これはエロい&救いがない。ティアラ文庫は長らくご無沙汰だったのですが、結構頑なにこういう展開の話はやらないようにしてるイメージがあったので、びっくり。
義理の兄によってどんどん淫らな身体にされちゃう妹のお話なのですが、くもの糸が絡み付くように少しずつ着実に逃げ場を奪われていく様子が凄い。肉体関係を持つ前から優しい言葉の中に少しずつ混ぜ込まれた毒のような言葉で少しずつ兄にとって都合のいい女に変えられて行く。あらすじには「執着愛」と書かれているけど、こんな歪んだ想いを“愛”とは呼びたくないなあ。義兄の歪んだ執着と異常な独占欲に、肉欲で囚われてしまう主人公・雪子の姿が痛ましい。
まともな人付き合いも出来ない彼女が唯一恋焦がれたのが兄とは正反対の純朴な好青年・貞吉。まあこれ間違いなくこっちとゴールインなんて展開はないですよねって思ってたけど予想以上に酷い展開でした。
愛のないエロとバッドエンドに耐性無い人には絶対駄目だろうけど、逆にそういうのが好きならかなり楽しめるお話だとおもいます。雪子がどうしようもなく堕ちて行く様子が丁寧に、良い意味で「悪趣味」に描かれているし、個人的には雪子が無理に兄の章一郎に靡くような展開じゃないのもポイント高い。あくまで章一郎は歪みきった征服欲・雪子は肉欲の為にお互いを求めていてそこに愛は生まれない。この手のヤツはなんだかわかんないうちに途中から相思相愛になるパターン多いよね……
ところで岩田が男色家だと分かった瞬間に岩田×章一郎(リバ可)を思い浮かべたのは私だけじゃないはず。
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STEINS;GATE‐シュタインズゲート‐ 円環連鎖のウロボロス(2)
「跳べよぉおおおおおおおっっ!」タイムリープ・マシンと化した“電話レンジ(仮)”を使い、岡部倫太郎は「世界」に戦いを挑む。―椎名まゆりに降りかかる悲劇を回避するため。―その先に待つ、残酷な真実を乗り越えるために。想定科学ADV『STEINS;GATE』の知られざる世界線が描かれる、もうひとつの真実がここに。 (「BOOK」データベースより)
「シュタインズゲート」のノベライズ完結編。原作と細部の流れは違うけど、これもまた紛れもなく同じ『シュタインズゲート』へ至る物語。
かなり細部に渡って展開が変わってきているので、原作と同じ展開を辿っていてもまた新たな気持ちで楽しむ事が出来ました。初めてタイムリープしてどうしても8月13日を抜け出せないときの閉塞感は原作とおりに凄いんだけど、最後にまゆりと「彼女」を天秤にかけなければいけなくなった時のオカリンの葛藤は原作以上だった。散々二人ともを救おうとして失敗したオカリンが、血を吐くような気持ちで彼女にあの一言を伝えた場面では思わず涙が零れました。
フェイリス・ルカ子の話が大幅に削られた分、原作では徹底して蚊帳の外だったまゆりとダルにピントが向いているのも面白かったです。ていうか原作よりも「スーパーハカー」ダルの天才性が強調されていて、天才タイプの2人に囲まれて自らの凡人さを自覚していて時折無力感に囚われる岡部という構図が凄く好みだった。そして二人の天才に対して岡部自身は本当に「努力」の人なんですよね。様々な可能性世界での「彼」が様々な世界で途方も無い努力を重ねたことで見出した“シュタインズゲート”という可能性。そこに至るまでの軌跡を想像するだけでもやばい。オカリンがゲーム序盤で見た謎の「夢」の正体は別の可能性での自分自身の記憶だったんだろうなあ。あとバレル・タイターまじかっこいい(ネタバレ)
そして原作でも有数のトラウマシーンであろうアレ(ヒント: 幼 女 怖 い )は原作以上にヒドいことになってたなあ!!(一応褒めてる)挿入された挿絵の威力半端ない。同世界線で「オカリンとクリスちゃんをくっつけるために」「がんばってる」まゆりの姿が描かれますが、よりによって綯のあのシーンで一緒に描かれるせいでホラー3倍増し。ぶっちゃけ、「あの」まゆりはタイムリープを繰り返した結果“狂ってしまった”まゆりなんじゃないかなあ……などと思ったりしました。問題はあの彼女が本当に“あの世界線上だけの存在”なのかってことなんだが。バレル・タイターがまゆりに関する警告をしたのは別の世界線での話って考えると他の世界線でもかなりの確立で“ああ”なってる可能性は……(以上ネタバレ)
900P近いページ数を一気に読ませる、ジェットコースターのような展開に感動。個人的には原作プレイしてから読むのを推奨したいですが、このノベライズ単独でも十分楽しめるお話になっているので「原作はやってないけどやろうかどうか悩んでる」みたいな人が読むのもアリなんじゃないでしょうか。

でも皆原作もやるといいよ!!
