絶大な魔力を持ち「魔人」と恐れられる子供達と、彼らの「先生」としてやってきた軍人の青年の心の触れ合いを描くファンタジー第3巻。前巻の終盤辺りから不穏なフラグがびしびしと立ってましたが、新たな組織の存在を絡めて予想していた以上に重い展開に…。
エイゴの活躍によって、それまでただ実態も知らずに彼らを恐れるだけだった町の人々と交流を持つようになり、まだまだ問題は多いものの少しずつつたない人間関係を構築していく姿ににやにやしていたら……これだよ!!!子供達を排斥しようと思う奴らや彼らの魔力を利用しようとする奴らの思惑が動き出して、子供たちの善意がどんどん逆方向へと転がされていくのが、とてももどかしい。
丁寧におぜん立てされた「作られた」悪意が無関係の人々を巻き込んで形を為すのは次巻以降となるのでしょうが、せっかく仲良くなれた人たちとも今までのような穏やかな関係で居られないであろう未来が透けて見えてしまって、やるせない。そして発端を引かされたアプリールの、女の子としてはあまりにもささやかな願いが胸に痛い。
しかも、当事者である誰もかれもに悪意が無いのが逆に、怒りのぶつけどころが見出せなくて辛いんですよね。おぜん立てを整えた人々ですら(一部のちょっとイっちゃってる人達はともかくとして)自らの正義を貫き通そうとしてすれ違ってしまっているだけなのが。ハイナートですら、自らの正義に盲目すぎて手段を選んでないだけで、どこか憎めないんだよなあ…。
これまで以上に「魔人」達への風当たりが強くなってしまいそうな次巻、子供達とエイゴが少しでも幸せな未来にたどり着けるよう祈るばかりです。