割の良いバイトと聞いて不妊治療のラボにやってきた六車騎一は先日亡くなったばかりの憧れの劇作家・朝来野寛が生前に作った受精卵の処遇で遺族とモメている場面に遭遇する。父を嫌い、遺伝子を処分してくれという朝来野の息子・尚の発言を聞いてその受精卵の『代理父』になると名乗り出るが……というお話。
まさかの男子の妊娠ネタ……一応SF設定とはいえそういうジャンルもあるのか、世界は広いな……などと思っていたらいい具合にオチがついてた。ふきだした。むしろ開始10Pで結哉の家の冷蔵庫の中身に食ってた炒飯を噴射しそうになった。(お察しください)
凄い判り易いツンデレ受な尚が自由奔放な騎一にほだされていく姿にはニヤニヤしましたが、巻末に同時収録されていた短編「本音と妄想は恋のせい 完全版」の威力が酷かった。すっかりバカップルになった結哉と和久井が二人の出会いのきっかけになった『アンケート』をもう一度やり直してみる……というお話なんだけど、和久井さんが頭に何か沸きすぎで酷い(褒めてる)。もう「結哉のひざっこぞう可愛いイヤッホオオオオオ!」とか脳内で叫んでた頃の彼が可愛く思えてくるくらいに酷い。結哉も相当なアレだとおもうけど、和久井さんはたが外しすぎです。
まさかエロシーンでこんなに腹かかえて笑うことになるとは思わなかったよね!!!
キーワード:雅 (40 件 / 4 ページ)
嘘と誤解は恋のせい
隣のサラリーマン・和久井に密かに片想いしている大学生の結哉。想うだけで十分……と思っていたら自宅に入り浸っている先輩の騎一が「授業でアンケートを取ってる事にして隣とお近づきになれ」と言い出す。アドバイスの通り、先輩お手製のアンケートを持って隣の家に行くことになったが……というお話。
騎一先輩の作ったアンケートの内容が突拍子なさすぎて、さらに引っ込み思案を通り越して残念の域に突入してる結哉の挙動不審具合と、そのキョドりっぷりにほだされていく和久井さんの姿ににやにやしてたら、後半はむしろ和久井さんの頭のほうが残念だった。何かにつけて脳内で結哉にキュンキュンしてたりエロ妄想してたりでお前の頭が残念。
脳内でひたすら残念な妄想ばかりを繰り広げる和久井さん(終盤に至っては完全にヤりたくて仕方ない状態)に対して一度酒の勢いで餌やった後は自前のネガティブ妄想を発揮して全力で逃げ回る結哉の、両思い後のすれ違いっぷりに笑いが止まらない。アホだなあこの人たち!!(※超褒めてる)
メインの2人よりも、なかなか進展しない2人の間を引っ掻き回して強引に波風を立てていく騎一先輩の確信犯具合が一番美味しかったかも。続編もあるそうなので、こちらもそのうち読んでみたいですw
紅の勾玉 姫君の幼馴染は陰陽師
[著]大槻 はぢめ [絵]ひだかなみ 帝の姫君・桜子の幼馴染は稀代の陰陽師・阿倍清明の孫である光彰とそのライバルであった芦屋道満の孫の泰雅だった。幼馴染の二人に護られて平和な毎日を送る彼女の最大の悩みは、結婚適齢期を過ぎた16歳になっても恋文の一つも来ない事。「このままでは行き遅れてしまう!!」と気色ばむ桜子の元に、遂に一通の恋文が…!? |
正体の見えない相手との逢瀬を重ねながら少しずつ桜子が自分の恋心に気付いていく心の様子が丁寧に描かれていて、あまずっぱくて可愛かった。“憧れ”と“恋”という一見似ているようで全く違う感情の違いを少しずつ自覚していくのは定番ですがやはり甘酸っぱくて良いですね。読んでいる方からすると結構早い段階で彼女が本当に好きな相手がわかってしまうので、自らの恋心に戸惑い、相手の様子に一喜一憂する桜子の姿はかなりニヤニヤもの。
そしてこのお話で一番ツボに入ったのは本番シーンでの光彰。
