フリーターとしてなんとなく生きてきた宮坂類。疎遠になっていた幼馴染・彩花の家に遊びに行ったところ、Vtuberをやっている彼女の配信にゲストとして参加する羽目に!?その配信をきっかけに、彩花の所属する企業からスカウトされ……冴えなかった人生が一転、上り調子に!?
幼馴染ラブコメとしては面白かった
良い幼馴染ラブコメだった…!好意むき出しの幼馴染と満更でもない主人公のやりとりが可愛く、彼女との忌憚ないやりとりが視聴者にウケてスターダムをのし上がる……という展開も楽しい。自分に自信がなく、幼馴染からの好意にも気付けない主人公が配信者活動で成功していくことで彼女の気持ちに少しずつ気づいていく展開も良かったし。幼馴染が配信でずっと主人公の話をしていた……という設定からしてデビュー前からセット売りされているようなものだったので炎上もなく、ほとんどの視聴者がセットで推してくれるのも安心して読める。特に男性Vtuberモノというと過剰なまでに「男女関係で炎上」という展開が持ち出されるので、そういうのがないのは凄く新鮮で良かった。ただ、個人的には幼馴染モノというよりも「Vtuberもの」を期待して読んだので配信モノとしての比重の低さ、というか描写の雑さが気になり……幼馴染とはすでに好感度MAXの状態なのであとは主人公がそれに気づくかどうかみたいなところあったので雑に両想いになってもそこまで違和感がないのだけど、配信者としての方向性も定まらないままなんとな〜くイジられキャラで配信やってたら収益化通り越して登録者数10万人突破、だったので流石にご都合展開を感じてしまった。ここせめて「収益化した」くらいで止めておいてくれたらそこまで違和感なかったのかなあ……そこまで爆発的に売れるならもう少し彼の配信にはこんな魅力があるよ!という展開をアピールしてほしかったなあ。なんか本当に彼がどうしてそんなに売れたのか読者の私側からするとよくわからないし、こんなどうでもいい描写で躓いてしまう自分が一周回ってツラい。
ゲーム配信がきっかけだったので実況が面白くてウケるとか、もっと色んなコラボを重ねて他キャラとのトークの上手さで跳ねるとか、なんなら幼馴染とのセット売りが凄くて二次創作男女的にめっちゃバズるとか……なんかとにかくそこまで人気出てるならもう少し実況者としての強さを見せてほしくて、そのへんが曖昧のまま登録者10万人!!幼馴染とも両想いで人生バラ色!!って終盤戦が都合良すぎて困惑してしまった。昔の新人賞作品にありがちな1巻に無理やり全要素まとめたみたいな駆け足感だったんだけど、これ原作Web小説なんだよなあ……。
個人的に男子V主役の配信もので「炎上」と無縁でしかも男女セット売りするVtuberものってマジで初めて見た(近いものは幾つか思いつくけど、どちらも炎上と完全に無縁ではない)ので配信ものとして過剰に期待してしまったところはある……炎上ものも好きだけど、男子V主体の平和な配信ものに飢えていたところはある、本当にラブコメとしては面白かったと思うので出会いが悪かったとしか……。
あと個人的に、初手で配信切り忘れ事故を起こしていたせいで終盤でコラボ配信終わった後に幼馴染と両想いになってイチャイチャお泊り……の展開中ずっと「今度は配信切り忘れてないよね!?(そこで切り忘れたら大炎上だぞ!!!!)」って思ってしまってイチャイチャ描写が全く頭に入ってこなかったので、配信切り忘れ必要だったか!?って思ってしまった。いや、主人公に早めに「素」を出させるために必要だったんだろうけど、別に切り忘れじゃなくても同じ展開はできたと思うんです……ラブコメとしては面白かったのに、最後の最後で「配信モノ」という要素に足を引っ張られて楽しみきれなかったのほんとツラい。切り忘れ、複数でタイトルに入ってるの見るし流行ってたんですかね……。
主人公が過剰に自信ない理由とか、配信でどう売れてるのかとかは続き読めばわかるのかなあ……その辺こそ無理してでも1巻に入れ込んでほしかったんだけど、そのへんの必要な要素が1冊に入れきれないのはマジでWeb小説の書籍化の難しいところですよね……。