内戦という名の戦争により「皇国」と「民国」の2つに分かれた日本。その戦争がはじまった日に、全世界のソメイヨシノが消滅するという事件が起きる。ただ9本だけ、人間の意識と繋がった桜だけが滅びの直前で時間を止め、桜と繋がった人間達は超兵器《桜花》を操る力を得た。《桜花》のパイロットとして集められた、桜により互いの意識を繋げた少年少女達が巻き込まれた「戦争」の物語。
散りゆく桜のような、美しいけど、どこか儚く切ないお話でした。圧倒的な力を誇るが飲み込まれたら二度と還ってこれない超兵器・桜花を駆る主人公たちの苛酷な日常の合間に、仲間達と過ごした掛け替えの無い時間がまぶしい。特にカラー口絵にもなっている4人のお花見のシーンは、後に読み進めれば読み進めるほど輝いて見えて、まぶしかった。
個人的には戦争描写を美化しすぎてるなぁという印象があって、そのへんはちょっとモヤモヤしてしまったんだけど、ちょっと特別だけど本当はどこにでもいるような普通の少年少女達の青春物としてはとても面白かったです。まだまだ続きが出せそうな感じではあるんですが、2巻以降はどうなるんだろう。しかし、綺麗に落ちているのでこのままでいいんじゃないかという気がしなくも……
終盤の展開は杉井さんのデビュー作「火目の巫女」を思い出すなあ、と思ったので火目好きは読むといいとおもいます!(むしろこの作品が気に入った人は是非「火目」に!というべきなのか?)
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すべての愛がゆるされる島
愛さえあればどんな「禁断の愛」でも認めてもらえるという教会で、それぞれの愛の「存在証明」と「不在証明」を目指す二組4人の男女の視点から語られるちょっと不思議な島の成り立ちのお話。これまで読んだ杉井光作品のどれとも違う、しっとりとした背徳と愛の物語でした。とりあえず、杉井光というと「高いツッコミ技能を持つ主人公の一人称」みたいなイメージがあった(「火目の巫女」などは除く)ので、まず少女の一人称で始まった事にびっくり。こんなお話も書ける人なんだなあ。守備範囲広い。
「すべての愛がゆるされる島」と教会、そしてそれを取り巻く人々の過去や謎が明らかになっていくのとともに、一見全く関係がないように思える2組のカップルに少しずつ共通点が見えてきて、最後に思いがけない真実が明かされる……という展開が非常に面白かったです。終盤のどんでん返しは特に、全然思い当たっていなかったのでゾクっとなる。
ただ、個人的にはあまり好きな作風じゃなかったというか、正直いつもの杉井さんの作風のほうが好きだなあ…。
さよならピアノソナタ encore pieces
ナオ達のその後を描く5編を収録した短編集。全4巻で綺麗に完結した印象があったので、蛇足になるんじゃないかなあという心配があったりしたのですが、そんな心配は不要といわんばかりの素晴らしい短編集でした!ナオと真冬だけでなく、他のキャラクターたちにも焦点が当たっていて、それぞれの気持ちが伝わってくるのが素敵。
好きだったのはナオと真冬が抜けたあとのフェケテリコを、千晶に憧れてサポメンになったベーシスト・橘花の視点から描く「翼に名前がないなら」。千晶と神楽坂先輩が「フェケテリコ」にかける想いも熱いのですが、二人に認めてもらおうと奮闘し、正式メンバーになれないことでもがき苦んでいく橘花の姿がとても印象的でした。
離れ離れになったナオと真冬の間で揺れ動くユーリの姿を描いた「ステレオフォニックの恋」も好き。素直になれない二人を結びつけようとするうちに自分自身の気持ちがわからなくなって、自らの演奏を見失ってしまうユーリの姿は見ていてこちらまで胸が苦しくなるようなものがあるんだけど、彼らしい結論にたどり着き、演奏を取り戻す姿には胸が熱くなりました。
それにしても
今、ユーリがかわりに直巳を泣かせる。
そう思うと、手の中でストラトが火照るように感じられる。
がエロいです。半分くらいガチでユーリ×ナオだったとは思わなかtt(強制終了)
でも実際「一人一人じゃなく、一緒に居る二人が好き」っていう感情は確かにあるよね。単体じゃないんだ、二人そろってないとダメなんだ!!…二次元のカップリングで想像しててすいません。
しかし、一番ツボに入ったのはナオと真冬の……の話を聞いた哲郎を描いた「だれも寝てはならぬ」かもしれない。息子の結婚の話を聞かされた哲郎がなんだかんだいって物凄く取り乱している姿が可愛くて仕方が無い。
哲郎かわいいよ哲郎。
神様のメモ帳4
[著]杉井 光 [絵]岸田 メル 四代目からの依頼で、平坂組の手がける音楽イベントの手伝いとして借り出されたナルミ。ところが、イベントを妨害しようとする勢力が現れて、話はどんどんきな臭い方向に。事件の裏には、かつて四代目とともに「平坂組」を作り上げた男・平坂錬次の影が見え隠れする。同じ頃、ナルミは関西弁を使う男と出逢い、友達になるのだが… |
ナルミが、ナルミが有能な子になってるーーーー!?
