言葉とともに姿を消してしまって… |
“わたし”と助手さんが数世紀前に滅亡した都市遺跡の外部を調査をしていたら、いつのまにやら遺跡の中に迷い込んでしまって大変な事に…というお話。いつも助けてくれる妖精さんの助けが見込めない上に当の妖精さんからは不吉な助言(?)をされて、後半までひたすらドキドキしっぱなしでした。今までに無いピンチに手に汗握りっぱなし。妖精さんが現れた時には思わず大きなため息が漏れてしまうほどでした。水がみつからないという極限状況で汚水や(自主規制)の利用を真剣に考え始める“わたし”の姿が、なんだかシュール。
そんなこんなで終盤まで妖精さんたちの出番は殆ど無いのが残念なのですが、2巻から登場した新キャラ・助手さんがとても良い味を出してます。出生が原因で殆ど言葉を喋らない助手さんですが、言葉以上に雄弁にスケッチブックで語る彼の姿がとても素敵です。意外な才能を発揮して主人公を助けたと思えば小学生男子そこのけのモンスター図鑑を作り始めたり、子供が見たら泣き出す事間違いなしなシュールな絵本を作ったりと大爆笑。特に絵本は、イラストが微笑ましいだけに、内容とのギャップが……ギャップが!!
『それから、どうなったかというと——』
『ごちそうさまぁっ♪』
ちくしょう、あのライオンさん、可愛いよ!!!(悶)
そんなこんなで、今回もしっかり楽しませてもらいました。個人的にはほのぼの分、妖精さん分が低かったのがちょっと残念なのですが……その辺は4巻に期待しときます。
人類は衰退しました2
[著]田中 ロミオ [絵]山崎 透 人間が衰退し、妖精さんが新しい「人類」としてまったりと住まっている世界。調停官の仕事をしている「わたし」はある日、妖精さんが作ったとおぼしき謎の不思議道具の知らせを受け、それの調査をすることになりました。その中から計量スプーンを発見した「わたし」が効果を確かめる為、クッキーを焼こうとしてみたところ、いつのまにか妖精さんサイズに縮んでしまっていて… |
「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」は、妖精さんの不思議道具で妖精さんサイズになってしまった主人公が元の姿に戻る為に「小さな」「大冒険」を繰り広げるというお話。ミニマムサイズになってしまった「わたし」がわたわたとあまりにも大きくなってしまった自分の家の中を歩き回るあたりはほのぼのと和んでしまう何かを感じるのですが、後半になるにつれブラックなネタが頻出し、最後の場面では思わず手に汗握ってしまいました。この「数字」増やすための解決法がまたバカバカしくて、このシリーズらしくて素敵。…しかし、最後の方は何故どんどん「数字」が減っていくのかイマイチ判らなかったんだけども。
「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」は、遂に復帰する事になった「助手さん」を迎えに行ったら、なぜか何度も何度も同じような事を堂々巡りでやるハメに……という、ループもの。…えーと、1度読むだけでは意味がわからなかったんだけども……とりあえずお菓子食べたいだけのために自らの技術力を無駄遣いする妖精さん達が可愛すぎる。そして、なんだかんだと言いながらしっかりと本能のままにお菓子を作ってしまう「わたし」が可愛いですw
ちょっとSF色が強くなったとはいえ、独特のまったり具合は健在で、地味に続きが楽しみなシリーズです。というか続編は今週発売なのかーーーっ!!!なんというタイミング…。
人類は衰退しました
[著]田中 ロミオ [絵]山崎 透 人間が衰退して“旧人類”と呼ばれるようになった世界では、妖精さんが「人類」としてまったりと住まっていました。世界でも最後になるであろう学校教育を卒業した「わたし」は仕事の楽さと適度な張り合いを求め、おじいさんの後を継ぎ妖精さんと人間の橋渡しをする“調停官”の仕事につくのですが… |
おじいさんと主人公のユルユルーな会話や、主人公と妖精さん達のほのぼの?とした会話にとにかく肩の力が抜ける。凄い和む。疲れたときとかに読むときっとストレスが緩和されるに違いありません。きっと文章からα波が出てます。凄まじいまでの癒し系小説でした。
ちょっぴりテンポの外れた会話の応酬も非常に魅力的なんですが、物語の展開も非常に好み。ゆったりまったりしてほのぼの和み系なのに、妙にサバサバしたやりとりとか、「妖精さんの、あけぼの」でのどこか薄ら寒いモノを感じるオチなどは新井素子の短編SFに近いものを感じて、最後の報告書で思わずニヤニヤしてしまったり。
なんかこう色々なものに疲れた時に、甘?いクッキーとミルクティー片手に読みたいという感じの1冊ですね。それこそ小学校の図書室にこっそり置いておきたいような、万人にオススメしたい一作。特に「MOTHER」シリーズで「どせいさん」に癒されてしまうような人は是非読むべき。かなり似たようなベクトルです。
既に2巻が発売されているようなので、また人生に疲れたら手を出してみる事にします。
以下余談。
本作の著者である田中ロミオ氏といえば「クロスチャンネル」などのエロゲーのシナリオライターとして有名な方らしいのですが、私の脳内では「Fate/Zero3巻のあとがきの人」というイメージだったりします。先日まで
「田中ロミオ」→「ギルガメシュ(誘い受)の人」(⇒当サイトのFate/Zero vol.3感想を参照)
…という脳内反射を行っていたのですが、本作を読んでイメージが変わりました。
次からは
「田中ロミオ」→ |
※どせいさんのアイコンはSaturn Fortress様からお借りしました。