自らをマスコットと言い張る猫耳つけた(生えてはいない)青年・タマの手によって、強引に『少女戦隊ドリーム5』なるユニットの“ドリームピンク”に変身させられてしまった要。ドリーム5の目的は魔王と戦い、それを倒すこと……らしいのだが、目の前に現れた魔王はなんか普通にいい人っぽい普通の青年みたいだし、前任者だというドリームピンクの少女・美優はこっちに攻撃しかけてくるしでなんかキナ臭いぞ!?
誤:ニチアサ系変身ヒロイン戦隊魔法少女バトル
タイトルと表紙だけ見て↑のようなジャンルを想像して読み始めると盛大に一杯食わされる本作。「ドリーム5」言うて実質2人しかいないわ残りの3人の仲間を探す展開も特になく、そもそもふたりしかいないのにどっちもピンクという出オチぶり。「魔王との戦い」自体がかなり序盤で自称マスコット男によるマッチポンプだったことが発覚するんですけど、もうちょっとこう、その辺をタイトルとかで匂わせることはできなかったんですかね…いや、面白かったんですけどこのラノベ戦国時代を生き抜くには罠の多すぎるタイトルだなって思いました(あらすじで確かにそれとなく不穏な気配は感じるけど)(そもそもかなり前のラノベだけど)。
正:坊主と魔法少女が繰り広げる仏道系調伏バトル
そんなわけで、この物語は僧職の青年・光明と、いきがかりで魔法少女をやることになった少女達が街を脅かす魔障を調伏する仏道系退魔バトルです。何を言っているかわからないとおもうが俺も(略)光明は剃髪前の半人前の坊主なので見た目的な違和感はないですし、それはそれとして正統派な坊主需要にもこたえられる頭ツルピカなライバル美坊主も登場するので安心(?)。いやなんか、良い意味で「魔法少女×仏教異能バトル」として面白かったのでもっとタイトルとか表紙でその辺推していってもよかったのでは…と思ってしまうのですが(2回目)、駄目だったんでしょうかね…。
主人公・要の等身大な少女像が愛おしい
強い力を持っているが自分に自信が持てない光明が、前向きに物事をとらえられる要に渇を入れられつつ成長していく姿がアツかった。弱腰で悲観的な光明に対してヒロイン二人がわりとサバサバしており、しんどい展開でも物語が重たくなりすぎないバランス感覚も嬉しい。お寺の事情など深くはかかわらないまま、ありのままの光明を評価してくれる要の言葉には胸が熱くなりますし、元ドリームピンクこと美優がいつでも自信満々な姿もぐっとくるものがある。要が、ヒロインでありながらヒーローの尻を蹴り飛ばす枠なんですけど、その一方でちゃんとピンチになったら光明に守られるし、魔障の引き起こす事件を目の当たりにして足が竦んだり…と、当たり前の女の子としても描かれるところが個人的にものすごくポイントが高く。ヒーローヒロインものとして、恋愛要素薄目の少女小説としてもとても楽しかったです。