デスゲームがエンタテインメントとして市民権を得た時代。デスゲーム会社の敏腕運営として名高い黒崎の裏の顔は子煩悩な父親だった。愛する妻と子には仕事を隠し、扱いにくい部下達に振り回され、美人で有能な部下ヒロインにちょっと惑わされたりしつつ、お父さんは今日も行く……というお話。
「デスゲーム」と「働くお父さん」という混ぜちゃいけない洗剤混ぜちゃった感満載のストーリーが、思った以上にコミカルで楽しい。物語の要所要所に挿入される妻とのイチャイチャと、親ばか全開のコメントが楽しくてニヤニヤしてしまう。特に娘に好きな男の子が〜と聞かされて我を忘れて社会科見学にやってきた娘の同級生を追い回す話は最初から最後まで爆笑してしまった。
あと、なんと言っても楽しかったのはデスゲーム荒らし「大正義」との対決。参加者が全員協力してゲームをクリアする、のが確かに最善の流れではあるけど、運営してる側としては確かにそんなことされたら困っちゃうよな。一致団結してしまった参加者達を前に、胃をキリキリさせながらあの手この手で団結を崩そうとする姿に笑い転げる一方、部下のミスの責任!担当者の唐突な休暇!仕事のミスで単身赴任の危機!とかいう流れには思わず世知辛さと中間管理職の悲哀を感じてしまい、大変趣深い。
同意の上でゲームが行われてるという世界観自体も、運営側の視点というのもあると思うけど、ゲームに参加している側の描写も薄いので「デスゲーム」という単語から想像される殺伐さはまったくなく、どちらかというと中間管理職の悲哀のほうがジワジワ来る感じ。冷酷無比なデスゲーム運営と思わせておいて、ハッタリと勢いで周囲を騙しつつ「敏腕運営」として綱渡りしていく、あまりにも普通のサラリーマンなお父さんの姿が印象的でした。大正義がただの愉快犯とか、良くも悪くも敵も味方も純粋な「善人」がいない感じもバランス良いのかもしれない。
ただぶっちゃけ、作中で一切わかりやすい死者が出てないので、デスゲーム要素を期待していると若干薄さを感じる気はする。題材が題材なのにほんとびっくりするほど死なない。面白かったですが。