“日向 悠二” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

キーワード:日向 悠二 (25 件 / 3 ページ)

猿渡さん家のラグナロク

 

「では、家族会議を始めよう」遡ること数日前。MMORPG『ライブライフオンライン』で念願のマイホームを手に入れたサワタリ家はお隣のイヌガミ家とすっかり意気投合。ところが引っ越し祝いの狩りでレアアイテムを巡り大喧嘩!口論の末PvPトーナメントで決着を付けることに!!さらに、対お隣さん用装備の製作に励むサワタリ家を予期せぬトラブルが襲う―!?『吉永さん家のガーゴイル』コンビが贈る、VRファンタジー・コメディ堂々開幕!! (「BOOK」データベースより)

 「吉永さん家のガーゴイル」コンビの新作。製造スキル特化の主人公一家と戦闘スキル特化のおとなりさんが狩りの報酬分配で揉めてしまい、PVで決着をつけることになるお話。

 戦闘特化のお隣さんに戦闘で勝つために、装備を強化したり、戦闘補助をするアイテムを製造したり……あくまで自分達のフィールドである製造部分で勝負するのにニヤリとする。勝ち目がないように思えて、決して侮れる一家じゃないことがイヌガミさん一家にも読んでいた読者にも少しずつ伝わってくるのが楽しい。

 今の時代よりもよりMMORPGが日常生活に密着している世界の話で、ネトゲ世界だけど現実の世界での人間関係が深く結びついている世界観も面白かった。引きこもりの子がゲームの中で授業を受けられたりと良い方向に変化した側面もある一方で、当然ながら現実と深く結びついてしまったからこそのデメリットもあって。特にコノカの“いじめ”の話は、ネットワークゲームが生活に深く結びついてしまったことへの弊害のように思えて、辛かった。

 それでも、事件の原因を突き止めたのも、困ったときに助力の手を差し伸べてくれたのも猿渡一家がリアルやネットワークの中で築いてきた人間関係で。田口先生の作品らしい、「家族の絆」と「ご近所さんとの絆」にあふれる暖かいお話でした。普段はいがみあっていた猿渡一家とイヌガミ一家の連携プレイが爽快で、読んでてめちゃくちゃ気持ち良かったです。

 1巻で綺麗に終わってる話なのかとおもっていたけど、エピローグに「つづく」と書いてあるから2巻が出るんでしょう……か……?吉永さん家みたいにのんびりと末永く続いてくれるといいなあ。


スレイヤーズ 2 リナと怪しい魔道士たち

[原作]神坂 一 [著]南房 秀久 [絵]日向 悠二

前回の冒険で出会ったガウリイとシルフィールと共に、アトラスシティにやってきたリナ。ゆっくり羽を伸ばそうとしていたっていうのに、ついた途端に怪しい男が現れて魔道士協会の副評議長・タリムの護衛をしてほしいなんていい始めた。嫌々ながら依頼を受けてはみたものの、なんだかキナ臭い雰囲気で!?
 
児童文学用にリライトされたスレイヤーズ!の第二弾。今回は原作2巻「アトラスの魔道士」を元にした内容になってます。タリムを見た瞬間に、あらいずみるい絵のお茶目なホルマリン漬け生首が脳裏をよぎりましたが、この作品は子供向けなのでそういうシーンは一切ありません(笑)

原作ではポイント登場の準レギュラーだったシルフィールが、すっかりサブヒロイン(?)としてパーティに加わってくるのが面白い。ガウリイを巡る恋のライバルというよりも破天荒だけどまだまだお子様(※本シリーズでは12歳設定)なリナをたしなめる、生真面目な保護者役という感じのキャラになっててなかなか可愛いです。そしてさりげなくナーガを見捨てる発言かましたりして、さりげなく黒い……

1巻と同じく、大元の展開は同じところを辿ってはいるものの死者が基本的に出ない設定になっているということもあり、本編のノリというよりは「すぺしゃる」の方のノリに近くなってます。「魔道士協会」「タリム」「デイミア」「ハルシフォム」などの組織名・人名が覚えられないガウリイの場面を問わないマジボケにリナが涙目でツッコミ入れてるのには思わず噴いた。…ガウリイは本当に凄腕剣士という設定がどうでもいい状態のボケキャラになってるのがちょっと可哀想です…そしてナーガが居るだけでこんなに作品がギャグ化するとは!ナーガ恐ろしい子!

