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ネクラ少女は黒魔法で恋をする4

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

高校受験を目の前に控えた空口夏樹は、彼氏と上手くいかずに悩んでいた。それなのに姉の真帆ときたら、残しておいた冷蔵庫のプリンは勝手に食べるし、挙句人の枕元でブツブツと黒魔法の呪文を唱え始めるし…。思わず夏樹は一方的に姉を無視することにしてしまうのだが…
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「ネクラ少女?」シリーズ、4作目は各キャラクターに焦点を当てた短編集。空口姉妹の仲違い、大河内&雛浦が暴漢を退治するため奔走する話、湊山先輩のちょっぴり甘酸っぱい勘違い話(笑)と、演劇部の夏合宿の話の4本を収録。

真帆のネクラ成分は順調に薄くなり気味で、それが少女の成長を描く青春ラブコメとしてひとつの魅力ではあるんだけど、それが逆にこのシリーズ最大の個性であろう「ネクラ少女」という部分を徐々に殺しつつあるのが難しいところだなあ。なんていうか、ただの青春ラブコメになってしまって、安定した面白さはあるんだけどラブコメが元々あんまり好きじゃない身としてはいまいちピンとこない作品になりつつある…。

それでも各キャラクターの個性が立っているので、それぞれの短編は非常に面白かったです。一見仲悪そうに見えるんだけどお互いがお互いを気にせずには居られない空口姉妹の関係にニヤニヤしつつ、雛浦さんのまるでマンガみたいな(…小説だけど)家庭環境と、そんな彼女を引きずり回す大河内との凸凹コンビっぷりが微笑ましくなったりとかなり楽しめました。湊山先輩は……その……ご愁傷様、です。

ただ、真帆の毒気が抜けつつある現状では、演劇部の夏合宿を描く「空口真帆と仲間たちの夏」は正直微妙だった。一之瀬先輩との仲も進展するかと思いきや一之瀬は気絶しっぱなしで肩透かし食らわされたカンジだし……ここは一つ一之瀬先輩と色々なぶっちゃけ話をするみたいな嬉し恥ずかしイベントを挿入すべきだったよ!というか、一之瀬先輩の影が薄すぎて、「本当にコイツとくっつくの???」ってカンジが否めない。今のままだとこの二人の関係は真帆の空回りにしか見えなくて、次で余程上手い事やってくれないと、くっついても「え、なんで?」って思っちゃいそうだ。

そもそも、1巻以外での一之瀬先輩の存在が物凄く空気なので、何故真帆がそこまで一之瀬に固執するのかが見えてこないのが致命的です。キャラも他の演劇部の面々が上手い事キャラを立てているのに対し、あんまりキャラが立っていないように見える。読んでいるほうとしては、真帆も神門とくっついてしまえば?という気持ちにならなくもなく……

神門は2巻で登場した時には結構好きなキャラだったんだけど、本当に一之瀬と真帆をくっつける予定になっているのなら、神門は2巻のみのゲストキャラにしておいて3巻以降は真帆と一之瀬の恋愛模様に話を絞って欲しかったかなあ。

さてさて、物語は次で最終巻ということですが、殆ど全く進展が見られない一之瀬先輩との関係や3巻で意味ありげに出てきた割に4巻では存在ごとスルーされた生徒会長、真帆の傍に潜んでいるらしい黒幕悪魔……などなど、大量にあるような気がする伏線をどうやって回収してくれるのでしょうか。大きく物語が動くであろう最終巻に期待。

個人的にはラスボスっぽい雰囲気を纏った生徒会長の活躍がとても楽しみ(あれ?)


