男同士の恋愛が尊ばれる一方で、ほとんどの女は愛のない結婚を強いられたり、産まれた子供を世継ぎとして兄弟に差し出さなければいけない…という「ご都合主義ファンタジー」なBL小説――その小説で、主人公カップルの世継ぎ問題を解決するために存在する妹キャラ・オクタヴィアに転生してしまった腐女子の主人公。世継ぎ問題を丸投げして恋人(男)とイチャイチャする兄王子に辟易していた彼女はある日、売り言葉に買い言葉で「自分にも恋人がいる」と言ってしまって…。
男色が普通の世界観でオクタヴィアだけが別の感性を持っているとかだと物語ももっとシリアスなものになっていたとおもうのですが、男色嗜好が王族を中心とした王都の上級国民層だけに根付いている風潮なんですよね。田舎からシンデレラロマンスを求めてやってきた侍女が男に相手にされなくて夢破れてたり、地方から配属された新兵たちがどんどん「染まっていく」同僚達におびえていたりする。それがなんか絶妙に物語をコミカルにしていて超楽しかったです。まあお金がなかったら、「跡継ぎ用の男」と「世継ぎ用の女」を二人産むとかそんな余裕ないよな。あらゆる意味で「余裕」のあるやつらだけのものになっているのが妙にリアル……。
恋人に一途なのはいいけど嫉妬深く、立場があるのに周囲が見えてなさすぎる兄王子がまた、リアルに「二次元キャラなら萌えるが現実にいたら近寄りたくないタイプ」なんですよね。通例があるとはいえ、妹のオクタヴィアに世継ぎ問題を押し付けて悪びれもしない姿にモヤモヤしてしまう。
自分の護衛騎士を「適当に決めた」「覚えてない」といいきるオクタヴィアの性格なかなかアレ…と思うのですが、その理由が「恋心を抱いた護衛騎士達がこぞって男に走ってトラウマになった」なのでもう一度頭を抱えてしまう。すっかり恋愛に対して干物になってしまった彼女が無自覚にクリフォードの好感度(多分)を稼いでいくのにニヤニヤしちゃう。
個人的に大好きなのは、ドレスを選ぶときになんとなしにクリフォードに意見を聞いたら、侍女たちとは違う視点でオクタヴィアを演出してみせるエピソード。オクタヴィアが持つ黒扇が人々の目に止まっているのを知った上で、彼女だけでなくその扇を「映えさせる」アドバイスをするのがなんというか政治的と言うか、大人の男性目線だなあと。見た目からして武骨なのにドレス選びもダンスのお相手もできちゃう、色々な意味で「ソツのない」彼を見ていると、恋人探しもこの人にしちゃいなよ!!という気持ちになってしまうのですが、クリフォードにはオクタヴィアの知らない「いわく」があるようで。その辺が今後どういう形で明かされていくのか楽しみ。
本来の展開を知っているがゆえに別の道を辿っていくというのは割と物語世界への異世界転生モノあるあるですが、本来の道筋よりを外れて元よりも立場が悪くなっているのが俗にいう「悪役令嬢モノ」と対称的というか。人生経験見た目の倍あるわりに、危機感覚が現代日本人以下というオクタヴィアの行動がまた、ハラハラさせられる。
彼女の存在を隠れ蓑にして兄を葬り去ろうとする謎の勢力とか、兄の態度の変化とか、隠されたオクタヴィア転生時のエピソードとか、護衛騎士クリフォードの秘密など、まだまだ物語は一筋縄ではいかなさそうで…続きがとても楽しみです。(それにしてもなんというところで切れるんだ!!)