そのほかロッドが主人思いの忠実な護衛になってたり、ハルシフォムとルビアがらぶらぶだったり。ハルシフォムは前回のレゾに続き、挿絵も相まって凄いいい人っぽく…ていうかヒッシャムを思い出s……挿絵って大事ですね。

しかし、このまま進むとコピーレゾの一件とか、アメリアの話とかはどうやって処理するつもりだろう?ゼルガディスは1巻終了時点で死ななかった自分の部下たちと旅をしてるはずなので、そっちをなんとかしないとパーティに加わるのは難しいだろうし、アメリアは設定的にナーガと同時登場できるのかが気がかり(ここまできたら、敢えて絡ませてほしい気もしますが…)。シルフィールを「神官」ではなくて「巫女」と描写しているあたり、セイルーンの話ではアメリアの変わりにナーガを押し出して、PTの回復ポジション的にはシルフィールを…という考え方も出来るんだけど、ゼルガディスとアメリアはシリーズ屈指の人気キャラのはずなので出さないというのも微妙のような……

何より「角川つばさ文庫」がどこまで存続するのかが最大の疑問なのですが。かなり大きな本屋で探しても発売日直後に平台展開すらされてなかったのでそんなに売れてないように思えてしょうがない……スレイヤーズシリーズは結構楽しんで読んでるので、ぜひとも一部ラストくらいまでは頑張ってほしい気がするんですが。(このシリーズの雰囲気的に、二部は無理だろうなあ)


スレイヤーズ 1 リナとキメラの魔法戦士

   
原作
神坂一

けっこう有名な天才美少女魔道士・リナ=インバースは、今日もお仲間のナーガと共に、盗賊いぢめに精をだしていた。ところが、何か勘違いしてる剣士のガウリイがあらわれて何故か一緒に旅をすることに。しかも盗賊から奪ったお宝を狙うやつらがあらわれる。さあ、大冒険がはじまるよ!

原作1巻「スレイヤーズ!」の内容を元に、ナーガとシルフィールを加えて内容を子供向けにリライトしたお話。挿絵が「吉永さん家のガーゴイル」の日向さんで、何度見てもシルフィールが梨々に見えます。あとレゾさんのいい人オーラが半端じゃねえ。原作はあんなにうさんくささ爆発だったのに、なんかもうこのレゾさんには「さん」付けせずにいられないいい人オーラがある!!!

というわけで内容…ううむ……なんかすごく普通だ……。
どう考えても小学生の教育的に微妙そうな物語をどうアレンジするのかと思ったのですが、もともとの原作が持ってた毒気が殆ど抜かれてしまって、普通の王道勧善懲悪ファンタジーになっちゃった印象。ころころ寝返るけど最終的にはなんだか仲間想いなナーガとか、シルフィールとガウリイに露骨にヤキモチやくリナとか、なんだか原作を知っているとあちらとの差異だけで笑えてしまいます。レゾがハープ出してヘボい歌を歌いだした時にはマジでどうしようかと。しかし、ガウリイは本当に100%ただのオバカさんになってしまっていてちょっとかわいそうだ…。