ネクラ少女は黒魔法で恋をする3

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

なぜか“アスガルドの特派員”として働く事になってしまった空口真帆は永音先生の部屋の掃除をさせられて悪態を付きながらも、それなりに充実した日々を送っていた。そんな彼女のクラスにやってきた転校生がやってくる。日常的に、とにかく不幸な目に遭いまくりながらも微笑を崩さない彼女を「強い」と感じる真帆だったが、実は彼女には悪魔が憑いていて…!?
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1巻の頃の「内弁慶毒舌少女」という特徴は薄れつつあるんだけど、その分オーソドックスに面白いお話になってきた感じ。それでも真帆のブラック極まりないユーモアは満載で、そんな彼女の姿を見るたびにニヤニヤさせられます。思わず黒魔法的な事を口走ってしまったり、演劇部で歌を歌わされればうっかり“ドナドナ”を歌って周囲をドン引きさせてしまったり……。「屠るぞ」はちょっと名言だと思ったw

個人的にはストーリー本線とは全く離れてしまうのですが、クラスメイトの大河内に対して徐々に遠慮が無くなっていく真帆の姿が実に素敵です。1巻の時点ではただの脇役だった大河内さんですが、ちょっとバカで小さなことは速攻忘れるという彼女の人格は内面真っ黒な真帆が遠慮なく黒い部分をさらけ出せる、良い友人になるのではないかと。

今回はとにかく不幸の星に生まれ、悪魔に取り憑かれてしまった転校生・宮脇の悪魔を祓う為、またもや真帆が奮闘します。本来その仕事を請け負うはずの永音先生はちっとも役に立たないし、悪魔に対抗するため神門と連れ立って行動しなきゃいけなくてまた誤解を生むし、それなのに他の人には事情を話せないし…でヤキモキする真帆の姿が微笑ましいです。しかし、神門との仲は地味に進展してるのに肝心の先輩との仲はちっとも進まないというのは読んでる方としてもヤキモキしますね。あと2冊でどう決着をつけるつもりなんだろう?まさかこのまま神門ルートなんてことは…(悶々)

一之瀬先輩といえば、遂に前回からちょくちょく影をちら付かせていた演劇部の敵こと生徒会長が遂に登場しました。これがまた典型的な悪役と言うカンジで……普段おっとりした一之瀬先輩が怒りを露にする姿がまた新鮮で。今後彼がどんな風に物語に絡んでくるのか実に楽しみだったりします。腐女子的にも二人の対決に期待!!(いえ、別に801萌え的な展開を期待しているわけではないですよ!?)

様々な紆余曲折はあったものの、最後には宮脇さんが目の前の不幸の中から小さな幸せをみつけて、「ラッキー」と言えるようになったことが一番嬉しかったです。読み終わって暖かい気持ちになれた1冊でした。続きも楽しみ。


ネクラ少女は黒魔法で恋をする2

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

2年生になった「ネクラ少女」空口真帆は、なけなしの勇気を振り絞ってなぜか気になる先輩が居る演劇部に入部した。ところが、演劇部は顧問の先生と部員の不足から、廃部の危機に立たされていた。自分にも出来ることはないかと“黒魔法”での人集めを思い立った真帆だが、公園で黒魔法を使うところを他人に見られてしまって!?
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予想以上にヘビーな方向で来ました。あっさり記憶を取り戻してしまったのは正直意外だったのですが、これがまた痛い展開で…

自分の中には既にある筈の記憶を誰とも共有出来ない。真帆にとっては死に物狂いで築いた筈の人間関係が、あっさりと瓦解しているというのは本当につらかっただろうと思います。先輩との関係を再び1からやり直す事をとるか、既に自分のことを好いてくれている相手で妥協するか、思わずゆれてしまう真帆の気持ちも痛いほど理解できる気がする。

個人的には悪魔に頼らず、今度こそ自分の力だけで再び関係を築いていく真帆の姿を見たかったので、記憶が戻ってしまったのはちょっと意外というか拍子抜けな部分もあったのですが、それ以上に強くなった真帆が自分と同じ間違い・同じ過ちを繰り返そうとする神門の間違いを正そうと奔走する姿が素敵だった。1巻からの成長が如実に見て取れるところが好印象。まあ、なんだかんだいって中身はネクラな毒舌少女のままなんですけど(笑)

