[著]椎名 誠
とある駅の地下連絡通路を歩いていた"おれ"は突然の轟音を聞いた直後、数人の男女と共に連絡通路の中に閉じ込められてしまった。闇の中、ひたすら救助を待つが何の音も聞こえず、次第に"思念"が朽ち果てた肉体から離脱して…(地下生活者)
"地下"をテーマにした、ちょっとヘンでちょっと恐ろしいSF短編2作を収録。
高校時代に読んで非常に怖かったのですが物凄く印象に残った話であり、「とにかく怖かった」という印象しか無かったので再読。椎名誠といえば当時「岳物語」や「あやしい探検隊」等のエッセイ系しか読んだことが無かったので、この本を読んだときのインパクトは大きかったです。とある駅の地下連絡通路を歩いていた"おれ"は突然の轟音を聞いた直後、数人の男女と共に連絡通路の中に閉じ込められてしまった。闇の中、ひたすら救助を待つが何の音も聞こえず、次第に"思念"が朽ち果てた肉体から離脱して…(地下生活者)
"地下"をテーマにした、ちょっとヘンでちょっと恐ろしいSF短編2作を収録。
どちらの短編も、現実でも簡単に起きてしまいそうな内容で、それが恐怖を誘います。特に地下連絡通路は最初に読んだときは暫く通行できなかったほど。こういう「身近な所に潜む恐怖」という方向性的にはライトノベルに例えると甲田学人の書く作品に似ているのですが、この作品には椎名誠ならではのユーモアセンスのようなものが溢れており、描写がありありと思い浮かぶ割にシリアスになりきれていない部分があります。
雰囲気たっぷりの甲田ホラーと違い、どこか淡々と、それでいて妙にユーモラスに物凄い事が書いてあったりするのが妙に怖いのです。面白いんだけど、同時に怖い。
ラストも全く落ちてないというか、なんだか判らないままに終ってしまうんだけどそれがまた良い。多分他作品でこんな落し方をしたら「ちっとも落ちてないじゃん!」と文句を付けまくるんでしょうけど。しかし本当にどちらの作品も最後はどうとでも受け取れて、結局どうなってたんだろうと真剣に悩んでしまう今日この頃です。
「地下生活者」の後半で"思念"になった主人公達が自分の家族に会いに行こうとする場面が印象的でした。