個人的には、赤法師レゾの扱いが大きく違うのはなんだかな。大きなネタバレになりますが、原作のレゾって決して「善人」ではないんですよね。最初から最後まで自分の目的の為だけに動いていて、周囲の人々が勝手に「善人」というレッテルを張っただけで。それが、元々善人だった人の絶望にシャブラニグドゥがつけこんだ、という設定に変えられてしまったのはちょっと残念でした。あとゼルガディスの手下の扱いとか、全体的に毒気を抜いた分物語そのものの魅力もちょっと薄くなってしまっているように感じました。

確かに面白くはあったんですが、辿ってるストーリーラインが同じだけで中身は全くのベツモノになってしまっているので、これを富士見ファンタジア文庫の「スレイヤーズ」と同じだといわれるのは凄い抵抗ある…原作はもっとドス黒い何かが根底にあるというか、本来「悪の魔族を倒すため、正義のリナちゃんがいっくぞー☆」ってお話とは対極に位置するような物語なんだよなあ。

いまアニメもやってるし、ファン層を広げたかったんだろうというもくろみはわかるけど、もうちょっと無理しなくても角川グループにはもっと児童書向けな嗜好のラノベが沢山あるじゃないか。ていうか挿絵に日向悠二さん採用するなら、「吉永さん家のガーゴイル」をつばさ文庫用にリライトして出そうよ!田口作品なら間違いなく、文章を子供向けにするだけで普通にイケるよ!!!


ガーゴイルおるたなてぃぶ ZERO

[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二

実家を出て一人暮らしをしながら「鳥屋」というなんでも屋を営む駆け出し錬金術師・東宮ひかる。錬金術の研究にはお金がかかるし、なかなか依頼は来ないわで貧乏と戦う毎日を送っていたが、同じマンションで花屋を営む板垣から「ひかるちゃんにぴったりな仕事」という依頼を受けて…
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ひかるとガー助が古科学者達と戦う発端となった事件を描いた短編に、高原喜一郎を主人公にしたおるたなてぃぶで語られなかった事件を描く短編3つと、「吉永さん家」「おるたなてぃぶ」のキャラが競演する書き下ろし短編を収録した短編集です。

良くも悪くも「おるたなてぃぶの短編集」なんだよなー…タイトルに「おるたなてぃぶ」の名前を冠している以上当たり前のことなんですが、これが「ガーゴイルシリーズ最後の1冊」といわれるとちょっと寂しいものが…。おるたシリーズも戦いの無い、ほのぼのとした短編が読みたかったな?。特に喜一郎をメインに描く短編は「おるた」シリーズ本編よりも重くて、ちょっとキツい部分も多かったです。戦時中の話は結構好きだったんだけどな。特に「戦時中の」ガーゴイルが喜一郎との会話から「現在の」ガーゴイルへと変化を遂げていくやりとりは面白かった。

個人的には書き下ろしの「高原さん家の小さな変化」と「吉永さん家と東宮さん家と高原さん家の晩餐」が面白かった。前者は喜一郎を主人公としたシリーズのうちの1つでバトルメインのお話ではあるのですが、様々な立ち位置でひかる&ガー助と知り合った他人同士がそれぞれの立場から二人を護るため共闘するという展開が凄く良かった。そしてヒッシャムさんの大活躍を思わず絶賛せざるをえない。

後者はやっぱり双葉&イヨ&ひかる、ガーゴイル&ガー助という本編では出会わなかったキャラクターたちが競演、というだけで物凄い盛り上がる!特に本当に短い部分なのですが、ガーゴイルとガー助の共闘が熱すぎました。口調から性格からぜんぜん似てない二人(二体?)なのですが、根っこを流れる熱いものは同じ二人に胸を熱くさせられます。

しかし、やっぱり「これで最後」といわれると寂しいものが…ガーゴイル&ガー助のコンビももうちょっと見てみたかった気がするし、冒頭漫画で絡みのあった梨々&カンジとか、「おるた」終了後のガー助&狛の話とかも読んでみたかった。読み始めたのがつい最近というのもありますが、もう1?2冊何か番外編的な何かが出て欲しいなあと思わずにはいられません。