ただ、個人的には真帆の心が「みんなの記憶を取り戻そう!」じゃなくて早く「ここはひとつ、イチから関係を作り直そう」って方向に行ってほしいかな、と思ってみたり。前者の方向に気持ちが流れるのが微妙だなあと思ったので再び関係を築く方向に話が動く事に期待をしてたんですけどね。いや、そちらの方に気持ちが傾くのは当たり前だし、それでこそネクラ少女であるとも言えるんですが。

そして最初「うぜえ!!」とばかり思っていた永音先生が最後の最後で…!!実はいい人ってパターンかよ!!と地味に噴きました。永音先生かっこいいよ永音先生。


ネクラ少女は黒魔法で恋をする

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

空口真帆は自分に自信がもてない、内気でネクラな少女。『黒魔法』というあだ名の通り、黒魔法を趣味として内心周囲の人々に毒づく日々を送っていたがある日本当に悪魔召喚に成功してしまう。「なんでも望みを叶えてやる」と言う悪魔に、クラスメイトを見返してやろうと「美少女にしてください」と願う真帆は、代償として“恋をすること”を禁じられるけど…
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内気……というよりは根暗で脳内だけ毒舌な少女が黒魔法で美少女に変身(?)し、少しずつ人間関係を築いていくというラブコメ。

最初の方の、周囲に壁を作って勝手に被害妄想を繰り広げ、自分の努力を棚に上げて毒づくばかりの真帆の姿は、ヒロインとしては新しいというか面白いと思う反面、それ以上に「痛々しい」と思えてしまったんだけど、最初があまりにも痛いだけに、そんな彼女が悪魔との契約を経て“変身”したのをきっかけに自ら変わっていこうとする姿はかなり好印象でした。

物語の本筋自体はありがちと言うかかなりベタベタで、悪魔契約の当たりで結構後半のオチ付近までなんとなく内容が予想できるようなものではあるのだけど、それ以上に真帆のキャラクターと、そんな彼女が変わっていく姿が印象的で、面白かったです。特に影で自分の悪口を言っている(…と真帆が信じ込んでいる)少女から“空口さん、可愛くなったね”と褒められて、内心こっそりデレてしまう描写とかもう、最高。

というか、ここまで酷くはないにせよ自分にも結構こういう一面(被害妄想、内心で毒吐きまくり)があるので、真帆が毒付くシーンにしても被害妄想にかられるシーンにしても「いてえなオイw」と思う反面で、「あるあるww」と共感できてしまったのが運のツキでした。恋なんてしない、と悪魔の条件を呑んだのに目の前に素敵な先輩が現れて…どんどん変化していく主人公の姿が印象的。前半の内向的な姿とはうってかわった積極的な姿に、人はこんなに変わる事ができるんだとなんだか胸が暖かくなりました。主人公をとりまく周囲の人々も良い人たちばかりで和まされました。

個人的に1つだけ気になったのは、大河内さんの扱いくらいか。かませ犬状態なんだから、もうちょっとないがしろにされたことを怒ってもいいと思う…というか、もう少し物語の本線に絡ませても良かったような。あと、本文の印象だと「外見はゴツくて可愛くないけど性格のよさで人を惹きつける子」というイメージだったのに、イラストは思いっきりちっさい美少女だったのが違和感感じましたね。イラストはそれ以外の部分は大成功だと思うんですけど。個人的にもえれっとさん好きだし。

ラストは賛否両論あるみたいだけど、個人的には悪魔との契約の力ではなく自力で変わっていく「ネクラ少女」の姿が見たいので、続編があると判って大喜び。近いうちに続きも読んでしまいたいです。


彩雲国物語 白虹は天をめざす

[著]雪乃 紗衣 [絵]由羅 カイリ

「花」を返上して藍州へ帰ってしまった楸瑛を取り戻すため、迷いを抱えたまま十三姫と共に藍州へ向かった劉輝。秀麗は監察御史として、劉輝を連れ戻すため蘇芳と燕青を連れて藍州に向かう。しかし藍州では縹家が、王不在の王都では劉輝を良く思わない貴族派が暗躍し始め…
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様々な思惑が交錯する藍州編。自分自身が影月好きだった所為もあるけど、茶州編が盛り上がっただけにここからどう繋げていくのかちょっとハラハラしていたんのですが、劉輝を取り巻く状況や秀麗の官吏としての欠点が見えてきたことで茶州編以前とは違った方向で俄然面白くなってきた気がします。茶州編以前ではなんとなく「劉輝が王様として再起したから全て良い方向に向かっている」ような印象があったんだけど、それは大きな思違いで、彼の陣営は予想を遥かに越えて不利な立場にたたされていたのですね。