ぶっきらぼうな熱血ツンツンだと思っていたら、本番入ったら桜子の可愛さにキュンキュン止まらないよなデレデレ言動と歯の浮くような愛の言葉を囁きまくりで、今までお前どれだけ溜め込んでいたのかというか、「正直お前が一番可愛いわコンチクショウ!!!」と叫んでいました。エロシーンはあってもなくてもどうでもいいくらいの薄さでしたが、エロがないと光彰がデレないと考えると実にこの本はエロがあってしかるべきだなあとしみじみ思ったり。
ただ、手紙が来た辺りで「ああ、手紙の主は実は○○…と主人公が思い込んでいたら実は△△で、××の正体は□□で最後◎◎なんじゃね?」って思った内容そのまんまだった…ってくらい展開が読みやすいので、出来ればもう少し捻ってほしかったかも。特に、恋文の相手や桜子を狙っている相手の正体を謎解きっぽい感じで後半まで秘めているので、それが序盤からミエミエだとちょっとむなしいものが…
あと、なんとなく「陰陽師はなんか悪霊っぽいの退治する人」「平安時代は16歳になったら行き遅れ」「とりあえず3晩夜這いされたら結婚完了☆」くらいの平安知識で書いちゃったんだろうなーっていうのが透けて見えるのは、平安要素を楽しみにしてた身としては少し残念。「陰陽師の末裔の男の子達と、現代にはびこる悪霊たちに狙われるヒロイン」みたいな設定の現代学園異能にしちゃったほうがすっきりした気がします。
…どうせエロレーベルなんだから、闇の魔物にヒロインが襲われるところはもうちょっと……イヤナンデモナイ。
今月のまとめと読了記録[2009年6月分]
5月に読んだ本は22冊でした。
普通のラノベ3倍分の容量のアレがあったにもかかわらず、普段の平均からすると割合多め。それでも先月から引き続き、とても読み残しの多い月でした……「アクセルワールド2」はいつか時間を見つけて読みたい所存です。
2009年6月のページアクセストップ4
サクラダリセット (⇒感想) | バカとテストと召喚獣6 (⇒感想) | これはゾンビですか?1 はい、魔装少女です (⇒感想) | GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン2(上) (⇒感想) |
乙一絶賛で話題を呼んだスニーカーの新作「サクラダリセット」が大人気。椎名優さんの挿絵がぴったりの、透き通るような透明感を持った青春モノでした。これは普通にオススメ。
そしてまたうちのブログの中で「バカとテストと召喚獣」の時代が来ている……!?
正確には本の感想ではないので除外したのですが実は4位くらいにドラマCDの感想記事がありました。アニメ化効果で盛り上がってきたのかな?7月はFBオンラインの方でバカテスアニメの最新情報が出るらしいし、8月は短編集発売で、まだまだ暫く盛り上がってそうですね。文月学園オンラインも楽しみ。
先月から引き続きゾンビ大人気。なんだかんだいって2巻読んでないんだよな…
「境界線上のホライゾン2上」は一週間がかりでなんとか読みきりました。正直エベレスト山にでも登っている気分だったよ……今月発売の2下のほうが分厚いんですけどねorz
2009年6月に読んで面白かった本
猫耳父さん (⇒感想) | SH@PPLE-しゃっぷる- 6 (⇒感想) | 運命のタロット13 《女教皇》は未来を示す (⇒感想) | NO CALL NO LIFE (⇒感想) |
とりあえず今月色々とインパクト強かったのが「猫耳父さん」!!少年の女装挿絵すらためらう傾向があるライトノベル界で、ここまでガッツリと猫耳親父を描ききった作家さんと編集さんを絶賛したい(元々、連載雑誌が非ライトノベル誌だったから、というのはありそうですが…)話自体も家族モノで普通に良かったよ!