ガーゴイルおるたなてぃぶ4

[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二

お七婆さんの節約食事術に感服しつつ、ミズチの動向に関する情報収集を行っていたひかるたち。調べていくうちにミズチが様々な人物を相手にとんでもない脅迫を行っていることがあきらかに。彼らの陰謀を食い止めるために動き出そうとしたひかるたちの前に、パワーアップした狛が立ちふさがる…!?
   個人的お気に入り度数
Lv.1なご近所ヒーロー・ひかる&ガー助コンビが繰り広げるもうひとつの「ガーゴイル」シリーズ、完結編。レイジとの決着がこちらで付かないのは解っていたのでどうやってオチをつけるのかと思ったんだけど、予想とおりあの人がラスボスとして出てきました。本編の「ガーゴイル」で軽く触れられていた、喜一郎が平賀に拾われて古科学をはじめた話ってこちらへの伏線だったんですね。

悪くはなかったけど序盤からバトル、バトル、バトルの連続でやはりそれ以外の部分への物足りなさが否めなかったかなあ。最後だし(最後だからこそ)もうちょっと日常描写がほしかった気がするのですが…個人的には日常分:バトル分の比率は3巻あたりが一番ちょうど良かったかも。

悪い意味で、3巻が盛り上がりすぎてて4巻が一種の後処理に見える。これまで「1つの生命をひかるとガー助の2人で分け合っている」という設定から生じていたバトル中の危機感が3巻で解消されてしまった上に、やはりレイジと比べると今回のボスキャラトリオは格が一段劣る感じで…。

個人的には、ひかるたちの活躍よりもお七御婆ちゃん大活躍にニヤニヤが止まりません。もう私、どんだけこのお婆ちゃん好きなんだと思うけど!!あと最初から最後まで可哀そうな役のヒッシャム哀れ。

このシリーズは一応ここで完結。来月「ガーゴイルおるたなてぃぶZERO」という番外編?っぽいタイトルの発売が予告されているのですが、こちらはどうなるのかな。個人的にはやはりバトルメインになったせいでおざなりになりがちだった逸色ビルの面々とのふれあいを中心にしたほのぼの番外編とかだったら嬉しいけど(エピローグでちょっと出てきた狛とガー介の凸凹コンビっぷりとかもっと見たい)、原作で事件の顛末しか語られていない板垣さんが古科学者に利用された事件の話とかになりそうな気もするなあ…


コラボアンソロジー2 "文学少女"はガーゴイルとバカの階段を昇る

[著]野村 美月、井上堅二、田口 仙年堂、櫂末 高彰
[絵]葉賀 ユイ、竹岡 美穂、日向 悠二、甘福 あまね


文芸部の活動の一環としてやってきた図書館で、姫路瑞希と出会った遠子と心葉。以前から遠子と仲が良いらしい彼女だが、ちょっと元気がない。そんな瑞希を救うため、今"文学少女"が立ち上がる—!?
   個人的お気に入り度数
「文学少女」シリーズ、バカテス、ガーゴイル、学校の階段の4作品のコラボレーション5編を収録した短編集。
もうなんていうか……冬コミへの燃料投下ありがとうございます(鼻息荒く)

「"文学少女"と乙女に集う召喚獣」(文学少女×バカテス)
以前から噂だけ聞いてずっと気になっていた短編を、遂に読む事が出来たよ…!!姫路さんの話を聞いて何故か雄二と明久がデキていると勘違いした遠子先輩が、雄二達F組の面々と召喚獣勝負をする話。

遠子先輩の文学で鍛えた腐女子フィルターSUGEEEEE!!!!!
雄二と明久のいつものドツキ合いを見てあっさり「デキている」と言い切る彼女が最高すぎます。すげえ、すげえよこの人。かなり序盤から明久総受説を推奨してきた私ですが、遠子先輩の雄二×明久表現に新次元を見た気がする。「情熱的な視線の絡み具合」「甘えるような濡れた声」……想像するとエロい、エロいよ雄二×明久!!もう私、バカテスまともに見られない!!(腐女子的な意味で)

