サキュバスとニート 〜やらないふたり〜 | 今日もだらだら、読書日記。

サキュバスとニート 〜やらないふたり〜

 

ニートの青年と居候サキュバスが織りなす、怠惰で楽しい毎日!
 サキュバス召喚に成功してしまった童貞かつニートの青年・和友。 『淫魔にエロいことをしてほしい』  そんな直球過ぎる願望を抱いていた和友だったが、現れたのは一切いうこと聞かない凶暴でワガママなジャージ女。 スケベなことには興味ナシなこの駄淫魔は、あまつさえ和友の部屋に住みつき、食う寝る遊ぶを享受するだけの居候と化してしまい……? 「俺はどうにかしてお前に俺の『願い』を叶えさせるからな」 「やれるものならやってみれば??」 「それまでの間、お前はここに置いておくだけだ。勘違いするなよ」 「お世話になりま?す」  絶対に淫魔に搾られたい人間、和友。絶対に人間を搾りたくない淫魔、イン子。相反する二人の、奇妙な共同生活は、こうして幕を開けた──

『淫魔にいやらしく搾り殺されたい』という野望を胸に秘めたニートの二十楽和友。何の因果か念願のサキュバス召喚に成功するが、やってきたのはエロい事に興味のないジャージ姿の女・イン子だった。彼女は願いを叶えるのを嫌がった上に帰れないとわかると勝手に母親を懐柔して二十楽家に居候しはじめてしまい……!?

淫魔とニートが繰り広げる、怠惰で愉快な日常

「賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求」の作者が贈る、絶対エロいことしたいニートと絶対にエロいことしたくない淫魔の怠惰で愉快な同居生活を中心に、ちょっと距離感が難しそうな和友の母親、人には言えないような職業(意味深)な元クラスメイトの茉衣、和友の元親友でコンビニ店長の琥大朗……などなど、ちょっと濃い目の人たちを交えて繰り広げられる日常の物語です。

シコルスキ〜と同じタイプの基本1章完結型ギャグ強めのコメディ。タイトル・あらすじからもっと下ネタっぽい話を想像してたんですが、どちらかというとドタバタ疑似家族もの(?)みたいな雰囲気で、下ネタはかなり控えめでした。というか、イン子はもちろんのこと、和友もそっちの知識は最低限しかないもんな。逆に言うとシコルスキのような変態を集めて煮詰めてしまったようなキレッキレさはなくて、個人的にはギャグ小説としてはあちらのほうが好きだったりするのですが、こちらはこちらで前作とはまた違った感じのテンポの良い掛け合いが楽しかった。また、和友とイン子が良い意味で全く恋愛感情を感じさせないベタベタしない関係で、そんな中で相棒とも家族ともいいがたい絆が生まれていくのも良かった。

個人的にははじめてのお使いに出たイン子が謎のババアの手によってとある遊戯に誘われる『パチンコ淫魔』が好き。タイトル通りイン子がとある魔術の禁○目録のパチンコして遊ぶだけの話なんですけど(直球)、いや、ほんと、もうパチンコ屋の騒音の混ざった擬音描写の無駄な臨場感の高さだけでも笑いが止まらないのに、それに加えてイン子の初々しい反応と、とぎれとぎれに聞こえてくる禁○目録のみんなが知ってる名言の数々と、ババアがドヤ顔で煽ってくる流れが面白すぎて……!!!シコルスキ〜での執拗なKADOKAWA弄りといい、この作者さんのメタネタ好きだなあ。この話の続きで、ババアが所属する青年団で行われる草野球にイン子と和友が誘われ、和友の親友・琥大朗のチームと対戦する羽目になる『草野球淫魔』も酷くてよかった。

機能不全の人間関係を修復するハートフルギャグストーリー

最終淫はこれまで物語でずっと匂わされてきた二十楽家のどこかギクシャクとした親子関係、そして和友が引きこもってしまった原因に切り込んでいきます。「いやらしく搾り殺して欲しい」という願いの真意と、イン子が見落としていたもう一つの願い、二十楽家のどこかギクシャクとした親子関係、それの原因となった和友の過去の挫折をイン子が知り、それを乗り越えさせるまでのお話でした。

いや本当にこれまでの話と最終章の温度差が!!現在の自分が母親の重荷になってしまっていると自覚のある和友が極端な行動に出ようとして、イン子や元同級生達の説得によって少しずつ前向きになろうと決意する展開はとてもアツかったんですけど、そんなことより琥大朗の友情、重てえなぁ〜〜!!!!(満面の笑み)となってしまうのはもうどうしようもなかった。いやほんとうに和友の前じゃないところでクソデカ感情を見せてくるの、美味し過ぎるんですが!?高校時代からめちゃくちゃ惚れ込んでる上に本人の願いを叶えさせるために裏で動いて知らないところで支えてるの女房役(野球的な意味でもリアル的な意味でも)がすぎるし、ケツ毛の本数も知りたいって何!?これまでの与太話の積み重ねから突然このクソデカ感情を暴露されるのはズルい。こういうの本当に好きなので……。

良くも悪くもお互いを想い合うが故に機能不全に陥っていた和友とその周囲の関係性が、そんなしがらみもない、開けっぴろげで自由奔放で、和友とは真逆の理由から挫折を経験しそれでもふてぶてしく生きるイン子によってぶち壊されていくクライマックスがとても良かったです。

そして和友が「本当の願い」を叶えて綺麗に終わったと思ったら速攻で向こうの世界から再び強制送還されてくるの、綺麗なラストがぶち壊しすぎて笑った。和友のメンタル上の問題は解決したとはいえまだまだ色々問題も起きるだろうし、イン子側の問題はまだ解決していないわけでまだまだ彼らの愉快な日常が見れそうな雰囲気。続巻は売り上げ次第とのことですが、続きが出るの楽しみにしてます。

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