彩雲国物語 黄粱の夢 | 今日もだらだら、読書日記。

彩雲国物語 黄粱の夢

 

劉輝の父、覇王・戩(せん)華の時代。愛憎渦巻く朝廷で、必死に生き抜く第二公子・清苑を搦め捕った陰謀とは!?(「鈴蘭の咲く頃に」)秀麗を支える天下無敵の二人組、燕青と静蘭。交わるはずのなかった彼らの運命が交錯した夏を描く鮮烈な中編(「空の青、風の呼ぶ声」)ほか、秀麗の父・邵可と母・薔君の宿命の出会いと命がけの求婚を描く、著者渾身の書き下ろしを収録!!すべての物語が現在につながる、究極&珠玉の外伝集。(「BOOK」データベースより)

読み飛ばしていたので順番左右しますが最新刊から1冊戻り。静蘭と燕青が「殺刃賊」を潰した時のお話をメインに邵可&薔薇姫の出会いを収録した番外編集。

静蘭と燕青に暗い過去があるのはなんとなくこれまでも幾度となく示唆されてましたが、予想以上に重たい展開にびっくりしました。特に静蘭の「小旋風」という渾名の由来がそんなことに起因するものだったとは……。

孤高の皇子時代に唯一の心のよりどころだった劉輝との心温まるやりとりにも、母・鈴蘭との悲しいすれ違いも印象的でしたが一番印象に残ったのは前王・戩華の意外な「父親としての」素顔ではないでしょうか。ただの「父と息子」に戻った彼と静蘭が一瞬見せた気の置けないやり取りが微笑ましいのと共に、彼等のそういう関係を許さなかった当時の状況が物悲しくもあり。

しがみついていた「皇子」としての立場を奪われ母を殺され「殺刃賊」に囚われ、まさにどん底状態の静蘭を引きずり出した燕青の方も、彼に負けず劣らずな深い闇を抱えていて……そんな二人が1000人の敵を前に背中を合わせた一瞬は思わず燃えた!!ツンツンした態度をとりながらも時々どこか自分よりも危うげな一面を覗かせる燕青を放ってはおけない静蘭の立ち回りにニヤニヤする。

二人にとってはあまりにも重い「過去」のお話でしたが、二人の一瞬ともいえる出会いが『その先』の人生を顧みようとしなかった彼等の生き様を変えた。そして再び別々の新しい人生を歩み、再びめぐり合うその様子はそれこそ「運命の出会い」だったといえるのではないでしょうか。別に静蘭×燕青の悪友関係萌えなんて思ってません、ちっとも思ってませんとも!!!

書きおろしの邵可と薔薇姫の出会い話も素敵。飄々とした邵可のフリーダム具合に翻弄され、だんだん彼のペースに引き込まれてしまう薔薇姫の姿と、ピントのちょびっとズレたやりとりにニヤニヤが止まりませんでした。いろいろな意味で最後に持っていかれた!!

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