「SH@PPLE-しゃっぷる- 6」は私が密かに大好きな胡蝶の宮のターンすぎて困った。6巻ラストに載ってたマンガ版のキャラデザも凄い可愛かったのでそちらにも期待したいです。…ところで、ドラマCDは買うべきなのでしょうか…個人的には釘宮理恵使うなら蜜じゃなくて雪国・舞姫の二役にしていただいて思う存分少年声を聴きたかったような気がしなくもないよ!
現在絶賛強化中の「運命のタロット」。真の方の「悪魔」も面白かったけどやはり最高に燃えたのは第一部最終巻である「女教皇」かな。これから真シリーズもクライマックスに入っていくので、どんな展開になるかとても楽しみ。
そして今更ながら、発売日に買って以降ずっと積んでた「NO CALL NO LIFE」がツボ直撃だった!何故もっと早くに崩さなかったんだ私……!!今月文庫版も発売されるようなので、未読の人は読んでみるとよいのではないかと思います。退廃的で殺伐とした青春が素敵だよ!!
2009年6月の読了記録
なんか物凄く少女漫画強化月間だった気がする。
というか「NGライフ」「キラメキ☆銀河街商店街」という私の中の2大胸キュン少女漫画が完結してしまって、もう私来月からどうしたらいいの!!という気分です。敬大かっこよかったよ敬大。
あと、今月はラノベ系の画集が多くて死ぬかと思いました。山本ヤマトさんと深遊さんの画集を買ったよ!時期が被ってなければヤスさんのとらドラ画集もちょっとほしかったなあ……
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この世をば(上)
ついったーで話題にしてるうちに自分で読みたくなったので再読。藤原道長が数奇な運命から時流を掴み、栄華を極めていくというお話。
藤原摂関政治の頂点を極めた人で「この世をばわが世とぞ思ふ望月の?」の歌で知られる人ということで、イメージ的には権謀の人というか結構ずる賢いっぽいイメージが自分の中であったのですが、この作品に登場する主人公の道長は「ああ、何たること、何たること…」が口癖でどこかおっとりした三男坊。感情豊かですぐに顔に出てしまったり、長兄・道隆の息子である伊周に出世で追い抜かれそうになってヤキモキしたり、調子に乗って気の利いた発言をしたつもりが大失敗で後から青くなったり……ととても人間味溢れる性格。というか、今読み直すとものすごいヘタレですよね。
政治の場でもヘタレですが、二人の妻である倫子・明子の間で右往左往する姿はまさしく正しくヘタレ。正妻である倫子が身ごもっている間にうっかり詮子の元に身を寄せていた明子と関係を持ってしまい、倫子にも詮子にも申し訳ない、と頭を抱える姿が本当に微笑ましいです。
しかし、終盤で長兄・次兄が次々に命を落とすあたりの急展開っぷりはなかなか凄かった。特に道隆の死に際のエピソードは、それまでに散々優雅でカリスマ溢れるすがたを見せ付けられてきているだけにインパクトが強かった。
上巻の物語は、まさしく道長が天下を掴むことになる直前までの物語。下巻では遂にライバルであった甥の藤原伊周を追い落として栄華を築く事になるのですが…こちらも近いうちに再読したいところです。
彩雲国物語 黒蝶は檻にとらわれる
[著]雪乃 紗衣 [絵]由羅 カイリ 吏部尚書・紅黎深が解任され、吏部侍郎・李絳攸の処分を決める御史大獄が開かれた。官吏潰しと異名を取る清雅と渡り合い、辛くも御史大獄を乗り切った秀麗だが、今度は黎深の解任を不服とする紅家の官吏が一斉に出仕を拒否、王都の経済にも圧力をかけられてしまう。秀麗は犬猿の仲の清雅と共に、事件の対応に追われるが…!? |
そこでその選択はないだろう!!しかも敵の手の中で思いっきり踊っちゃってるよ!!!序盤はもうちょっと、「ヘタレだけどやれば出来る男」だった筈なのに最近のヘタレっぷりはほんとどうなの!!!
