ある日突然、魔力と記憶を失ってしまったクロード。ただの人間に戻ったクロードを魔王に戻すまいとする国王や皇太后を中心とする一派により、アイリーンは再び婚約破棄の危機に立たされることに。彼の心を取り戻すため、アイリーンは行動を起こすがクロードの横には前世の記憶を取り戻したリリアの姿が……。
一度はアイリーンに完全敗北したリリアが、アイリーン以上の記憶を持つ『転生者』として立ちふさがる展開が熱い。ゲーム内で起きたの事件を自ら起こすことで、キャラクターたちを現実のシナリオで都合の良いように動かしていくというリリアの手口が巧妙すぎる。記憶を取り戻したことでこれまでの偽善者然とした行動ではなく、アイリーン以外をすべてNPCとして「使い捨てて」いく彼女の行動はすっかりラスボスじみてきて、ほんと初登場時の小物臭が嘘のような大活躍だった。
そんなリリアの目論見を、窮地に立たされたアイリーンがこれまでに「現実」で培った絆の力でひっくり返していく展開が最高に楽しい。というか何より記憶を失い家族のために人間たろうとするクロードと、そんな彼を再び魔王に戻し自分の元に返して貰おうとするアイリーンの攻防戦が楽しすぎる!やっていること自体は1巻とほぼ同じなんだけど、今回ははじめからアイリーンが本気でクロードを好きなわけで……ウブで純情なクロードの反応にニヤニヤする反面、セドリックに捨てられた傷がいまだに根深いアイリーンのどこか必死な様子に胸を打たれました。
その一方、リリアの本心に触れて揺れ動く第二王子・セドリックの姿が印象的なんですけど、最後まで読んだらこの人本当にクロードの弟だーーー!!ってなるのがズルい。いや、なんていうかこの物語に登場するどの「悪役令嬢」よりも悪女な彼女のパートナーになるならこの男くらいのキャラでちょうど良いのかも!?色んな意味でリリア嬢の今後が気になります。
セドリックもそうですが堂々と悪女しはじめたリリアといい、打算的でふてぶてしい本来の性格を隠さなくなって損得で動くセレナといい、そんな彼女を許しもしないけれど同情もしないレイチェルといい、今回は敵も味方も最高に魅力的で楽しかったです。これまでの物語が全て今回のラストに持っていくための伏線という感じで、とても良い最終回でした(※終わってません)。あと今回のヒロインは文句なしにアーモンド。1巻から可愛いがすぎると思っていたけど3巻完全にヒロインだったよね……!
それにしてもリリアとアイリーンのゲームに対する記憶量の違いを「プレイスタイルの差」として理由付けしているの、乙女ゲープレイヤーあるある感あって上手いなあ。私はハマったら全ルート潰しプレイするタイプなんですけど、前世のアイリーンみたいに「好みのキャラ以外のルートはやらない」人、一定数いるよね。というか前世のアイリーンって本当にセドリック好きだったんだな…。