そんな状況で、一抹の不安を抱えたまま逃げ出すように藍州へ向かう劉輝ですが、今回はそんな彼が王として大きな成長を遂げます。王都から離れる事によって現在の自分の状況を再把握し、悩んで悩んで悩みまくって出した「王として生きる」という結論。今まではどうにもこうにも「愛に生きる人」というか、文字通り秀麗バカのイメージが強かったんだけど、周囲に頼る事をやめ、また親しい者達以外にも目を向ける「良い王」になろうと改めて再起した劉輝。これは秀麗じゃなくてもうっかりグラっと来ますよね…全く本人は意図してないんだろうけど押して駄目なら引いてみろ作戦大成功!!なんじゃないですか!(笑)

そして今回外しては語れないのが影で意外な活躍を見せる蘇芳。秀麗の周りに居る男性の中では抜群に頼りなくて、どちらかというと庶民派な彼の意外な能力が明らかに。というか、劉輝に対する感想があまりにも庶民派な蘇芳すぎて笑えました。今まで片意地張っていた秀麗を自然体にし、精神面からのフォローを入れて居たのが彼だっただけに今回の別離は残念でしょうがないのですが、家族水入らずの姿を見るとこれはこれでよかったのかなあと思ったり。というか、このシリーズにおいて庶民派という存在がどれだけ貴重か考えるともう…!!

それにしても最近、皇殻やセーガと秀麗のやりとりがかなり楽しみになってきた自分が居ます。秀麗が今まで見ようとしなかった面を片っ端から見せつける皇殻は嫌味な人に見えて絶対悪い人じゃないと思うし、清雅と秀麗の今後のライバル関係も楽しみ。何より、彼らによって見えてきた「貴族派」と国試組、彩七家との関係はかなり興味深くて、今後どうなっていくかに期待。

秀麗の体の変化、貴族派や縹家の暗躍、そして吏部の情勢など今後も目を離せなさそうなこのシリーズ。次は久しぶりに黎深様の活躍が見られるのかなと個人的にわくわくしてますが、この状況じゃあ兄バカ姪バカの黎深様は見られないんだろう事がちょっと残念です。


「2007年上半期ライトノベルサイト杯」投票します

■ 「2007年上半期ライトノベルサイト杯」を開催します(平和の温故知新さん)
↑詳しいルールや投票の仕方等はこちらから↑

というわけで、今年も参加です!忘れそうだから連休中に片付けておこうかと(笑)
タイトルクリックで当サイト内の感想ページに、書影クリックでBK1の該当ページに飛びます。
また、基本的にオススメ度の高い順に並んでいます。
(つまり、上半期で一番オススメのシリーズは単発は「連射王」、シリーズは「殺×愛」という事ですね)

シリーズ部門はあっさり決まったけど単発部門の「連射王」「ヴァーテックテイルズ」以外が
どれも微妙なラインで並びすぎてまじめに困りました…
余程2作品で終了しようかとも思ったのですが、最終的にはこんなかんじに。

シリーズ部門は、ほんと迷いなかったな自分。

単発部門

【07上期ラノベ投票/単発/4840237344】
連射王(上・下)(川上 稔著/メディアワークス/2007.1)

どんなことにも本気になれないと悩む少年・高村コウが、シューティングをワンコインクリアしている青年に出会い、自分も“ファーストプレイ・ワンコインクリア”を目指す物語。題材的に異色に思えますが熱?い「青春小説」。テンポ良く畳み掛ける文体が更に熱さを煽ります。コウと岩田の恋愛模様にも要注目!