これまでのナルミは結構、他の有能ニートたちの才能を指くわえて見てるだけで、あとは結構口だよりっぽい印象があったのですが、仲間達からも言われまくっている通り今回は意外な才能を発揮していきます。四代目の主催するイベントの広報担当として如何なくその「口先三寸」という能力とこれまで得た人脈を発揮する姿が輝いてる。しかし、その割りにナルミが将来ニートになる気マンマンなのはどうなんですか(笑)ここに、「NEET探偵事務所」に集う新たなハイスペックハードボイルドニート誕生の瞬間を見た気がする!!!
義兄弟の契りを結んだ四代目と、何も知らずに「友達」として出会った平坂錬次との確執の間に挟まれて苦しみながらも「なんとかしたい」と奮闘するナルミの姿にニヤリとする。これまでの彼なら、こうもアクティブには動き回れなかったでしょう。もちろんこれまでのようにへこたれたり、仕事を投げ出しそうになったりはするんだけど、それでもギリギリの所で踏みとどまり、或いは仲間達から叱咤激励を受けてふたたび立ち上がっていく姿が良かったです。そして、そんなナルミだからこそ、クライマックスの平坂組の面々へのタンカが言葉の表面以上にかっこよく思える。ほんと、ナルミは成長したなあ。
これまでのように「有能でハイスペックなニート達が、(依頼されれば)事件をあっさり解決するよ!!」みたいな部分が薄くなった分、ナルミがもがき、足掻き、それでも挫けずに前に進んでいく姿が印象に残る一冊でした。ナルミかっこいいよナルミ。あと四代目と平坂とその周辺の人間関係が腐った目でしか眺められないよ!!!(だいなし)
ところでイベントのプロモーションを手がけた音楽バンドというのが、さりげなく同作者の某作品を匂わせているのがまた。バンドのメンバーは直接的には登場しませんが、もろにその正体を匂わせる描写の数々にニヤニヤします。
さよならピアノソナタ (電撃文庫)メディアワークス 2007-11 by G-Tools |
…あれ?「女ばかりのバンド」?「大切な人はいなくなってしまった」?
ひょっとしてこのあたりの話は、10月発売の短編集への伏線?
いや、某エロゲーみたいに主人公がネタとして女装してる可能性もすてきれな(強制終了)
キラ☆キラ~Rock'n Rollshow~(通常版)プリンセスソフト 2009-02-26 by G-Tools |
剣の女王と烙印の仔 1
中世風王道ファンタジー。「獣の烙印」を持つクリスと自分の死を予見する能力を持つミネルヴァの二人が、その能力を持つが故に様々な過酷な運命に立ち向かっていくというお話。
新月の度に烙印の力に支配されて自分を見失い、親しい人々を手にかけてしまう為に出来るだけ人々と関わり合いにならないようにと生きてきたクリスが、ミネルヴァや彼女の所属する「銀卵騎士団」の仲間達と出会って少しずつ心を開いていく姿がとてもよかったのですがそれ以上に銀卵騎士団の長・フランチェスカ様がイイ!ちょっと強引で破天荒ながらも騎士団のメンバーを心から思っているような姿が時々顔を覗かせるのがたまりません。終盤で連れて行かれたクリスを助けるかどうかで思い悩む姿が、また素敵でした。あとツンデレ全開の男騎士・ジルベルトさんの活躍(ツンデレ的な意味で)も見逃せません。
クリスやミネルヴァの持つ重い宿命や、血なまぐさい展開は杉井作品の中でもデビュー作である「火目の巫女」に持つ雰囲気に近い。二人が今後どうやってそれぞれの運命を乗り越えていくのか、都築がとても楽しみです。