ところで、この作品のモブ女子描写を見ているとどうしても「アイツの大本命」を思い出してしまう。佐藤が相思相愛をカミングアウトしたときのモブ女子の反応がめちゃくちゃ好きなんだよな私は…。
ご都合主義ファンタジーBLの「モブ女」に転生してしまった…
推しカプを至近距離で見つめていられる!と思ったがあまりにも現実がハードモードすぎてやさぐれ気味のヒロインとそのほかの女性キャラたちと一部の男性キャラが死んだ魚の目になってるのが正直めちゃくちゃ面白い。女性の人権なさ過ぎて世知辛いんだけど面白い。男色が普通の世界観でオクタヴィアだけが別の感性を持っているとかだと物語ももっとシリアスなものになっていたとおもうのですが、男色嗜好が王族を中心とした王都の上級国民層だけに根付いている風潮なんですよね。田舎からシンデレラロマンスを求めてやってきた侍女が男に相手にされなくて夢破れてたり、地方から配属された新兵たちがどんどん「染まっていく」同僚達におびえていたりする。それがなんか絶妙に物語をコミカルにしていて超楽しかったです。まあお金がなかったら、「跡継ぎ用の男」と「世継ぎ用の女」を二人産むとかそんな余裕ないよな。あらゆる意味で「余裕」のあるやつらだけのものになっているのが妙にリアル……。
恋人に一途なのはいいけど嫉妬深く、立場があるのに周囲が見えてなさすぎる兄王子がまた、リアルに「二次元キャラなら萌えるが現実にいたら近寄りたくないタイプ」なんですよね。通例があるとはいえ、妹のオクタヴィアに世継ぎ問題を押し付けて悪びれもしない姿にモヤモヤしてしまう。
誤解から始まる主従ラブ(※まだ始まってない)
兄や家族を納得させるため、仮初の恋人を探さなければならなくなったオクタヴィアの目に留まったのが、護衛騎士のクリフォード。なぜか長続きしないことに定評がある彼女の護衛騎士の中で、彼は珍しく三か月ものあいだ護衛騎士を続けていた。だからこそ明日にも辞めるかもしれない、恋人探しの間に異動されて身動きを取れなくなるのは困る!と、これまで無関心だった彼に声をかけてみたところ、思わぬ流れから『永遠の』忠誠を誓われてしまう。自分の護衛騎士を「適当に決めた」「覚えてない」といいきるオクタヴィアの性格なかなかアレ…と思うのですが、その理由が「恋心を抱いた護衛騎士達がこぞって男に走ってトラウマになった」なのでもう一度頭を抱えてしまう。すっかり恋愛に対して干物になってしまった彼女が無自覚にクリフォードの好感度(多分)を稼いでいくのにニヤニヤしちゃう。
個人的に大好きなのは、ドレスを選ぶときになんとなしにクリフォードに意見を聞いたら、侍女たちとは違う視点でオクタヴィアを演出してみせるエピソード。オクタヴィアが持つ黒扇が人々の目に止まっているのを知った上で、彼女だけでなくその扇を「映えさせる」アドバイスをするのがなんというか政治的と言うか、大人の男性目線だなあと。見た目からして武骨なのにドレス選びもダンスのお相手もできちゃう、色々な意味で「ソツのない」彼を見ていると、恋人探しもこの人にしちゃいなよ!!という気持ちになってしまうのですが、クリフォードにはオクタヴィアの知らない「いわく」があるようで。その辺が今後どういう形で明かされていくのか楽しみ。
「悪役令嬢」物の逆を行くような展開。続きが気になる
前世では大好きなカップリングだったけど、こんな現実じゃ萌えたくても萌えられない!という、いろいろな意味で世知辛い展開も楽しかったですが、原作通りのオクタヴィアのように「(兄にとって)都合の良い妹」ではいられなかった彼女の兄への態度の違い、前世知識に由来する不可思議な行動などが相まって物語には本来なかったはずの兄妹の対立構造が発生し始めているのが気になるところ。本来の展開を知っているがゆえに別の道を辿っていくというのは割と物語世界への異世界転生モノあるあるですが、本来の道筋よりを外れて元よりも立場が悪くなっているのが俗にいう「悪役令嬢モノ」と対称的というか。人生経験見た目の倍あるわりに、危機感覚が現代日本人以下というオクタヴィアの行動がまた、ハラハラさせられる。
彼女の存在を隠れ蓑にして兄を葬り去ろうとする謎の勢力とか、兄の態度の変化とか、隠されたオクタヴィア転生時のエピソードとか、護衛騎士クリフォードの秘密など、まだまだ物語は一筋縄ではいかなさそうで…続きがとても楽しみです。(それにしてもなんというところで切れるんだ!!)
ところで、この作品のモブ女子描写を見ているとどうしても「アイツの大本命」を思い出してしまう。佐藤が相思相愛をカミングアウトしたときのモブ女子の反応がめちゃくちゃ好きなんだよな私は…。
アイツの大本命 (ビーボーイコミックス)|Amazon
田中鈴木 (著)
リブレ
発行:2008-07-10
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発行:2008-07-10