というわけで、一気に物語が急展開。黎深の解任をきっかけに紅姓官吏達が出仕拒否と経済制裁を起こし、それを解決するために清雅と秀麗が奔走していたら事件の裏に思わぬ人物の存在が明らかになる、というお話。
今回は本当に御史台側の動きが面白かった。清雅と秀麗の背中合わせなライバル関係も良い感じだし、散々罵倒されながらもすっかり秀麗になつかれちゃってる葵皇毅との関係や、秀麗の破天荒ぶりに振り回されてだんだん雰囲気の変わってきてしまった御史台の様子がとても美味しい。特に清雅の鬼畜エロ台詞や燕青&清雅のやりとりにはニヤニヤしっぱなしですよ。デレ分が限りなく低いツンデレ……というかサドデレ?なセーガ最高です。ああもう、恋愛感情かどうかはとにかく明らかにそれなりに好意持ってるのに、どこまでもデレそうでデレない絶妙なデレ度の低さがたまりません。
秀麗と清雅、葵皇毅を中心とする御史台での人間関係がどんどん面白くなって、今までになかったタイプの人間達の中で少しずつ自分なりに成果を出していく秀麗や朝廷から離れて事件の為に奔走する邵可パパの活躍が目覚ましい分、劉輝・絳攸・楸瑛を中心にした王様近辺の動きがもどかしくてたまらない。(※清蘭は私の中ではもうギャグキャラ扱いなので、今後も元気にお嬢様の悪口言う奴にイガグリとか投げててください(オイコラ))実際、とりまき二人はとにかく(ひでえ)劉輝については王様として少しずつ成長している部分もそれなりに見てとれるんだけど、周囲の活躍でそれが霞まくってるのとそれ以上にダメなところが悪目立っちゃっててなんだかなあ……。まあ実際、あまりにも相手が悪いというのはあるんですけど。
追い詰められた劉輝は遂に彼の中でも「禁じ手」とされていたとある手段に出てしまうのですが……彼の中で「人間の劉輝」としての様々なモノを犠牲にしての選択も敵の手の内で動かされているというのがまた。しかも、秀麗が漸く周囲の官吏に「気に食わない女性官吏」としてでなく「手ごわい御史台の官吏」として認められ始めたところでそれをやってしまったことで、もろに敵の思うとおりの展開になってしまいそう。秀麗の身体には一種のタイムリミットが発生し、劉輝の知らないところでは内乱・クーデターフラグまで立ちつつあるわけですが本当にこの物語、どこに着地するつもりなんだろう?間違いなく「そして二人はいつまでも幸せに暮らしました」という展開にならない事だけは確かな予感。
序盤で語られた後の世の評価によれば、秀麗が後の世にまで伝わる功績を残すのはこの後になる筈なので、このまま大人しく後宮入りするような展開にはならないんだろうけど、劉輝と秀麗の二人にとって少しでも幸せな結末になるといいなあ…。次はよもやのタンタン再登場フラグっぽい気がするのでそっちの意味でも期待。
吉永さん家のガーゴイル10
[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二 戦争に行った喜一郎は某島で行方不明になってしまう。東宮雅臣の元に身を寄せたイヨは雅臣の研究の、そして双葉は身寄りのない子供たちの世話を手伝いながら戦火を逃れていたが、次第に戦争は激しくなっていった。そんな中で雅臣はとある決意をする。一方、現代では死んだはずの高原喜一郎が「錬金術師を滅ぼすため」御色町に現れて…!? |
ガーゴイルが倒れる直前に残した言葉や「記憶を封印した」という結果からして、なんとなく悲劇的な結末が待っているんだろうなあ…とある程度の予想はしていたのですが、それでも実際目の当たりにすると、とても哀しかった。しかし、それでもその思い出をかけがえのない、大切な思い出として和巳に語ることができる双葉は本当に強い女の子だと思う。ほんと、今回の双葉はオトコマエでかっこいい女の子だなあ……。そしてあんな結末にはなってしまったけど、最後の最後で双葉の元にかけつけてきたガーゴイルが物凄くかっこよかったです。いつもの、あの決め台詞をこんなにも待ち望んだ事はありませんでした。