【07上期ラノベ投票/単発/4829163828】
麗しのシャーロットに捧ぐ ヴァーテックテイルズ
  (尾関 修一〔著〕/富士見書房/2007.1)


ある人形作家の屋敷で、シャーロットというメイドの少女を中心に巡り繰り広げられるゴシックホラー小説。3つのストーリーが時系列バラバラに展開され、大きなミスリードも仕掛けられており最後まで全く先が読めないミステリーでした。絵柄の雰囲気的な問題で挿絵画家の人選間違えてる気がしたけど。


【07上期ラノベ投票/単発/4840237182】
なつき☆フルスイング! ケツバット女、笑う夏希。
  (樹戸 英斗〔著〕/メディアワークス/2007.2)


故障の為野球部を休部中の少年・智紀と破天荒で強引でヘンテコなケツバット女・夏希が人に取り憑いた夢魔を払っていく物語。夏希のキャラクター性やゲストキャラクター達の一生懸命な生き様もよかったのですが、それだけに3章で明かされる夏希の過去話は衝撃的でした。


【07上期ラノベ投票/単発/4894255383】
ゴッデス! 1.女神さまって大変なの♪
  (ひかわ 玲子著/ホビージャパン/2007.4)


突然飛ばされた異世界で“女神さま”をやることになってしまった少女二人のお話。そこ世界は神々の力をお互いが奪い合うという弱肉強食の世界で?!?と、予想以上にシビアな物語でした。騙し合い・裏切りもしょっちゅうで先が見えません。そして凶悪な次巻への巻引き…続編はいつ出るんだー!

【07上期ラノベ投票/単発/4757733283】
声で魅せてよベイビー(木本 雅彦著/エンターブレイン/2007.2)

昔ながらのマイコンオタク少年とイマドキで声優志望な腐女子のラブコメ。同じ“オタク”でありながら考え方が全く違う二人が感化しあっていく様子が凄く良かったです。続編が読んでみたいシリーズのひとつ。ただ、やっぱしヒロインの腐女子設定はいらないと思うわけですが。

シリーズ部門

【07上期ラノベ投票/複数/4829119330】
殺×愛?きるらぶ?(風見 周著/富士見書房/2007.6)

遂に完結。5巻目くらいから目に見えて面白くなってきました。遂に迎えた“卒業式”での出来事、そして大どんでん返しとしか言いようが無い最終巻のエピローグは涙無しには読めません。ヒソカと咲夜だけじゃなく、この物語全ての登場人物にエールを送りたくなるような、最高のエンディングでした。前半の巻で止まってる人も、この機会に是非読んで欲しいです。


【07上期ラノベ投票/複数/482911911X】
フルメタル・パニック!(賀東 招二著/富士見書房/2007.3)

「つづく?」「燃える?」と劣勢気味だったミスリルのメンバーが集結、大反撃をはじめる最新刊。破壊されたARX-7の後継機も登場し、宗介とかなめも…な、熱すぎる展開。…なんてのは置いといて、宗介×かなめ萌えとしてはラストのバカップル全開なやりとりだけでもう100票位投じたい勢い。

「何人死んだって???何百、何万、何億人死んだって構わないから。だから、あたしを迎えに来なさい!あんたの持てるすべて??そのクソの役にも立たない、非常識で迷惑極まりない兵隊の技能を総動員して、どんなにヤバい相手でもギッタギタにやっつけて、あたしを抱きしめに来なさい!!」

は今年一番の名言だと思います。

【07上期ラノベ投票/複数/4840238820】
レジンキャストミルク(藤原 祐〔著〕/メディアワークス/2007.6)

今までラノサイ杯の候補に毎回挙げておきながらどうにもあと1押したりなくて、次点落ちの常連シリーズと化していたこのシリーズですが、今回は殊子先輩ひとりの為に全力で1票投じます。7巻での殊子・蜜姉妹のやり取りがどうしようもなくツボでした。ちなみに次点は6巻佐伯ネア先生のボンテージ白衣w

【07上期ラノベ投票/複数/4840238499】
扉の外(土橋 真二郎〔著〕/メディアワークス/2007.5)