それにしても最近の杉井光キャラはヘタレだけど妙に美少年率が高いのでいろいろ心ときめきますね。序盤でクリスが傭兵達に喰われそうに(性的な意味で)なったときには本当に何事かと思いました!(どきどきわくわく、的な意味で)
さくらファミリア!3
[著]杉井 光 [絵]ゆでそば エリとレマを救うために禁を犯し、天使たちに連れて行かれたガブリエル。“家族”を救うため、天界へ向かった祐太達だがそこには多くの困難が待ち受けていた。しかも、使徒のひとり・ヨハネが暗躍し始めて天界を揺るがす大混乱に!? |
あれですね……杉井光は私を萌え殺すつもりですか?時代はやっぱり小悪魔系美少年なんですねわかりますわかりました!!正直どの子も大好きです可愛い男の子は正義です。
というわけで天使や神の子や聖人さんの生まれ変わりが関係者からの苦情とか総スルーで大暴れする下ネタ満載ホームコメディ第三弾。1巻、2巻以上に関係者には見せられないというか、文字通り神をも恐れぬラノベと化してきた気がする今日この頃。今回は天界をも巻き込んでの大騒動が繰り広げられます。
っていうかあの神にしてあの子あり。天界総ロリショタ好きというこの現実はどうすればいいのか。小さいまま帰還した天使長・ルシフェル様ことるーしーフィーバーが半端ではありません。その後もさんざんレベル低すぎ・頭悪すぎな騒ぎが繰り返されていくことに頭を抱えつつ大爆笑。今回はかなり重たい話が展開されているのですが、それを繰り広げているキャラクターたちがあまりにも頭悪すぎて全くシリアスな気持ちになれません。キーワードや舞台として登場するのがヤフオクやニコニコ動画っていうのもシリアス度の低下に大きく買っていたかも。もうとにかく天使様達みんなみんな庶民的すぎます…
個人的には、新キャラ関係のグラフィックがカラーページに無かったのが唯一の不満かなあ…永遠の美少年ことヨハネくんやツンデレシスコン天使・ミカエルさまを筆頭にセクハラ無口天使サンダルフォン、セクハラ饒舌天使メタトロンの双子姉妹などなど美味しいキャラが目白押しだったのにカラーページが本編全く関係ない佐倉ファミリーの温泉シーンで埋まってるってどういうことよ!個人的には聖十字発動中のレマさんとか、永遠の美少年のヨハネきゅんとか、そういえばカラーページに出てない気がする最強メイド志麻子さんとかもカラーで見たかったなあ!あとヨハネとかヨハネとかヨハネとか(もういい)
あと、今回のキーワードは「祐太総受け」。
もう今回の一件の解決の過程で、自らの身を全く省みない、素晴らしい祐太総受けっぷりに激しくテンション上がった。祐太かわいいよ祐太。杉井光は早いところ祐太を女装させるべき。
さくらファミリア!2
[著]杉井 光 [絵]ゆでそば 復活祭で神の子の生まれ変わりやら天使やら悪魔やらが騒動を繰り広げている祐太の家に、「三十銀貨財団」からクール宅急便で“精霊”が送りつけられてくる。やたらと卑屈な精霊様だが、彼女の力を接着剤としてエリとレマが合体、“神の子”が復活しそうになってしまう!?必死に阻止しようとする祐太だが、そこに更なる騒動が… |
相変わらず下ネタ満載のツッコミ激しい会話の応酬が繰り広げられ、前巻以上に某教関係者は見ちゃいけませんなノリになってます。特にペトロの生まれ変わりな某教皇が駄目人間過ぎる…「禁書目録」ですら色々ギリギリのところで同団体と完全イコールにならないようにしてるのに、こっちは思いっきり団体名モロ出しなのでとりあえず関係団体のお偉いさんの目に触れないことを祈るばかりです。ていうか十二使途が「実質神の子ファンクラブでした」ってオチには緑茶噴出したわ!!!