一方、物語は全体の2/3を終えたところで少しずつ最終決戦に向けての伏線が張られてきた模様。今までの錬金術に加えて「魔法」「古科学」などという力の存在が明らかになったり、とある人が「あの敵」の再来を予感させるような発言をしたり…と少しずつこの物語に対する「敵」の姿が見えてきた感じ。あと5冊で終わってしまうのは寂しいですがこれからこの伏線がどのように膨らんでいくかも楽しみです。
吉永さん家のガーゴイル4
[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二 “夢”として過去を疑似体験できる「記憶発掘装置」を使い、3日も眠り込んでしまったイヨ。そろそろ起きなければ死んでしまうかも…と東宮に言われてガーゴイルと双葉と和巳は同じ装置を使って彼女を内側から起こすため、彼女の意識に潜り込む。昭和2年の過去にたどりついた3人は東宮やイヨにそっくりな人物と、完成前のガーゴイルと出会うのだが… |
ガーゴイル誕生秘話ももちろん面白いんだけどそれ以上に自らの家業と錬金術の間で板挟みになる雅臣の奮闘がとても魅力的で、惹きこまれました。家の都合で自らのやりたいことを貫き通すことが出来ず、さまざまな想いを抱えながらも二人と離別する雅臣の姿がかっこよかったです。琴子とイヨの間で苦悩したり、自らが何もできないことを悔やんだり……とヘタレな部分も多いのですが、3人のなかで一番人間らしい魅力を詰め込んだキャラクターだったかなあと。東宮の家がイヨにとっての「ライバル」になった由縁にもニヤリとせざるをえませんでした。そしてイヨが年を取らず20代当時の姿を保ち続ける理由に、普段能天気彼女の笑顔の裏に秘められた重い過去を感じて思わずジーンとしてしまいました。
戦前の日本で考え方をはじめとして様々な部分の違いに驚く吉永家の二人も良かったですが、今までよりもコミカル要素が薄く感じてしまったのはやはり双葉の破天荒な活躍の影が薄かったからかなあ。どうにもならない時代の違いを問答無用で蹴っ飛ばそうとする双葉のパワフルな姿は健在なのですが、それ以上に前回のお話で受けたショックからまだ立ち直りきれていない姿が印象深かったです。今回はどちらかというと彼女よりもお兄ちゃんの和巳の方が目立ってた気が。
ところで、作中に登場する「先生」の正体って宮沢賢治のことでいいんでしょうか?
彩雲国物語 黎明に琥珀はきらめく
[著]雪乃 紗衣 [絵]由羅 カイリ 秀麗達が藍州に出向いている間に吏部の調査を進めていた清雅は、絳攸を投獄してしまう。師と慕う絳攸を救うため、調査と御史台で開かれる御史大獄での弁護を申し出る秀麗だが、上司である葵皇殻は意味深な言葉を彼女に突きつける。更に、縹家の策略が絳攸を襲い… |
楸瑛に続き、絳攸に苦難が降りかかる「紅」家編。黎深・絳攸親子の親離れが描かれます。
今回も、面白かったけどとにかく重いなあ……。劉輝が真の意味で楸瑛・絳攸の二人を手に入れるためには絶対に避けては通れない道だったというのは理解できるのですが、メインである筈の劉輝と秀麗の恋路については話が進むほど先行きが暗くなっていくのはどういうことだろう。二人が頑張れば頑張るほど、二人の距離が決定的に離れていってしまうのが見ていて辛い。
姪バカ担当の黎深さま、癒し担当のうーさままでシリアスでなんだか重苦しいキャラになっちゃって、私どこで息抜きをしたら良いのか……唯一、近頃秀麗に構ってもらえなくて本性全開モードな静蘭がこの作品唯一のギャグキャラとして頑張っておりますが。親友に弟に、挙句の果てには楸瑛や絳攸にまで先を越されてすっかりふてくされ気味で暗黒面全開の元王子様に、様々な意味で笑いが隠せません。特に、「再就職」を果たした楸瑛との手のひらを返したようなやりとりには爆笑しました。「劉輝のため」とかっこいいところを見せた楸瑛の立場全くなし。貴族派はまず先にこの元王子様を追い落としたほうが良いと思うんだ。次代をしょって立つ彩雲国ギャグの星・静蘭に栄光あれ。君が居ないと重苦しい雰囲気がどんどん加速してしまうよ!!