かなり展開違うのでノベライズやったあとにプレイしても楽しめるよ!!
バッカーノ!1933〈下〉THE SLASH チノアメハ、ハレ
上巻からの続き。
面白かった!クレアとシャーネはいつのまにこんなにラブラブバカップルになったんですかシャーネにぞっこんらぶなクレアも可愛いけど、シャーネの反応が可愛すぎて困る。
そしてクレアとシャーネも可愛いんだけどクレアとフィーロの幼なじみっぷりがとてもやばい!!!ほんとにちょっとだけのニアミスなんだけど、この2言3言から伝わってくる気軽さっぷりがまじぱねえ。クレアが「名前を貰った」というフェリックスの一件も気になるところです。そしてラストのチックとマリアのやりとりが可愛いなああああ!!
1933年の事件はこれで終わりだけど、最後に新しい物語のはじまるを思わせるようなヒキでわくわく。1931で出てきたあのひとの再登場もありそうだし、続きが楽しみです。
がるぐる! Dancing Beast Night(下)
さてはて、厄介な事になったものだヨ。島を襲う連続爆破事件に、島を仕切る組織の重役達が次々と殺されるこの状況デ、島に戻ってきた二匹の犬に、再び不気味な動きを見せる小鼠達と、翻弄されるうちの猫。東と西の関係も爆発寸前というこの状況、一体どうなんだろうネ?島は終わりに向かっているのか、それとも―。…何、別に大したことじゃあないサ。例えこの島が燃え尽きようが粉みじんに砕けようが、住人が全て死のうが、大した事じゃあなイ。それが、この島というものだろウ?殺人鬼と少女がお互いの顔すら見ずに踊っていル―今は島の行く末よりも、このダンスの結末を楽しむとしよウ。そうだろ?諸君。 (「BOOK」データベースより)
一応シリーズ一区切り?なシリーズ4巻。これまでのシリーズ3冊で出てきたキャラクターたちが一同に会してのオールスター感が凄い。本来表に出ないはずの「都市伝説」やらなにやらまで登場して、全員が全員薄くならずに動いてるのが凄いなあ。
上巻ラストで再登場した犬二人・狗木&戌井の一触即発具合やべえ。戌井が後ろむいたらすかさず撃とうとするのにイーリー狙われたら躊躇う狗木さんにニヤニヤが止まらないのですが、二人が争い出したら他の所で本気でバトってるのにすかわず横槍入れに来る葛原さんマジかっこよかったです。まさかあの人とこんなにラブラブになってしまうとは予想外でしたが!
しかしなにより、そんな中で輝いていたのは自称名探の姉・シャーロットだった気がする。バカだバカだと思っていたら驚異的な推理力を発揮してくるクライマックスもやばかったのですが、エピローグでの「家族ですから」には胸がキュンとなった。可愛いなあ可愛いなあ!
出番は少なかったけど夕海の行動にもニヤニヤしました。最後のやたらオープンなアレっぷりが可愛すぎた。
蒼穹のカルマ1
蒼穹園上空、高度二千メートル。抜けるような青さ、絨毯のように敷き詰められた層積雲が広がる空に突如現れた不純物―空獣。その不純物を駆逐し、飛空するひとつの騎影。長い漆黒の髪を踊らせ、空を舞う鎧を身にまとい、空獣の血で空を彩る騎士・鷹崎駆真。「任務完了だ」落ち着き払った声を発し、いかなるときにも狼狽えることのない彼女の鉄仮面。ある日、彼女に空獣警戒の緊急任務が言い渡される。蒼穹園の空を護る彼女の返答はもちろん…、即座に拒否!?えっ、ええ!!その日、駆真には任務よりも大事なことがあった!!第20回ファンタジア長編小説大賞準入選作、暴走し、駆ける。 (「BOOK」データベースより)
ど う し て こ う な っ た 。
「表紙詐欺」「あらすじ詐欺」と噂には聞いていたけどこれは酷い(褒めてる)。空を駆け“空獣”と呼ばれる怪物を己の体術で狩る女騎士・鷹崎駆真が最愛の姪・在紗の授業参観に駆けつけるためにあれやこれやというお話。強力無比な力を持つ若き騎士だがどこまでも鉄面皮な彼女が、在紗が絡むとただの叔母バカになってしまうのが微笑ましすぎる。そして次の展開が読めないにも程がある。
姪がからんだときのカルマのむちゃくちゃっぷりには、富士見ファンタジア全盛期の「スレイヤーズ」みたいな勢いを感じて、なんというか懐かしかったです。しかしそれは置いておいてはるか彼方の方にぶっとんでいくストーリー展開が凄まじかった。表紙から見たイメージで内容を想像すると裏切られること請け合いです。これはやばい。
最後のほうでさりげなく今後へのフラグ立てみたいな展開もあったけど、これは色々な意味でこのままの雰囲気でどこまでも突っ走って欲しいシリーズだなあ。続編もそのうち読みたいです。楽しかった!
