腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい World of Sandbox | 今日もだらだら、読書日記。

腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい World of Sandbox

 

科学よ、これがファンタジー(理不尽)だ!
戦艦を作りたいのに、鉄が足りない! 気がつくと、SFゲームの拠点要塞ごと転生していた。しかも、ゲームで使っていた女性アバターの姿で。 周囲は見渡す限りの大海原、鉄がない、燃料がない、エネルギーもない、なにもない! いくらSF技術があっても、資源がなければ何も作れない。 だというのに、先住民は魔法なんてよく分からない技術を使っているし、科学の"か"の字も見当たらない。それに何より、栄養補給は点滴じゃなく、食事でしたい! これは超性能なのに甘えん坊な統括AIと共に、TS少女がファンタジー世界を生き抜く物語。

ふと気がつくと、前日までプレイしていたゲーム【ワールド・オブ・スペース】の拠点に転移していた主人公。しかも、ゲームで使用していた女性アバターの姿で!?拠点の統括AI《リンゴ》の頭脳を駆使して拠点を整備し生き残りを図るが、資源も食料もエネルギーも何もなしの状態。なにもかも手探りで周囲を探るところから始める羽目に……!?

モニターの外の侵略戦争

自分のやっていたSFゲームの拠点に異世界転移してしまった主人公が、何もない状態から拠点を整備し何もわからない異世界(ファンタジー)で生き残りを目指していく物語。なにもかもがわからないところからまずは自分たちの状況を把握して、最低限の栄養源を生産するところからはじめ、次第に食料を生産し、やがて資材を生産し、自分達のいる異世界の住民たちとの交流・貿易を図るために艦やユニットの生産に手を伸ばしていく。そして、貿易を行おうとした港町はある問題に悩んでいて……と、ゲームのチュートリアルからさいしょの村のクリアまでみたいな展開が面白かった!資源さえあれば何でも出来るハイテクを持ちながら、資源がないのでなにもできないというタイトル通りの「腹ペコ」具合もゲームの序盤っぽいし、ゲームが現実になってしまったせいで種族の詳細や生活設備の有無など元のゲームでは肉付けされていなかった部分が足りなくて躓いてしまうままならなさが面白い。こういうジャンルのゲームが好きな人にはめちゃくちゃ刺さるお話なんじゃないかと思う。

そして異世界交流的には、艦内で生産した資材を交易材料にして飴と鞭を上手く使って少しずつ現地民を自分達に依存させていく手腕が凄かった。1巻時点では比較的友好な姿勢を取っているのですが、もうこれ絶対にどっぷり依存させておいてジワジワと支配する流れですよねえ!現地民の方も自分達が依存「させられてること」に危機感を覚えつつ、ズブズブと深みにハマっていくこの感じ。そして主人公は最初から最後まで拠点の内部にいて、一連の出来事はモニターの向こうで淡々と進行していく。自分が当事者のはずなのに最後までゲーム感覚が抜けていない薄ら寒さというか、時折発揮される主人公の獣人少女好き設定とかも微笑ましく感じる反面ゲームと現実の区別がついてなさそうな感じがして薄ら寒いというか……。このまま順調に資源を稼いで版図を伸ばしていくのか、どこかで痛い目を見たりする方向性なのか続きが気になるシリーズ第一巻でありました。

というか主人公すら統括AIに少しずつ依存させられているというか「管理」されてる感が結構ある気がするんですよね。この統括AI、「甘えん坊」といわれているけどもっと変に主人公のこと拗らせてるというか……これ物語の進行によってはヤンデレ方向というか、後味の悪い展開もありそうで不穏だなぁ……

個人的にはこのジャンルのゲームへの造詣があまりないので元のゲームをうまく想像できない部分があり(わりと元になるゲームジャンルを「知ってる前提」で話が進んでいる気配を感じる)、同時に転移前の世界観や主人公自身に関する掘り下げが殆どないこともあって少しどういうスタンスで読めば良いのかわからない部分もちょくちょくあったので、その辺は今後もう少し掘り下げや言及があると良いなあと思いました。せっかく性転換している主人公なのにその辺の反応や描写が蛋白気味なのも勿体ない。ただ、この「血の通ってなさ」こそが味という感じもするのだけど……。

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