野村美月先生御本人による、華麗なる「遠子壊し」っぷりが壮絶。このコラボの裏タイトルは「本当はエロい"文学少女"」でいいと思います。この人きっと、心葉の居ないところでBLとか官能小説とかガッツリ摂取してるに違いない……

初々しく可愛らしい明久×瑞希とか、分かり合うペッタンココンビとかにもニヤニヤでした。そして葉賀さんの心葉くん可愛いよ心葉くん。心葉くんの召喚獣には是非別の機会にちゃんとバトルして欲しいなあ。あの武器でどうやって戦うのか見て見たい。

「"文学少女"と殺された莫迦」(バカテス×文学少女)※濃厚腐要素注意な初読感想:前編/後編
先行掲載されていた書きおろしコラボ。明久の国語力に将来の不安を抱いた遠子と心葉が文月学園を訪れたら、何故か殺人事件(!?)が起きて…というお話。この小説の感想については初読時に腐女子日記の方で散々痛々しく語っているので省略。

とりあえずコノハちゃん可愛いよコノハちゃん。コノハには女装が似合うと常々思ってた!!井上先生ありがとうありがとうありがとう大事な事なので3回言いました!!あとがきでの野村先生のはしゃぎっぷりにはごっついシンパシーを覚えます。

「天栗浜のガーゴイル」(ガーゴイル×階段)
旅行先で階段部の面々と遭遇した双葉が階段部の活動に興味を抱き、飛び入りで幸宏と階段レースをすることになるお話。

はっちゃけ率激高いコラボ群の中では割と正統派な短編。双葉をただの小学生だとナメてたら持ち前の運動神経とガーゴイルのサポートもあってかなりいいところまで追い詰められて…階段の爽やかスポ魂青春コメディと吉永さん家?のほのぼの具合が良い具合にマッチして、普通に面白かったです。筋肉部に筋肉を讃えられてドン引きする双葉が可愛い。それにしてもガーゴイルはどんどん妙な部分で器用になっていく…。

個人的にはガーゴイルのコラボはもう1個くらい見たかった気がします。というかガーゴイルに文月学園に乱入してもらって、卑怯な戦術をかますF組の面々に鉄拳制裁しまくる展開が見たかった。次の機会があったら是非そんな感じで……ってガーゴイル完結したからもう無理かな。

「バカと階段と召喚獣」(階段×バカテス)
文月学園が外部向けに行った召喚獣お披露目イベントの話を聞いた階段部が準備中のイベント会場に乗り込んで明久達と召喚獣で階段勝負をするお話。

序盤、かなり雰囲気の違う文月学園一同に違和感感じてもにょもにょしてしまってたのですが、だんだん読んでるうちに話に引き込まれて多少の違いは気にならなくなってしまいました。とりあえず、普段以上にバカ&ドジ5倍増しな明久や、所構わず足を引っ張り合いまくりな悪友コンビにニヤニヤが止まらない。

それより何より秀吉×雄二はじまりすぎた!!!すげえ、櫂末版秀吉最強じゃね!?ただ役になりきっただけとは到底思えない妖艶腹黒オーラに噴いた。雄二がツンデレなのは激しく同意!!「これの秀吉もう全然ちげー!」「でもこれはこれでイイ!!!」と脳内テンションMAXでした。

そしてこの作品の「あとがき」の破壊力は異常。もはや素で漫才の領域。櫂末先生が雄二、井上先生が明久に見えました。そういう幻視をしました。ごめんなさい。すいません。

一つだけ残念だったのは、この短編のみ文中挿絵がなかった事かなあ…甘福さんはこの後の文学少女×階段コラボでも挿絵を担当されているので負担が大きかった事は確かですが、唯一の表紙絵もメインは階段キャラでバカテス側は秀吉の召喚獣だけ。バカテスファンとしてはちょっと物足りなかったです。ううっ、甘福さんのイラスト好きなので楽しみにしてたのになぁ…