女帝・龍凰院麟音の初恋4
うわあ、「ひめぱら」と比べて刊行ペース遅めなのにこのヒキは。文化祭を前にしていつものように(?)悠太を取り合う麟音と美麗の前に、新たな美少女が……というお話。
以前からもそういう部分が多かったけど、最早完璧に「デレ」を隠しきれてない、デレデレ状態の麟音が可愛い。同時に悠太もかなり麟音に対してデレを隠しきれて居ないので「いい加減くっついちまえよ!」状態なのに色々な理由から交換留学生の巨乳美少女・サラと恋人ごっこを刷る羽目になって、というのが大変もどかしい。麟音のツンデレは既にわざとらしいをはるかに突破した何かになってるし、悠太もさりげなく麟音のすきそうな出し物を調べたり……とすっかりデレちゃってるんだよなあ。
新キャラのサラに関しては微妙に後ろ暗い所はありそうなんだけど、何かたくらんでいるとかというよりもどちらかというと麟音達のように強くはいられず、罪悪感を感じながらも「ズルい女」をやってしまっている感じな彼女の姿がいじらしかったです。しかし、悠太と麟音がデレてしまっている以上、完全にただのかませ犬なんだけどな……そして二人の関係が割合好きだとお邪魔虫にしか見えないんだけどな……!!
悠太の「巨乳好きが祟って自分の本当の気持ちが見えてこない」がある限り、こういう状況が繰り返されるのは仕方ないんだろうけど、悠太がなんだかんだで胸の大きさだけで女の子のよしあしを判断してるわけじゃないのは美麗さんとの件で確定的に明らかになってしまっているわけで、今回の件はちょっと蛇足に見えなくも無い。結局の所、二人が付き合いだすきっかけとなった「過去の1ヶ月」を掘り起こす為の新キャラなのだろうけど、そろそろ真実が見たいかなあ。出来れば今度は早めの続編を、お願いします。
ひがえりグラディエーター
事前情報ほとんど確認せずにいったら表紙がカモフラージュすぎて5分くらい探してしまった件。この人の作品で萌え表紙とかトラップすぎる。そして中身は異星人から突然「娯楽」のためにリアル武器を用いた人間同士での戦いを強制されたり、虫が体内這いずったり流血したり内臓はみでたり……という安心のエグさ。戦うために「セクト」と呼ばれる虫を体内に入れて身体能力・治癒能力を高めているから基本的に戦いでは死なない……という設定を逆手に取って割とやりたい放題でした。
突然そんな戦いに巻き込まれて、たとえ死ぬことがないとしても他人を傷つけることにどうしても抵抗を覚える主人公が、6年前に失踪した妹の手がかりを見出し、その手がかりを追うためには勝ち上がらなければならないと知っても、それでも人を傷つけることに踏み出せないのが普通の少年らしくて良いなあ。そんな彼が背中を押してくれる人たちの存在を自覚して(たとえそのうちの1人が自分を巻き込んだ張本人だとしても)、妹の為でなく彼女たちの為に戦おうと決意するのがなんか良かったです。
物語としては完全に序章といったところなので、今後この設定でどこまでエグいことになるのか大変楽しみです。……続編出るよね!?ナンバリングされてないけどこれ2巻出るよね!?
あとがきによると、元はと言えば電撃文庫コラボレーション企画「まい・いまじね?しょん」に寄稿した物語を真面目に書いたら……というコンセプトだったらしいです。こちらはレトロゲームネタが大量なギャグっぽい短編なので、未読の人は読み比べてみると面白いかと思います。

まい・いまじねーしょん?電撃コラボレーション (電撃文庫)
ファンダ・メンダ・マウス 2 トラディショナルガール・トラディショナルナイト
宝島社様より献本をいただきました!
