原作1巻「スレイヤーズ!」の内容を元に、ナーガとシルフィールを加えて内容を子供向けにリライトしたお話。挿絵が「吉永さん家のガーゴイル」の日向さんで、何度見てもシルフィールが梨々に見えます。あとレゾさんのいい人オーラが半端じゃねえ。原作はあんなにうさんくささ爆発だったのに、なんかもうこのレゾさんには「さん」付けせずにいられないいい人オーラがある!!!
というわけで内容…ううむ……なんかすごく普通だ……。
どう考えても小学生の教育的に微妙そうな物語をどうアレンジするのかと思ったのですが、もともとの原作が持ってた毒気が殆ど抜かれてしまって、普通の王道勧善懲悪ファンタジーになっちゃった印象。ころころ寝返るけど最終的にはなんだか仲間想いなナーガとか、シルフィールとガウリイに露骨にヤキモチやくリナとか、なんだか原作を知っているとあちらとの差異だけで笑えてしまいます。レゾがハープ出してヘボい歌を歌いだした時にはマジでどうしようかと。しかし、ガウリイは本当に100%ただのオバカさんになってしまっていてちょっとかわいそうだ…。
個人的には、赤法師レゾの扱いが大きく違うのはなんだかな。大きなネタバレになりますが、原作のレゾって決して「善人」ではないんですよね。最初から最後まで自分の目的の為だけに動いていて、周囲の人々が勝手に「善人」というレッテルを張っただけで。それが、元々善人だった人の絶望にシャブラニグドゥがつけこんだ、という設定に変えられてしまったのはちょっと残念でした。あとゼルガディスの手下の扱いとか、全体的に毒気を抜いた分物語そのものの魅力もちょっと薄くなってしまっているように感じました。
確かに面白くはあったんですが、辿ってるストーリーラインが同じだけで中身は全くのベツモノになってしまっているので、これを富士見ファンタジア文庫の「スレイヤーズ」と同じだといわれるのは凄い抵抗ある…原作はもっとドス黒い何かが根底にあるというか、本来「悪の魔族を倒すため、正義のリナちゃんがいっくぞー☆」ってお話とは対極に位置するような物語なんだよなあ。
いまアニメもやってるし、ファン層を広げたかったんだろうというもくろみはわかるけど、もうちょっと無理しなくても角川グループにはもっと児童書向けな嗜好のラノベが沢山あるじゃないか。ていうか挿絵に日向悠二さん採用するなら、「吉永さん家のガーゴイル」をつばさ文庫用にリライトして出そうよ!田口作品なら間違いなく、文章を子供向けにするだけで普通にイケるよ!!!
コメント
著者の南房秀久が、富士見ファンタジア文庫で出した作品『トリシア先生、急患です!』を児童文庫(エンタティーン倶楽部)にリライトした時も、本来死ぬはずだったキャラが死なず(というか、基本的に人殺しはない)、基本的にみんな「いいひと」になっていたり、新キャラクターを出したりして、基本的なストーリーこそ同じだけど、全くニュアンスの異なる別作品になっていました。一応その時は、それまでエンタティーン倶楽部で書いていた「トリシア」シリーズの続きという位置づけだったから、それほど違和感なかったのですが、神坂『スレイヤーズ』読者がいきなり読んだら違和感を覚えるだろうことは、何となく予想してました。
以前、それについて書いた日記↓
『トリシア先生』シリーズに見る児童文学とライトノベルの違い
https://eternalsisters.web.fc2.com/diary/diarylog_081129-081130.html#200811-30_2
追伸
メールアドレスは、SPAM対策の“捨てメアド”ね。
返信遅れて申し訳ありません?…
南房さんの作品はこれがはじめてだったのですが、以前にも児童文庫へのリライトを経験された方だったんですね。そういう経験があったからこそ、今回の「スレイヤーズ!」のリライトにも抜擢されたのでしょうか。児童向け文学へリライトされる時点で、ある程度作品が改変されてるであろうことは予想してましたが、かなり大幅に作品そのものが変わってしまっていたのでかなりビックリしました。
まあでも、原作をそのままリライトしたら子供泣きかねませんよね?…神坂作品そのものが結構キャラ死亡率高いというか、展開がグロい作家さんですし。