今回は黎深の捻くれまくった親子愛にもじーんとしましたが、やはり最後の、絳攸の夢に登場する二匹の文鳥に関する小噺が良かった。ある意味ベタだけど、彼らが未だに絳攸の原点というか、支えになってくれているという事実に胸が熱くなりました。
しかし黎深様は本当にツンデレだなあ……絳攸の名前をつける際のやりとりとか、彼の姓が「李」である意味・理由とか、そもそも絳攸を拾おうと思った理由とか。不器用すぎる愛情が、とても愛しい。そして次回からはどーんと出番が減りそうな予感なのがとても悲しいです。
ラストで遂に明かされた、秀麗が劉輝からの結婚を拒み続ける理由。もうなんていうか、その理由を踏まえると劉輝は自分で自分の首をキュっと絞めちゃってるんですけど。まだまだ重苦しい展開が続きそうだけど、そろそろ序盤のようなご都合主義全開なスッキリ円満解決的展開が懐かしくなってきたなあ…。
ネクラ少女は黒魔法で恋をする5
[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと ネクラだった自分を克服し、演劇部にもクラスにも自らの居場所を少しずつ作っていた真帆。ところが、憧れの先輩・一之瀬とは犬猿の仲と言う生徒会長に黒魔法少女である事を指摘され、彼の『死んだ人を生き返らせる』という願いに協力するよう持ちかけられる。それを拒否したところ、翌日から心なしか周囲とギクシャクしはじめて… |
とにかく疑心暗疑に陥りながらも必死に自分の思考に負けないように頑張る真帆の姿が印象的。一度こういうのに陥ると自分から立ち直る事ってなかなか難しいし、1巻の頃の“ネクラ少女”の姿から考えると信じられないほど精神的成長を果たした真帆の姿をみて、こちらまでとっても暖かい気持ちになりました。「ネクラ少女」としての彼女の姿が見られなくなったのは残念だったけど、その不満を打ち消して余りあるほどの成長振りに嬉しくなりながら、エピローグで●●の記憶が無い事を一之瀬先輩に確認しちゃうチャッカリした姿に思わずにんまりしてしまったり。
でも何より、そんな彼女を時には厳しく、時には暖かく迎え入れてくれる演劇部の面々や、裏表なく元気いっぱいに受け止めてくれる大河内、普段は情けないけどやる時はやる永音先生、ツンデレだけど実は姉想いな妹の夏樹、そして今回遂に正体を明らかにしたオジ様・伊丹氏などの周囲の暖かさが胸にしみます。とにかく最初から最後まで、仲間や友人の暖かさを教えてくれる素敵なシリーズでした。本当に真帆は良い仲間を持ったなあ…。
個人的には一つだけ、やはりシリーズ通して神門との三角関係が全く描けてないのが残念だったけども。4巻では一之瀬先輩が空気だっていったけど、5巻は一之瀬と真帆が接近した所為で神門が完全に空気に……やはり神門は2巻でのゲストキャラ止まりにしておくべきだったと思うんですよ。おそらく神門が出張ってくる3?4巻をすっとばして1、2、5巻を読むだけでも十分物語としては成立してしまう気がして、まるで3・4巻だけまるで別シリーズを挟み込んだかのように浮き上がっているように感じるんだよなあ。単純に誤解させるだけじゃなくて、神門が“恋敵”として一之瀬先輩につっかかっていくような展開があるだけでもここまでの違和感は生じなかったと思うので、そういう描写が全く無かったのは本当に残念でした。
でも無理に二人をくっつけず、彼氏彼女以前の関係のまま含みを持たせたエピローグには大満足。
面白い物語を本当にありがとうございました。