ゲームの通りに没落を目指していたはずなのに、なぜか没落フラグを回避してしまったメアリ。それでもいつか北の大地で渡り鳥丼屋を開く日を夢見て、経営学を学ぶため隣国に留学することに。従者・アディと離れ、一人でやってきた大学で彼女を待っていたのは乙女ゲーム続編のヒロイン・悪役令嬢「達」で…!?
主人公無関係の所で繰り広げられる転生令嬢達の闘い
乙女ゲーム続編のヒロイン・リリアンヌと彼女のライバルにして没落予定の悪役令嬢・カリーナ。そして記憶を持たぬその他のライバル令嬢達。前世の記憶を持つ二人がメアリの横で繰り広げる闘いが地味に熱い。なぜリリアンヌは無理をしてまで難易度の高い「逆ハーレムエンド」を目指すのか。そして彼女と対立するような姿勢を見せながらどこか攻めが甘いカリーナの思惑は…。割と正統派に悪役令嬢転生モノやってるし、終盤はなかなか痛快などんでん返しが待ってるし……で楽しかったです。まあこの辺全くメインじゃないんですけどね!!本編的にはメアリになつくライバル令嬢のひとり・気の弱い少女パルフェットとメアリの友情の萌芽がメイン。アリシアとは真逆の、メアリが「苦手なタイプ」である彼女が少しずつ精神的に成長していく姿と、次第に彼女をかけがえのない友人と思うようになるメアリの心の動きが印象的でした。悪役令嬢達の戦いは本当にメアリの関知しない、ストーリーの裏で話が進んでいて笑ってしまった。潔いな!!
急転直下なイチャイチャ展開にニヤニヤが止まらない!
アディ不在&乙女ゲーム続編のヒロイン達に囲まれた大学生活。そこかしこで無意識にアディの姿を探してしまうメアリの姿にニヤニヤしていたら…軽い口約束を発端に言質を取った周囲が一気に外堀を埋めていって、結婚までの展開が早いマジ早い。すったもんだでアディからの気持ちを聞かされ、自らの気持ちをようやく自覚したメアリがこれまでとはうってかわってお花畑状態でノロケ出すのが可愛いすぎるし、これまで何を言っても暖簾に腕押しだったアディが色ボケ状態のメアリに振り回されるのはなんかもう一周回って面白すぎる。アディは今回本当に強く生きてほしい。アルバート家ほどの貴族のご令嬢が一介の従者に過ぎないアディと何の障害もなくくっつくのには正直ちょっぴり違和感があるんですけど、よく考えれば現在のアルバート家はこれ以上を望むまでもなく大安泰、完全なパワーバランス取れてしまってるわけで。ある意味「没落を目指していた」頃のメアリがここに辿り着くための種を蒔いていたとも言えるんですよね。「メアリがパトリックと結婚しなかったからこそ生まれた益があった」という考え方は実に貴族的で良いなあと思う。
パトリックがいい仕事した…(全方位に)
1巻からメアリとパトリックの「恋愛には至らなかったけど良い関係」、というのがとても好きだったんですけど、今回の二人の関係が本当に好きで好きで……。おそらく同じ視点で、同じ考えを共有できる随一の存在。でもお互いに選んだのは別々の人で、それを後悔するつもりはない。笑顔で「アリシアとアディがいなければ結婚していたと思う」と言い合う場面が、もうひたすらに好きすぎて……。更に今回は、前巻ではあまり絡みのなかった気がするアディとパトリックの関係がとても美味しかったです。自称「アディ応援団長」を名乗り出したときには噴いてしまったけど、それに違わぬ活躍ぶりが眩しすぎる。この人実はアディの事大好きすぎない?そして式当日はすっかりアディを弄って楽しむポジション代表になってるの面白すぎました。
それにしても、結果論だけど今回は殆どの事件がパトリックを発端にして発生してたわけで、結構な人数が破滅してることを踏まえると色んな意味でこの次期王子が魔性すぎるな……。