[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二 “夢”として過去を疑似体験できる「記憶発掘装置」を使い、3日も眠り込んでしまったイヨ。そろそろ起きなければ死んでしまうかも…と東宮に言われてガーゴイルと双葉と和巳は同じ装置を使って彼女を内側から起こすため、彼女の意識に潜り込む。昭和2年の過去にたどりついた3人は東宮やイヨにそっくりな人物と、完成前のガーゴイルと出会うのだが… |
ガーゴイル誕生秘話ももちろん面白いんだけどそれ以上に自らの家業と錬金術の間で板挟みになる雅臣の奮闘がとても魅力的で、惹きこまれました。家の都合で自らのやりたいことを貫き通すことが出来ず、さまざまな想いを抱えながらも二人と離別する雅臣の姿がかっこよかったです。琴子とイヨの間で苦悩したり、自らが何もできないことを悔やんだり……とヘタレな部分も多いのですが、3人のなかで一番人間らしい魅力を詰め込んだキャラクターだったかなあと。東宮の家がイヨにとっての「ライバル」になった由縁にもニヤリとせざるをえませんでした。そしてイヨが年を取らず20代当時の姿を保ち続ける理由に、普段能天気彼女の笑顔の裏に秘められた重い過去を感じて思わずジーンとしてしまいました。
戦前の日本で考え方をはじめとして様々な部分の違いに驚く吉永家の二人も良かったですが、今までよりもコミカル要素が薄く感じてしまったのはやはり双葉の破天荒な活躍の影が薄かったからかなあ。どうにもならない時代の違いを問答無用で蹴っ飛ばそうとする双葉のパワフルな姿は健在なのですが、それ以上に前回のお話で受けたショックからまだ立ち直りきれていない姿が印象深かったです。今回はどちらかというと彼女よりもお兄ちゃんの和巳の方が目立ってた気が。
ところで、作中に登場する「先生」の正体って宮沢賢治のことでいいんでしょうか?