[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二 受験本番を控え、和巳とその級友たちはそれぞれの道を歩き始めていた。勉強の合間に、画家志望の級友・範太の卒業制作を手伝っていたのだが兄に代わって演劇部の部長となり、煮詰まっていた桃とちょっとしたことで口論になってしまう。更に桃と範太が仲良くしているシーンを偶然見かけて…!? |
以前の話で双葉がガーゴイルの影響を受けて「門番」になるにはどうしたらいいか悩む一幕がありましたが、今回は和巳が「人を助ける仕事に就きたい」という夢を語ります。それだけガーゴイルの存在が吉永家に与えた影響がでかいということで、互いに良い影響を与え合って少しずつ成長していく姿に、胸が温かくなる思いがする。同時に、それこそ割と「なんとなく」で大学に行った身としてはちゃんとした将来のビジョンを描いてそれに向かって邁進していく和巳や林吾、範太の姿がどうしようもなく眩しく感じました。青春っていいなぁ。
普段温厚な和巳にも色々と譲れないものがあって、今回はそんな部分が一人で抱え込むタイプで完璧主義な桃と衝突してしまった感じ。しかもそこに、恋の鞘当てと受験戦争が加わって……桃と範太の姿を偶然目撃してしまって、センター試験が完全に上の空になってしまう和巳の様子にはあまりの微笑ましさに思わず笑ってしまいました。…いや、他人事だからこそ笑える話なんですが…(自分もセンター試験では盛大に滑った事を思い出した)。桃や範太に対してらしくもない冷たい態度を取ったり、駄々っ子のように喚き散らしてしまうあたり、予想以上に桃が好きなんだなあと思う一方で、やはり受験戦争で精神的な余裕がなくなっていたんだろうなあ、とも思ったり。
ただ、和巳の優柔不断で鈍感な性格ではこのくらいのアクシデントが発生しないと桃との仲は進展しなかっただろうし、ちょうど良かったような感じも。なんだかんだいって本編が終わる前にくっつけて良かったよね。そして何気に二人の恋のキューピットといえなくもない(言いすぎ?)オシリス姐さんが良い味出してました。
前回に引き続き、今回も良い具合にほのぼのとしたお話でしたが事件の陰に「古科学」が居たり、そろそろ物語はクライマックスに向けて動き出すのかなあという感じ。残り3冊、とても楽しみです。卒業式で和巳が女装してくれなかった事に人知れず涙したのは私だけでいいと思う。
それにしても今回、巻末マンガが秀逸すぎる。特に百色の贋作たちには思わず電車の中で決壊したじゃないですかどうしてくれるwww