「"文学少女"とやってきた走者」(文学少女×階段)
他高校との交換入部で階段部に体験入部した心葉と、文芸部に体験入部した幸宏の一週間のお話。書きおろし。

普通に爽やか熱血青春スポ魂モノになっていて、純粋に楽しめました。なんだかんだと文芸部に馴染んでしまって平和な日々を謳歌するものの、どこか物足りなさを感じる幸宏と、典型的な文化系で階段部にちっとも馴染めず階段レースのタイムも上がらず疎外感を感じるばかりの心葉の姿が対照的。そんな2人の鬱屈を吹き飛ばすような最後の2日間での先輩達の行動に胸が熱くなりました。そして何気にLOVEもあるよ!!


一応全作品読んだ事があるというのは大きかったですが、どれも良い具合に各作品の雰囲気が融合していてとても面白い短編集でした。こういう企画は他のレーベルではやってないと思うので、今後も是非続けて欲しいです。やはり読んでない作品とのコラボはなかなか手を出し辛いものがあるとおもうので敷居は高そうだけど…


ガーゴイルおるたなてぃぶ

 

普段はガー助って呼ばれてる自動人形、俺の名はガーゴイル。遠くの町を守る最強の門番にあやかって名づけられた。猪崎市のとある雑居ビルが俺と相棒の住処だ。そこで駆け出し錬金術師のひかるとなんでも屋「鳥屋」を開業し、普通じゃ解決できない仕事を引き受けてる。暴走ダチョウの捕獲が済んだら、次の依頼は見たことも聞いたこともない巨大生物の相手だと!?どーすんだ。俺に任せすぎんなよ尻デカ天パー女!新“錬金”コンビが贈るハートフルコメディ。(「BOOK」データベースより)

吉永さん家のガーゴイル」と世界を同じくし、本編でも少しだけ登場した古科学者と新米錬金術師・ヒカルともう一人のガーゴイルの戦いを描く番外編的シリーズ。

バトルメインの展開自体は悪くはないんだけど、無理にバトルシーンを増やそうとして持ち味である人情味とかご近所成分が潰されてしまってる印象で、それがかなりキツイかなぁ…というか、物語の裏にはちゃんと「ご近所成分」がありそうな気配がするのに、それを描いて貰えないというのが凄くもどかしい。ご近所成分不足でとても欲求不満。

キャラ立てが終わる前にバトルに入ってしまっているので、各キャラに感情移入しづらい。特に高原喜一郎という、本編でしっかり描かれているキャラが登場するとどうしてもそっちに目が行ってしまう。ていうか喜一郎可愛いよ喜一郎。

ヒカル達が古科学を憎むようになった理由も中途半端にしか語られず、当事者であった千秋はとにかく、ヒカル達がそこまで彼らを憎む理由がイマイチ伝わってこなかったり。基準がどうしても本家本元の吉永家&ガーゴイルになってしまっているからか、ヒカル達の心が狭いように感じてしまう。うむむ……。バトルもいいけど、もうちょっとその前にキャラ立てをがんばってほしいというか…。

とりあえず、本家「ガーゴイル」とのクロスオーバーが気になるのでもう少し読んでみたいと思いますが、できれば次はもうちょっとバトル置いておいてキャラメインの展開にしてほしい……。


吉永さん家のガーゴイル15

[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二

ケツァルコアトルとの戦いに敗れ、破壊されたガーゴイルはレイジの策略で御色町を破壊した張本人として、"御色町の敵"と認識されてしまう。町中で冷たい目線を浴びながらも、砕けたガーゴイルの破片を集めるため、町中を奔走する双葉。一方で百色や東宮達など真実を知る僅かな人々もまた、反撃の機会を伺っていて……ガーゴイルは御色町を守ることが出来るのか!?
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シリーズ完結編。…くそう、今までの総決算の如く要所要所に泣かせポイントが仕込まれていて、最初から最後までノンストップで胸が熱くなりっぱなしでしたよこんちくしょう!

