オカルト探偵事務所の資金を稼ぐため始めた企業所属Vtuberとしての仕事が予想以上に好評となったニコこと佐藤たけし。企業内のオカルト系V達と新たなユニットを結成したり、箱内で行われたコンペを勝ち抜いて公式番組を企画することになったり、自分に憑いている幽霊・満を2D化したり……大忙しな毎日を送ることに!そんな中、先輩Vtuberである真理が並行世界の自分達をモデルに作ったというホラーゲーム『奇紀怪解』を実況配信していたところ、おかしな事が起こり始め……?
ゲーム実況を通して現実と虚構が交錯しながら進んでいく展開が凄かった
配信シーンも挟みつつ、前よりもオカルト比重高めになった印象のシリーズ第2巻。オカルト系の設定はあるかどうかわからないあくまで刺し身のツマくらいの感じでいくのかとおもってたけど、マジで「非日常」が日常の裏側に存在する世界の話になってきたな。というか真理の並行世界の観測者設定や邪神の存在がガチだとすると今回チラッと出てきたアザミさん回りの話とかも割と虚構だけの話じゃない気がするんですが、どのくらいまで本当なんです……?並行世界の自分達がモデルのホラーゲームを配信で読み聞かせながらプレイしている状況を逆手に取って、読み進めるごとに徐々に現実と虚構(?)の境界が曖昧になっていく──という展開が絶妙に気味悪くて面白かったです。配信シーンで感じた微妙な読みづらさがだんだん意味を持って惑わせてくるの面白かったし、物語の登場人物だけじゃなくて読み手にまでアハ体験(死語)させてくるの凄かった。あとなんでもない描写のように見えて本人無自覚のまま存在しない記憶が無から生えててそれをベラベラ喋りだすの、普通にホラーなんだよ……。
全体的にホラーとオカルトが混ざってきて少し気味悪い展開をものともせず現実世界でも並行世界でもメチャクチャな1期生の皆様(オシャレ/クール/シゲキ)のキャラが濃すぎて良い清涼剤になってましたね。やたらと勢いのある挿絵で笑ってしまった。
個人的にはもう少し配信中のエピソードもみたい
ホラーゲーム配信を通して現実と並行世界の記憶が溶け合っていく展開はお見事なんですけど、割とそっちの話が増えすぎて1巻の時に一番面白いなと思っていた配信モノとしての比重が相対的に減ってしまった印象だったのは少し残念でした。いや確かにゲーム実況や配信が物語を紐解く大きな鍵となっていくのは確かなんだけど、あの非日常が存在しながらも日常ではない世界で「Vtuber」という存在を通して日常の住人達が違和感なく非日常を受け入れてるという世界観が凄く好きなので……満実体化の流れで信じてなかったところから満のしょんぼりボイスで手のひらクルーするリスナーたちのノリの良さ、好き。特に今回はニコがコンペを勝ち抜いた公式番組『EDEN's School』の話がメインだと思いこんでたのでそのへんの話が思ったよりあっさり終わってしまって残念に思ったのもある。あの企画普通に面白そうなんですよね。まだちょっと今回新たに登場して存在感が薄めの人とかいるから掘り下げてほしいし。今回の時点ではレギュラー化前の段階だったから、次巻で結果がでてガッツリ取り上げてくれるの期待したいです。
あと、『奇紀怪解』プレイ中のエピソードが秀逸なだけに、そこでひとしきり盛り上がったあと視点も展開もバラバラな話が続いてよくわからないまま終わったのはなんか勿体なかったな……Web小説の書籍化だと変な所で次巻に続くって割とよくある奴なんですけど、書籍として出すからには上手く書き下ろしを足すなり順番を調整するなり次巻回しにするなりしていい感じに引いてほしい……まぁ作品や作者のせいというよりも編集仕事してほしいやつ……。
