旧生徒会メンバー卒業後に1人碧陽学園生徒会に残った杉崎が、新生徒会メンバーとのフラグ構築の為に奔走するアフターストーリー下巻。今回は前回攻略できなかった二人を中心にした物語です。
まず、素顔からして謎で上巻では存在を匂わせる程度の出番しかなかった日守東子。表紙でいきなり明かされた素顔からして、無口系のクールビューティキャラとかを勝手に想像してたらまさかの真冬ちゃんの同類だった!!しかも真冬ちゃんがナマモノと商業BLを主食にするゲーマー腐女子なのに対し、こちらは二次創作を主食にするアニメマンガ系腐女子。いや、なんでしょうね腐女子キャラの描き分けが秀逸すぎてどんな顔したらいいかわからないの。すごい……二人とも重度な腐なのに腐の方向性がちゃんと書き分けられている少年向けライトノベルて……なんていうか、凄くこう、希少なものを見た気がしました。そして次代へと受け継がれる鍵×守……
そしてこれまで影に日向に新生徒会の面々を妨害してきた事実上のラスボス・火神北斗。他の3人もそれぞれ重い過去を背負っていましたが、彼女の抱える物は予想した以上に重たかった。「卒業編」の飛鳥でもそこまで深くは突っ込んでこなかった鍵の「ハーレム思想」に対し、クリティカルに心を折りにかかる「自爆テロ」が壮絶。いやでもまあ、こんな父親に育てられたらそりゃあ……ってなるよなあ。
ハーレムエンドを目指す上でこれまでは目を瞑ってきた部分をまざまざと見せ付けられ、心も折られかけた鍵が新生徒会の面々の(ちょっと厳しい)言葉を受けてなんとか立ち上がり、いつも通りに身を削って奔走する姿が印象的でした。なんだかんだで、鍵は本当にかっこいいんだよなあ。ハーレムの思想自体は正直……と思う部分もあるけれど、火神の父のようなものではなく、彼ならばもっとあたたかい関係を構築してくれると信じられる何かがありました。火神編はぶっとおし病んだ展開の連続だったから、火神が○ンデレ進化したってちっとも意外じゃないぜ……意外じゃない、ぜ……(震え声)
最後の最後で満を持して登場するくりむ前会長と鍵のやりとりがまた大変に良かったです。生徒会室を舞台にしながらも卒業生と在校生という「生徒会」という枠組みから外れたところで展開される関係性がとても甘酸っぱい。くりむの名前を呼ぶあたりのやりとりが可愛すぎてもう…!!
これにて「新」シリーズもひと段落。あとは短編集を残すのみですが、そちらでは「いつもとおり」の旧生徒会の姿が再び見られるということで、そちらもとても楽しみです。
その小さな胸を張って−誰の受け売りでもない、彼女自身の中から出来たのであろう言葉を、語った。
「世の中が面白いんじゃないの。貴方が、面白い人間になれたのよ」