人災による怒りと混乱で不安定な精神状態にある御色町の人々につけ込んだレイジの陰謀を、吉永家とガーゴイルが2年間かけて築き上げたご近所との信頼でひっくり返していくという展開。最初は聞く耳持たずだった人々の意識が少しずつ変わっていって…双葉がガーゴイルの破片集めをしている最中に偶然その破片を持っていた人々が揃って「お守り」という言葉を口にする場面には胸が熱くなった。目撃者が何人もいる以上その信頼を取り戻すには相当な冷却期間が必要なのでは…と思っていたのですが、考えた以上にガーゴイルが2年間で培ってきたものは大きかった。

双葉たちの奮闘、高原親子の絆、怪盗百色と梨々の信頼関係……などなど、魅せ場だらけの1巻でどこを取っても語りつくせないほどなんですが、なんといってもガーゴイルが復活した後のクライマックスが熱すぎる。今まで決まり文句のように「吉永家の門番」という名乗りを上げてきたガーゴイルが和巳や双葉たちに"護られる"ことを是とし、「吉永家のガーゴイル」と言い直す場面では思いっきり泣かされました。考えれば、今までガーゴイルはその名乗りを上げることで最後の最後で吉永家の一員となることに線を引いてきたのではないかと。作中時間で2年・実に15巻分もの長い物語を経て、ガーゴイルはやっと真の意味で吉永家の一員になったのではないかという思いで胸がいっぱいになった。

一方で、レイジとの方はなんか実に中途半端な決着になってしまって…ある意味、ご近所時空に毒されなければ最後まで最凶最悪の悪役であれたのではないかという気がして、案外復活したら仲良くやっていけるんじゃないかという気がしてしょうがない、微妙な終わり方でした。うーん、でも、このお話に人殺しはやっぱり似合わないし、かといって彼らが手と手を取り合って暮らしていける程、並み半端な憎しみでもなかったんだろうなぁ…最後の最後でちょっと「実は手を取り合えたんじゃないか」なんて思わせてしまうところがニクイですね。

15巻ほぼ一気読みでしたが、ほとんど「つまらないなぁ」と思うような展開もなく、時にシリアスもバトルも織り交ぜながら最後まで根っこはどこまでも「ご町内」で「アットホーム」な雰囲気を持ち続けたまま終わってくれたことが本当にうれしかったです。巻数の多さで尻ごみしていたシリーズだったのですが、思い切って手をつけてみて本当に良かった!

…それにしても、13巻以降はおそらく「ガーゴイルおるたなてぃぶ」とのクロスオーバーだろうなあと思われる空白がかなり多く…だいぶ雰囲気が違うと聞いたのでとりあえず本編だけ一気読みしてみたのですが、やはり「おるた」の方にも手をつけてみようかな?。


吉永さん家のガーゴイル14

[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二

百色とガーゴイルに静かな復讐の炎を燃やす男・レイジがやってきた。以前の小物ぶりとは打って変わって余裕の表情で吉永家に現れたレイジに、ガーゴイルと百色・ケルプ・デュラハン・オシリスという最強の面々で立ち向かうが軽くあしらわれてしまう。今までには無い強敵の出現に警戒を強める一同だったが、適確にそれぞれの弱点を突かれ…
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ちょっ……これは……なんという……。

シリーズは遂に完結編に突入したシリーズ第14弾。これまでのほのぼの暖か展開とはうってかわって重く、痛く、シリアスな展開。…というか、今までの13巻、時にシリアスも挟みながら基本的にほのぼの&あったかでやってきたという積み重ねがあったからこその重さと痛さ。ご近所アットホームコメディでこんな痛々しい展開を見ることになろうとは……

