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異世界転生アンチテーゼ 転生魔王はチート転生者をチートで殺します

 
mmu

「異世界転生者って何でハーレム作りがちなんだろうな?」「そう言う魔王様も、わりとハーレムじゃありませんか?」人間と魔族が対立し、剣と魔法の溢れる“ありがちな”世界・イグラリア。そこでは、元日本人の転生者が魔王として君臨していた。「転生モノ」を好む彼は、側近の魔女・セレスと共に『転生者が転生者を殺す』皮肉な構図を楽しんでいて―。特権階級の三男に転生した剣神、過労死して転生した元社畜、最強を追い求めて転生した魔術王―魔王の許へやって来る「ありふれたチート転生者」の矛盾や身勝手さを、チート魔王が論破し、そして返り討ちにする“異世界転生”ファンタジー。第24回スニーカー大賞編集部大賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)

異世界転生して「魔王」となった日本人の青年。四天王の美少女達に弄られたり、大量の事務仕事に忙殺されたりしている彼の趣味は、自分以外の異世界転生者を探し出し、“狩る”ことで……。

あらすじからもっと軽いノリで異世界転生モノの矛盾にツッコミ入れていく、メタ系のギャグ小説かと思っていたのですが、どちらかというとむしろブラックギャグ系と言うか……!ラストバトルなしでひたすらラストバトル前のラスボスとの対話をやっているようなお話なんだけど、転生して魔王になった主人公が転生者達を自分に向かってくるように仕向け、論破し、チート能力で狩っていく。戦いの描写は一切なくて、それまで語られてきた物語が唐突に終了する。そこに同じ人間への情とかそういうのは一切なくて、ただ愉悦の為に消費されていく姿は滑稽ですらあった。

なんというか、異世界転生という「物語」を駆逐するための「物語」なんだなあと。あまりにもあっけない最期の描写に最初は唖然としたけど、熱いバトルシーンなんか描いたらたとえ最後に負けたとしてもバッドエンドの物語として成立しちゃうもんな。

タイトル通りの「異世界転生」に向けられたカウンターパンチ的な物語が最高に悪趣味で楽しかったです。色んな意味でひとでなしの主人公がどういう経緯でこういう愉悦を得るに至ったかも大変興味あるけど、それはもう舞台装置的な扱いで語られないままのほうが美味しい気もするけどどうかなあ。

まだまだ1巻ではやられてない異世界転生のテンプレはいっぱいあると思うので是非とも続きを出して欲しい。