前巻の最後で父親のロンから唐突に金髪碧眼の許嫁・キンバを押しつけられてしまったマウス。ところが彼女の実家からロンに貢がれたヘロイン10kgが行方不明になり、マウスはキンバの兄からヘロインの行方を追うよう頼まれる。同時刻、美月はそのヘロインの運び屋をやらされていて……というお話。
1巻から変わらず、良い歪みっぷり。マウスがやってることは一見“正義のヒーロー”ですらあるのにどうしようもなく歪んで狂ってるようにしか見えないのは一種の才能だとおもう。敵に差し伸べられる好意の手が、こんなにも歪んで見えるとは思わなかった。
そんなマウスに惹かれ、奴隷のように彼の為に動く人々(一部人じゃない)と香港マフィアの抗争が絡み合って織りなす複雑な物語の真相が少しずつ解かれていく様は圧巻でした。みんな歪んでるけど滅茶苦茶かっこいいから困る。特にミチルちゃんとマウスのクライマックス目前の会話やばい。ミチルちゃんまじ名脇役!!そしてくそったれがマジ淫獣としてレベル上げすぎでやばい。ていうか機械なのにテンション上げすぎですからーーー!?
1巻がかなり綺麗に終わっていたのでどう続けるのかと思っていたけど、なんかこれは3巻以降もありそうな勢いだなあ。というか完結までにマウスの「夫人」が何人にまで増殖するのかが大変楽しみです。
……唯一の常識人っぽい美月ちゃんがんばれ超がんばれ…
伝説兄妹!
宝島社様より献本をいただきました!
自称「天才詩人」だが実力も才能もない駄目大学生・柏木は食糧を求めて迷い込んだ山の中の遺跡で女の子をみつける。天才的な詩の才能を持つ彼女に嫉妬心を募らせながらも柏木は彼女を家に連れて帰り、「デシ子」と名付けて彼女の詩を盗作しようとするが……というお話。
金はないが色々な理由をつけて働かない。口だけは無駄にでかいが才能が無いことは自覚していてそれを表だって認めることはできない劣等感の塊な男。悪い意味でどうしようもなく人間らしい駄目さ加減を持った「汚い大人」な柏木の行動にとにかく序盤は嫌悪感しか覚えなくて辛い。ある意味、理解できる/共感できる駄目さ加減だからこそ嫌なんだなあ。デシ子に劣等感を持ちながらも完全に見捨てることはできなかったり、尊大な態度を取る一方でいつ友人たちに見捨てられるかを怖がっていたり……と悪い意味で本当に人間臭い主人公。盗作した詩を売りさばきだしたときにはお前本当に創作者としてのプライドないんかと思いましたが。
デシ子には盗作の事、バレてるんだろうなあという伏線はかなり初期からあったけど、バレてからの展開はなかなか熱かった。特に盗作した詩で稼いだお金の「使い道」は上手いなあと。もはやお金と自分や世界の命を天秤にかけてるような状況で、それでもやっぱり金に執着してしまう柏木はやっぱ改心したように見えても根っからの駄目人間で、続編があるってことはまだまだ駄目っぷりを見せつけてくれるんだろうけど、それでもそんなしょうもない人間臭さが少しだけいとおしく感じられました。
クライマックスの「詩」も下手糞っぷりが半端ないんだけど、ちょっとデシ子が惹かれてしまったのもわかる気がする。
序盤のとっつきは悪かったですがおもしろかったです。
花咲けるエリアルフォース
内戦という名の戦争により「皇国」と「民国」の2つに分かれた日本。その戦争がはじまった日に、全世界のソメイヨシノが消滅するという事件が起きる。ただ9本だけ、人間の意識と繋がった桜だけが滅びの直前で時間を止め、桜と繋がった人間達は超兵器《桜花》を操る力を得た。《桜花》のパイロットとして集められた、桜により互いの意識を繋げた少年少女達が巻き込まれた「戦争」の物語。
散りゆく桜のような、美しいけど、どこか儚く切ないお話でした。圧倒的な力を誇るが飲み込まれたら二度と還ってこれない超兵器・桜花を駆る主人公たちの苛酷な日常の合間に、仲間達と過ごした掛け替えの無い時間がまぶしい。特にカラー口絵にもなっている4人のお花見のシーンは、後に読み進めれば読み進めるほど輝いて見えて、まぶしかった。
個人的には戦争描写を美化しすぎてるなぁという印象があって、そのへんはちょっとモヤモヤしてしまったんだけど、ちょっと特別だけど本当はどこにでもいるような普通の少年少女達の青春物としてはとても面白かったです。まだまだ続きが出せそうな感じではあるんですが、2巻以降はどうなるんだろう。しかし、綺麗に落ちているのでこのままでいいんじゃないかという気がしなくも……
終盤の展開は杉井さんのデビュー作「火目の巫女」を思い出すなあ、と思ったので火目好きは読むといいとおもいます!(むしろこの作品が気に入った人は是非「火目」に!というべきなのか?)