閉塞感溢れる宇宙船の中に閉じ込められ、何者かに生与剥奪件を握られた高校二年生の生徒達が、提示されたゲームに挑まされる物語。1巻を読んだときは、アイデアはとにかく主人公に全く感情移入できず、ラストも駄目だったんですけど2巻で一気にツボな作品に化けました。進むごとに度を増していく人間同士の裏切り・騙しあいも秀逸で、続きが楽しみなシリーズです。

【07上期ラノベ投票/複数/4829119187】
黄昏色の詠使い(細音 啓著/富士見書房/2007.5)

5色の媒介を元に自らの心を形にする「名詠式」を学ぶ学校を舞台に、母の志を継ぎ5色どれにも属さない色“夜色名詠”の確立を目指す少年・ネイトの物語。綺麗で優しい気分にさせてくれるシリーズです。特に名詠式の詠唱呪文が凄く綺麗で、何度も読み返したくなるような魅力です。

以下次点作品

【単発部門】
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん …主人公がいーちゃんすぎて押し切れなかった。嘘だけど。
ミミズクと夜の王 …いや、ライトノベルサイト杯じゃなかったら入れたと思うよ?
遭えば編するヤツら …ISBNがないので投票不能っぽい?

【シリーズ部門】
キスとDO-JIN! …是非執事票を投じたかったです。
Fate/Zero …ISBNないから対照作品外だよなあ。イスカンダルとヴェイパーに一票投じたかった。
学園キノ …大変惜しい事にギリギリ7月発売でした。


彩雲国物語 青嵐にゆれる月草

[著]雪乃 紗衣 [絵]由羅 カイリ

御史台で働き始めたものの、意地悪な同僚・陸清雅に事あるごとに嫌味を言われ、日々自宅で食材相手に鬱憤を晴らす毎日。そんな秀麗と清雅の元に後宮に上がる予定の藍家の姫・十三姫の身代わりとなって暗殺計画の背後関係を探れという大きな仕事が飛び込む。複雑な思いをよそに、再び後宮に上がった秀麗だが…?
 

あとがきでもコメントされている通り、まさに“セーガインパクト”な回。今まで乙女ゲームそこのけのもてっぷりを発揮していた秀麗を兎に角ボロクソに言うライバル・清雅が良い味出しすぎです。(といっても、今巻でフラグ立てまくってる気がしなくもないのですが…)

今まで「初めての女性官吏」としての秀麗の凄さばかりが強調されてきた彩雲国ですが、「紅梅は夜に香る」で冗官に落とされたことで過剰なまでに誇大化された秀麗のスーパー女性像が取り払われ、久しぶりに等身大の少女としての秀麗がクローズアップされた印象。今までどれだけ彼女が虚勢を張って生きてきたのか実感しました。

現在の自分では清雅にどうやったって敵わないことを認めた上で、今自分が出来るだけの事をやっていこうとする姿勢がかっこいいです。敵わないとはいえ今まで秀麗の周囲に居た人々よりは全然身近なライバルである清雅と一般人代表(笑)のタンタン達との話が中心になったのが凄く良かったんじゃないかと思います。ぶっちゃけ乙女ゲーの世界から秀麗の成長物語になった感じで、個人的には以前より好印象かも。今までのキャラクターがなりを潜めてしまったのはちょっと寂しいですが…(特に黎深様

一方、十三姫の問題と共にクローズアップされてきた藍家の問題。楸瑛の苦悩や黎深の意味深な行動を見ていると、今後藍家や紅家とも事を構えるような展開になるのかも。不謹慎ですが今後そんな展開になるのなら結構楽しみです。

しかし、個人的に今回のツボヒット大賞は仙洞省の司令になったリオウ君。うーさまとのコンビを想像するともう微笑ましすぎて笑いがこみ上げてきます。子供なのに濃い大人達に振り回されるリオウ君が哀れ。次巻では是非うーさまとのやりとりを見てみたいですw


これがマのつく第一歩!