ていうか基本的にこの作品については、祐太が活躍してくれていればそれだけでも十分満足なわけですが。杉井光作品定番のヘタレ主人公に「実はキレ者」属性と「異能もち」属性を追加するだけでこんなに自分の好みにジャストヒットするとは思わなかったよ……杉井光は早急に祐太を女装させるべきそしてペトロか神父あたりと濃厚に絡ませるべき。コミカルでテンションの高い会話の応酬や佐倉一家の擬似家族っぷりもかなり好きです。怒涛のLOVE寄せとかもありましたがそのへんはまあ、どうでもい(強制終了)
しかし、ラストのガブリエルさん、良いキャラだなあ。3巻の天界編に期待が高まります。
さくらファミリア!
天使や悪魔や聖人の生まれ変わりな人々が繰り広げる、下ネタ満載のドタバタホームコメディ(?)。「ばけらの!」方向というか、重くない杉井光。…っていうか、コミカル方面に走ると何でこの人はいつも色々とギリギリなんですか?(各方面から苦情が来そう的な意味で)
色々な意味でネジが飛んでる美少女達と割合常識人な主人公のハイテンションな掛け合いが楽しい。また、彼らが借金をしている「三十銀貨財団」がたまにやらかしてくる取り立ての為の嫌がらせがみみっちすぎて笑える。一応主人公の前世である「イスカリオテのユダ」の死因を巡る謎とか「神の子」の生まれ変わりであるレマ・エリの2人組と主人公の前世での関係など、色々本線の物語はあるんだけどそういうのは抜きにして楽しめる。
あと、特筆すべきなのは主人公が異能持ちであることではないでしょうか!他の杉井光作品と同じく「ヘタレ」で「平凡」な「ツッコミ役」といういわゆる“スターシステム”的な主人公なのだけど、彼の中に「イスカリオテのユダの罪痕」という異能が眠っていて…という設定が(杉井作品的に)新しい。一応この作品で杉井光の著作はすべて制覇したことになるはずだけど、男主人公が明確な異能を持ってるのは他になかった気がする(「死図眼のイタカ」はどうだったっけ?)。
やたらと女装させられそうになったり、美少女達(ていうか主にガブリエル先生)からセクハラされそうになったりといろいろな意味で杉井作品にしては萌え度の高い主人公だったのですが、異能力発動シーンで一気にツボにハマりました。二面性ばんざい!!!能力がまた主人公らしからぬ方向なのがまた良い。
しかし、色々ツボにハマった作品だったけど、一番噴きだしたのはラストで明らかになるタイトルに関する叙述トリックだな。なんで主人公の○○が伏せられてるのかと思ったらそんな理由かよ!!!
ばけらの!2
[著]杉井 光 [絵]赤人 「ばけらの!」の2巻でカラーイラストに水着が欲しい!という編集部側の欲望丸出しな提案により、沖縄旅行が企画されることに!ただし、参加できるのは5人まで。たった1つの男子枠を巡ってヒカルはラブコメ作家なインキュパス・エムさんとラーメン対決をするハメに!?料理の師匠的存在であるエムさん相手に、ヒカルはどう立ち向かう—!? |
料理対決編は実質エムさん編?エムさん曰くの「ギョーカイ用語」を普通に翻訳なしで読めるようになってきて、なんだか複雑な気分になりましたが、あのラーメン屋台のラーメン群の解読は無理すぎる。物凄いまじめに解読にいそしんでしまったのは内緒です。
ラーメン対決のために色々頭をひねっているうちに、いつのまにやら「不健康なイヅナに野菜を食べさせる」という方向に目的が摩り替わってしまっているのが微笑ましい。しかしとらドラといいばけらのといい、世間は暴食の秋ですか……現在絶賛「暴食の冬」中の私に対するあてつけですか…!!
沖縄旅行編は表題通り、陰陽師の亜里沙さん編。沖縄で出会った人間外の少女とヒカルが繰り広げる心温まるお話。沖縄旅行にいけなくなった風姫姉さんの代わりに結局ついてくることになったエムさん&男爵ウーノのリア充コンビが出番少ないながら良い味だしてる。ていうか男爵ウーノは良いギャグキャラだ…!!90ページの挿絵のウーノ氏は輝いている!(いろんな意味で)
新キャラ登場の3編目は北海道からやってきた魔性の美少年・鴻池ジンが池袋に住みたいと言い出して、池袋に住むばけもの作家の元締め?らしき事をやっているとある作家さんから試練を受ける…というお話。性別不詳キャラきたよキタヨテンションアガッテキタヨー!!!