13巻で明確になったガーゴイルの弱点をレイジが適確に突いてきた形で、御色町に潜伏している間にご近所さんからの信頼を勝ち取り、「いい人」と認識させた上で攻撃してきたガーゴイル達が悪であるかのように錯覚ていく姿は敵ながらお見事と言わざるを得ない。今まで散々、長所として描かれてきた御色町の人々の人のよさがこんな風に裏目に出るとは…とにかくレイジ、悪趣味にも程がある…。

ガーゴイルや百色の御色町を護ろうとする思いが伝わらず、むしろレイジの手によって正反対の方向にゆがめられていく姿を読者として見る(読む)事しかできない事が、とにかくもどかしかった。そして文章の構成が悪趣味すぎる(※褒め言葉です)。つい数日前まで確かに存在していたはずの暖かい関係と、その関係がみるみる崩壊していく様子を交互に読んでいかなければならないのは正直かなり精神的にきつかった。なんかもう、13巻までずっとガーゴイルと吉永家とご近所さんたちの関係を持ち上げて持ち上げて持ち上げてきたのはここでどん底に突き落とす為だったんじゃないかと考えてしまうほどの、重く痛い展開。そして更に引きが凶悪すぎるっ!!!

泣いても笑っても、次が最終巻。
全員が笑って一発逆転・大団円なラストが見れることを心の底から期待してます。


吉永さん家のガーゴイル13

[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二

古科学者達の組織「ミズチ」の首領となったレイジが吉永家を狙っている。そんな話を怪盗百色から聞かされたその日にガーゴイルは初めて吉永家への侵入者を許してしまう。しかも、偵察のためミズチから送り込まれたその侵入者は双葉とそっくりの姿をしていて…!?ピクシーと名付けられた彼女はすっかり吉永家になじんでしまうが…
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本編残り3冊。7巻で対決したレイジが復活して不気味な動きを見せ始め、巻数的にもラスボスの姿が明確になってきた感じのシリーズ13弾。微妙にほっとかれたまま置いてきぼりな設定(つか、「ミズチ」周りの話)がありますが、このへんは「おるたなてぃぶ」の繋がりなんだろうなあ…

吉永家に不審者の侵入を許してしまった挙句、レイジの生み出した人工精霊・ピクシーが双葉と感覚を共有してしまうという大失態を犯してしまい、ショックを受けたガーゴイルが凹んでる姿が新鮮。実際、2年間も門番をしていたガーゴイルが殆ど感知できないまま吉永家に侵入されてしまったというのは考えてみるとかなりの大事件な気がするんですが、結局そんな侵入者も吉永家の暖かい雰囲気にすっかりなじんでしまう姿が微笑ましかったり。そして生まれたばかりのピクシーに色々と人間の常識を教えようとするガーゴイルを見て、2年間の成長に感慨深くなったり。

いつものように最後で畳み掛けるように感動させられるようなお話ではないんですが、ご近所さんや吉永家の暖かさが少しずつじんわりと効いてくるお話でした。弱点を突かれて攻撃をためらうガーゴイルに吉永家の家族達が鉄拳制裁を持って家族の絆を再認識させるくだりが熱すぎる。相変わらずのママ最強伝説ですね!
ラストで双葉がピクシーにかけた、さりげない歓迎の一言には胸を突かれました。

一難さってまた一難、次回からは遂に最終決戦に突入する訳ですが、なんとしても家族パワーで大円満な展開を勝ち取って欲しいです。っていうかラストは大円満だって信じてる…!!

ところで、個人的に一番ツボったのは実に11巻ぶりの登場となる梨々パパ。
親バカっぷり爆発させて百色をおろおろさせる姿に爆笑。うろたえる百色可愛いよ百色。