[著]喬林 知 [絵]松本 テマリ

出航直前に起こったテロのお陰で、ヴォルフラムやギュンター達と離れ離れになってしまったユーリ。貨物船でシマロンの若き王・サラレギー、大シマロンからの使者・コンラッド、そしてヨザックという微妙なメンツで神族の住まう国、聖砂国を目指すことになるが…。一方、いつまでたっても戻ってこないユーリを心配した村田は、とある人物とつなぎを取ることに…!?
 

完全に次作への「つなぎ」の一冊。後半にグレタメインの番外編が入るため、本編はたった100P程度しかありません。簡単に読めるけど、物凄くコメントしづらい一冊だ…。

電撃文庫の400Pだの500Pだのの本に慣れていると、「原稿が300P越えたから分冊!!」という思考が全く理解できません。多分ビーンズが活字の苦手な学生をターゲットに絞っているとかそういう関係も多少はあるんだろうけど…そこで敢えて「300Pがなんだ!」といいたい。内容的には、分冊なぞせずに1冊にしてまとめて読みたかった。外伝を含めても400P。電撃なら全然余裕のページ数なのに!!!

ていうかもう1000ページ越えなければ全然許容範囲内だよ!?
(それどこの終わりのク●ニクル)

せいぜい見所といえば、村田という日本側で立ち回るキャラクターを得たお陰で、「お嬢様とは?」「息子はマのつく?」に出てきたキャラクターが少しずつ出張ってきていることでしょうか。外伝を読むのを後回しにするならこの本の前に読んでおくのがオススメ。

というかもう、日本側で渋谷兄に、魔族側でヴォルフラムに、そして外伝でグレタに萌えれればもうそれでいいとおもうよ!個人的には予想以上に弟バカだった渋谷勝利兄がお気に入り。村田やボブとの掛け合いがなんとも可愛い。ヴォルフラムは聖砂国に行く為の救助隊を指揮することになり、ますます漢前が上がりました……救助に行く為、ギュンターの“秘術”で魔力を封じてまで……………


………………

ってこれなんてホモゲ!!??

どちらかというとノリはどこぞの「これが私の御主●様」っぽかったですが…なんというか、シリアスだらけのストーリーに一服の清涼剤をありがとう。いやー、ギュンターはやっぱりこうでなくっちゃね☆

むしろ本編よりも見所はグレタがメインで活躍する「マ王陛下の優雅な一日」でしょう。眞魔国王宮を舞台に、久しぶりにほのぼのとしたドタバタ劇が見られます。うわぁぁぁぁぁ、グレタ可愛いよグレタ(*´д`)


声で魅せてよベイビー

[著]木本 雅彦 [絵]ヤス

尊敬するハッカー仲間のおっちゃんが同人誌即売会でOSについての本を出すというのでオタクの波をかきわけ、ボーイズラブのブースまで買いにいった広野は、そこで“腐女子”で“声優の卵”の姫野沙奈歌と出会う。孤高なハッカーを自称する広野はひょんなことから彼女とつきあっているというエチュードを演じる羽目になり、しかし同時に沙奈歌に惹かれていって…!?
 

イマドキのオタクである腐女子少女と良くも悪くも古きよき時代のオタクであるハッカー少年がお互いの夢や好きな事をやりながらも互いに惹かれていく物語。

なんとなく仲間が欲しくて声優の卵をやってる沙奈歌と、小さい頃からハックやプログラミングが好きで頑張ってる広野の、お互いのスタンスの違いが同じオタクとしてなかなか面白かったです。目的を共有する為に誰かとつるむこともあるけど、最終的には一人で戦う事を是とする広野のような“男のオタク”と、確かにオタクでは有るんだけど根底には仲間と自分の好きな物を共有したくてオタク活動をし、馴れ合い…というか仲間意識の強い“女のオタク”の在り方の違いが上手く表現されていて、オタク小説としても中々興味深く読めます。

