半分以上は読んだ事の無い作品だったので、久しぶりに堪能させていただきました。読んだ事のある作品も懐かしい気分で、心新たに読めて面白かった。
「グリーン・レクイエム」
小さい頃、嶋村信彦は緑の髪を持つ少女に出会う。彼女のことが忘れられずに大学で植物学を学んでいた彼は、あの時であった少女にそっくりな瓜二つな女の子・明日香に出会うが…
コミックや映画にもなった、新井さんの代表作ともいえる作品で、緑の髪で光合成をすることが出来る少女・明日香と植物学を学ぶ信彦の恋物語。中盤の逃避行シーンが非常に好きでした。本当にページ数的には短い場面なのですが…二人のワクワクしている気持ちが伝わってきて、また、2回目以降はその後に待ち受けている悲劇を思うと切なくなる。
個人的にはこれの続編に当たる「緑幻想」が非常に好きだったりします。中学時代に散々読み返した作品のうちの1つで、凄く思い入れの深い作品。
「ネプチューン」
過剰な開発によって汚く淀んだ海に囲まれる“ネプチューン”の海で、3人の学生達は謎の少女を助けた。言語を介せず、まるで人魚姫のような美しい少女は「ネプチューン」と名づけられ、3人に保護される。しかし怪しい奴らがネプチューンを狙い始めて…!?
海を綺麗にしたいと願う洋介、いつの日か遠くに—宇宙に行きたいと願う正行、二人の間で揺れる由布子…という3人の学生の所に不思議な少女が現れて四角関係の泥沼になる話…というのはちょっと端折りすぎですが(笑)
彼らの想いが人間の本能を形作り、それが現在の進化に繋がる…というラストは途方もなく大きな話になってしまいますが、個人的に心に残ったのはやはり4人の織り成す四角関係。ラストの由布子の姿はちょっと薄ら寒いものがありましたが…
なんというか、全体的に洋介があまりにも不憫すぎると思うのは目の錯覚ですか。
「雨の降る星、遠い夢」
家出をして火星のやっかいごと引き受け事務所に勤めるあゆみは、いつまでも仕事をもらえないことにふてくされ、所員の出払った事務所で留守番中。ところが、ひょんなことからお隣りに住んでいる礼子さんのごたごたに巻き込まれた。『きりん草』に取り憑かれてしまった礼子さんのフィアンセを、あゆみは助ける事が出来るのか…!?
『星へ行く船』シリーズ第二段。実はこのシリーズ未読なんですよね…読んでおけばよかった。第一作を読んでいないので一部設定がイマイチつかめなかったりで最初はちょっと読みづらかったのですが中盤以降はいつも通り楽しむ事が出来た。後書きによるとこの短編のイメージは『黄色』だそうですが、そのまんま黄色のイメージが濃厚で、後書きを読んだ時「なるほどなあ…」と思いました。
そしてちょっとしか出てきませんが、太一郎さんがかっこよすぎです。「ブラックキャット」の山崎ひろふみの子孫だかなんだか…と聞いた気がするのでもっとヘタレっぽい人物を想像してました(笑)
「一月 — 雪」
「八月 — 蝉」
「十二月 — 夜」
「季節のお話」に収録されたショートショート3編。
珍しく三人称で、童話っぽいお話です。読んでると非常に和める3編。「十二月 夜」の夜の神様が偉い可愛らしくて、かなり気に入ってます。いや、だって想像すると凄い可愛いんですもん、神様(笑)
そういえば「季節のお話」も未読です。今度読んでみよう…
「眠い、ねむぅい、由紀子」
金持ちの父親が裏口入学させようとするのを断固拒否して、自分の力で大学受験に挑もうとする由紀子。ところが近頃、眠くてしょうがない。それなのに何故か成績は上がっていって…!?
めでたしめでたしなお話かと思いきや、ラストでとんでもない手痛いしっぺ返しを食らいました。でもなんかこういうオチでこそ新井素子という感じがしなくもないですが(笑)色々と素子さん中毒な私。
「影絵の街にて」
奇妙な老人から時計を託された久子。その時計はなんと時間を操れるというシロモノで、最初は喜び勇んで時計を使っていた久子だが…
1日が100時間欲しいと常に願っている私には、身につまされる話でした。こんな時計が無くても時間がもったいない?、もったいない?。って常に思っている私です。もう少し心に余裕を持とうと思いました。
なんか色々と引き伸ばして書いたら電撃文庫とかでも行けそうなストーリーでした。というか漫画化したことがあるそうで、漫画版読んでみたいなあ。
「大きなくすの木の下で」
夫はなかなか出世せず、息子はドン臭い…日常に不満だらけの恭子。そんな彼女の元に、謎の悪魔?が現れ、願いを叶えてくれると言い出すのだが…?
あ?なんかこれも身につまされるなあ…。今までの失敗だらけの人生を特にリスクもなくやり直させてくれるって言われたら?ってお話。こういうのに引っかからないよう、もっと色々と後悔しないように人生を生きたいと思います(笑)