ジンの試練を手伝うため暫く彼と一緒に行動することになるヒカル。ところが、何故かイヅナがヘソをまげて……ということでイヅナがヘソを曲げた原因はいろいろとお約束な誤解なんですが、誤解の原因に噴いた。っていうかジンとヒカルの関係ってほぼそのまんまユーリとナオ(ピアノソナタ)だよね?イヅナが誤解する気持ちもわかる……ユーリってば罪作りな子!!!
エピローグはクリスマスを舞台にした、ヒカルとイヅナのほのかに甘い小話。不器用でなかなか素直に想いを口に出せないイヅナと鈍感ヘタレなヒカルのために(?)他のばけもの作家達が全力で二人の恋を応援する(?)姿が微笑ましかったです。イヅナの抱き枕も出たことですし、ラノベ作家ブログ界隈では早くも3巻の話を出してる作家さんもいらしたし、ヒカルとイヅナの愛の行方(笑)や今後もどんな作kk……もといキャラが出てくるかとか、今後の展開がとても楽しみです。
【オマケ:元キャラ推理コーナー】
せっかくフライングで感想書いてるので、諸説出揃わないうちに…やっておこうかと。
● 鴻池ジン
えーと、女の子と見まごう美少年で、一人称「わし」で富士見・電撃以外のレーベルの新人作家さんで
ドジっ子じゃなかったのは残念ですが、その辺はこちらで脳内補完する方向で。
あと、描くならジン×ヒカルで(何が)
●お屋形様(フェレットの人)(…この人、キャラ名出てたっけ?)
「8年ぶりに学園バトルものな新シリーズ」で富士見ファンタジアのベテラン作家で出してるシリーズは巻数30巻超え……というと、この人で確定?いけぬこ会関係のブログでもちょくちょくお名前を見かけるし……あ、問題の「新作」は今月2巻が出ますね。たのしみだー。
さよならピアノソナタ4
[著]杉井 光 [絵]植田 亮 真冬への気持ちにようやく気付いたナオは、彼女の誕生日とクリスマスににプレゼントを贈ろうという計画を立てる。ところが、神楽坂先輩がライヴの予定をぶつけてきたり、色々な所で邪魔が入ってなかなか次の一歩を踏み出せない。結局クリスマスイヴはライヴを行うことになったのだが、真冬の様子に異変が起こって… |
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『金髪の美少年が家におしかけてきたと思ったらいつのまにかベッドを共にしていた』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うが おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
ツンデレヒロインとか健気幼馴染とか恋する革命家だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
というわけでシリーズ最終巻。ユーリ×ナオだとおもっていたら最後の最後でナオが下剋上を達成して下剋上モエとしてはとんでもなくおいしい展k……ごめんなさいすいませんその関節はそっちに曲がらないぃぃぃぃ!
冗談はとにかく、真冬への気持ちに気づいたナオに対しヒロイン3人が次々にナオへの想いをぶつけてくる展開で、最初から最後まで息がつけない盛り上がり。個人的にはやはり神楽坂先輩の言葉に痺れました…ああいう見るからに「強い女性」が弱い所を吐露する場面はたまらないものがある。そして、そんな時でもやはり神楽坂先輩は哀しいくらいに、どうしようもなくかっこいいんだ…。
これまでヘタレてたツケが回ってきたかのように神楽坂先輩と千晶の想いに翻弄されて、すれ違い続ける真冬とナオ。幸せな場面でも少しずつ何か嫌なものが忍び寄ってくるような感覚がして、いやな予感ばかりを募らせていたらそのすれ違いが遂に決定的なモノとなってしまって……真冬のいなくなったフェケテリコが片翼で必死に飛ぼうとする姿には鬼気迫るものを感じました。血を吐くようなライヴの場面が胸に痛い。
登場人物すべてにおいしい魅せ場があった最終巻でしたが、一番好きなキャラクターだった神楽坂先輩の告白シーン以上に印象に残ったのは哲郎がナオを空港に送り届けようとする場面。最初から最後までおちゃらけたダメオヤジだった哲郎が本当に一瞬だけ覗かせた本心に、胸が締め付けられました。たった一言に様々な想いが凝縮されている、非常に重い一言だったなあと。
しかし、せっかくかっこよく送り出したのに、最後の最後でヘタレっぷりを炸裂させてしまったナオはほんと変わってないな?。ここは男らしく、自分から行動してみせろ!とか思わなくもないですが、この上なくこの2人にふさわしいエンディングだったと思います。素敵な物語をありがとうございました!