性別だけで図れるものではないですが、結構この辺って性別的精神的な違いだと思います。確かに、自分の夢に向かって突き進んでいる女のオタクも多いとは思うけど、同時に仲間がほしくて真面目に漫画が描きたいわけでもないのに漫研に入ったり、某専門学校や声優養成学校に行っちゃう腐女子オタクは多いと思うんですよね…自分も似たような経緯で大学の漫研に入ったりしてましたが(笑)

とはいってもこのストーリーのキモはそんな自意識の違う二人が惹かれあっていく、ラブコメ要素。すれ違う場面ではどちらの気持ちもわからなくなくてハラハラしたり、素直になれない二人にヤキモキしたり…とストーリーに物凄い引き込まれます。同じオタクであっても考え方は180度違う二人が、お互いに良い影響を及ぼしあって惹かれていく過程が凄くツボです。

ただこの小説、広野側の行動や二人の心理描写は物凄く上手いのですが、沙奈歌の「腐女子」という設定を全く生かせてない。ぶっちゃけ一人の腐女子として沙奈歌の行動には熱くツッコミたい部分が多々あります。

特に出会いの場面。
広野に直接「受」か「攻」か聞いてどうする!!
腐女子っていうものは相手に了解取らずに
広野とオッサンとの関係を邪推するのが常道ってものなんだろう!!!

従って本当の腐女子なら最初のセリフは

「レイさんとはどういうご関係ですか」

だ!!

作者さんは“イマドキの女オタク”の行動原理については知っていても“腐女子”については近頃のひん曲がった報道で得た程度の知識しか無かっただろうことが微妙に伺えて、個人的にはそこだけは不満。正直沙奈歌はBL好きなんて設定ない方が良かったと思うんだけどなあ…沙奈歌の語る未知の世界に翻弄される広野の姿を想像していたので、非常に裏切られた気分です。つか「女オタク=BL好き」と勘違いされているならそれは大きな間違いですよ!

逆に広野の言動は物凄くそのテのオタクっぽい。
返事を「Y」「N」で返しちゃうあたりなんか、本当にそういうオタクが居そうだ。

評判が良ければ続編もでるみたいだし、こういう切り口のオタク系ラブコメは中々ないと思うので是非続編を読みたいです。出来ればその際はもうちょっと作者さんに腐女子の生態を勉強していただくか、BL好きという設定自体を無かったことにして戴きたいのですが。


エアリアルシティ

オンライン書店ビーケーワン:エアリアルシティエアリアルシティ


[著]川上 稔 [絵]中北 晃二
メディアワークス(2001.12)

「都市シリーズ」第二作。
文字によって記述され、天使や悪魔が住まう“架空都市”倫敦。本来ならば人間の踏み込むことの出来ないその都市に現れた3人の人間が侵入し、その事件は始まった…。

えーと実はわたくし、読み終わったあとでもいまだにこの世界の設定をイマイチ把握しておりません。何の説明も無くその世界の特殊用語が連発で出てくるので、「???」のまま物語が進みます。こちらのサイトにて世界観について詳しく解説されていますが結局本文を読んだままでは意味がわかりませんでした。

世界設定を理解できれば物凄く「独創的な世界観を描いた、面白い小説」として評価出来るんですが…個人的に世界設定を公式以外の部分の助けを借りなければ理解できないってのはどうかと。続編となる「香港」やTENKY通販限定の「創雅都市S.F」を読むとそれなりに理解できるそうですが、実際続編ってその前の話が面白いとおもわなければ読まないとおもうんですけど。実際私も「終わりのクロニクル」は1の上巻で一度挫折しているので…。
やはり世界観解説はちゃんと「エアリアルシティ」の中で完結させるべきだとおもいます。

キャラクター・ストーリー設定は普通に良いです。
対照的に見えて実は“似たもの同士”な主人公達の関係とかは非常に良いです。クラウゼルとモイラの関係とか特にオススメ。猫娘と警部のでこぼこコンビがまたいい(笑)

ただ、キャラクターや引き込まれるストーリーは文句なしなのですが、やはり世界観設定についてが納得いかないので評価低めで。作者買いだったからそのまま続編読むけど表紙に惹かれたとかそういう理由で単独買いだったらここで読むのやめてる危険性高いしなー…。