天の智慧研究会の過激派がルミアの暗殺を目論んでいるという情報を掴んだグレンの古巣・特務分室がグレンに協力を要請してくる。ところが、その内容はグレンとルミアに学園で開催される『社交舞踏会』に出場させるという囮作戦だった。ルミアにも誰にも計画の全容を話せないまま、舞踏会の当日がやってくるが…?
久しぶりの「天の智慧研究会」との対決回で、アルベルト&リィエル以外の特務分室の面々が本格登場。一応メインはグレンの元上司であるイヴなんだけど、個人的にはバーナードおじさんが好きです。良いおっさんだな!!
たとえ廃嫡されても「普通の女の子」ではいられないルミアがこのままで良いのかと葛藤しながらも、だからこそこれだけは譲れないと舞踏会で見せる輝きが、最高に可愛くて物悲しい。そんな彼女の決意に対して全力で応えるシスティーナとのダンス対決が熱かったです。今回のルミアは戦闘ではない部分でどうしようもなく強くてかっこよかったけど、同時のその強さが今にも折れそうな脆いもののようにも思えてしまって、今後の展開がどうなるのか心配になる。グレンがいれば大丈夫だとは思うのですが……しかしこれはいろいろな意味で恋愛方面はルミアに行くのかシスティーナに行くのか読めないな。
終盤のバトルシーンで、現役時代を彷彿させるグレンとアルベルトの言葉にしなくても分かり合うツーカーな相棒ぶりとコンビネーションバッチリなのに事ある毎に言い合いしてる感じ最高に燃える!!んですけど、あとがきの「それ本人が言っちゃっていいの!?」感すごい。恋愛面ではルミア、バトル展開的にはアルベルトの一人勝ちってかんじで色んな意味で新キャラのイヴは不憫な感じ拭えなかった。というか、グレン争奪戦にまざってきそうな気配だけどグレンの好感度最低のところからのスタートだし、割とバックグラウンドとか積極的に出して好感度を上げていく作戦なのかもしれないけどそれ以上に今回の無能感高かったし、今のところ噛ませ犬の予感しかしないのがちょっとアレだなあ……。
「うらら」一覧
さびしがりやのロリフェラトゥ
学園の旧校舎には吸血鬼がすんでいた。吸血鬼とそれを狩るもの、正義のヒーロー、ふたりの女子校生。彼らの視点から紡がれるひとつの事件を巡るSF(すこしふしぎ)な物語。
語り手が変わる毎に全く違う側面を見せていく物語が面白かった!物静かでお高く止まっているように見えるけど実は(自主規制)な常磐さん、自らを高貴なノスフェラトウとして振る舞いたいちっちゃい吸血鬼のシギショアラ、誤解されやすいけど本当は情に厚い真光寺さん、そしてちょっと不思議な能ヶ谷君。視点が変わる毎に全く別の姿を見せていく登場人物たちの姿と、次第に明かされていく事件の真相に惹きつけられました。特に最初の常磐さんからシギショアラに視点が移動した時のストーリーの反転ぶりにはめちゃくちゃ笑った。
物語の全体像が見えきらないまま終わってしまった雰囲気もあるのですが、逆にどこまでも輪郭が曖昧なままどこともいえない場所に着地するようなふわっとした読み心地がなんだか心地よく、とても楽しかったです。
自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う 2
前巻と比較してバトル比重高めの2冊目。1巻の時点で多めだった迷宮の中の街で住人たちのお悩み解決みたいな話が好きだったのでちょっと残念なんだけど、序盤に挟まれる街でのお話が好きだったので満足です。特に、魔道具お披露目会の話好きだなあ…。
立派なハンターを目指すラッミスと共に階層の調査に向かった所、予想外のアクシデントが起き、一人で階層ボスに立ち向かう羽目になったり、下の階層の迷宮内にとり残されるハメに!?という展開で、これまでの生活で手に入れたポイントを限界まで使って階層ボスや新たなる敵に立ち向かう自動販売機、マジかっこいい!しかし、これまでも様々な形態の自動販売機の姿に目を丸くしてきたけど、ダンボール自動販売機その発想はなかった。実際に商品売れるところまでは頑張らなかったけど私も小さい頃に作った記憶あるな……。
ラッミスたちとはぐれて一人で迷宮の中で遭難するあたりは、せっかく意思疎通の図れる相手に遭遇してもなかなか察して貰えなかったりで、改めてラッミスのありがたさを痛感する。と言うか改めて移動も意思の疎通も出来ない自動販売機で異世界の存在と意思疎通を図ることの大変さを感じるというか、ある意味1巻の序盤はどれだけイージーゲームだったのか!
それにしても、商品販売だけじゃなくて敵を倒すことでポイントが入ると判明した以上、今後もバトル比重上がりそうな流れだなあ……様々な特殊な加護を尻目に自動販売機としての正統進化を獲る主人公が歪みなくて惚れるけど、できれば絶妙なコミュニケーションの不自由さが面白いので念話みたいな機能はできれば後回しにして欲しい。
あと改めて、世界観にゲームっぽさを感じさせる異世界の姿が印象的でした。時間湧きのボスとかまさにMMORPGっぽい。
流行に乗って「ライトノベル個人史」書いた
ライトノベル遍歴を語るのが流行っているようなのでブログのリハビリも兼ねて投下します。前半は以前に書いた記事の焼き直しなので、個々のタイトルの紹介は省略します。あと永遠の21歳ということになっているので年代はかかない。
ひたすらお金がなかった少女小説読み漁り期
図書室と図書館と古本屋の100円以下ワゴン(ブックオフ参入前の微妙な古本屋とかだと10円とか30円みたいなワゴンが割りとあった)で読むものを探していた時代。コバルト・ティーンズハートのミステリ系の長編シリーズや恋愛系の1冊完結系ばかり読んでました。
古本屋駆使して一番頑張って集めてたのはやっぱり「星子宙太シリーズ」だとおもうんですけどまさかこれ50冊続いて子供が出来るところまでいったとか流石に知らなかったです……さすがに全部は追ってません。
なおたまに同世代が話題に上げる「運命のタロット」シリーズは古本屋ではめったにお目にかかれず。ぶっちゃけ、ミステリーものと恋愛物は冊数出てても1冊で話が完結するから巻数バラバラでも追いやすかったんだとおもう。運タロとかあらすじからして時系列バラバラではよみたくないですしね。折原みとの現代舞台の恋愛物とか「とんでもポリス」とか「〜の国のアリス」シリーズとか読んでたはずだけど内容うろ覚え。
図書館で読んでたやつというと「ラノベっぽい(と言うかラノベ出身)けど一般レーベルで書いてる」このふたり。氷室冴子はコバルト文庫のやつが割とそのまま文庫やハードカバーで図書室入ってましたね。新井素子は少女小説レーベルで書いてたのとは違う路線のやつが入ってたんだけどそこからコバルトに行って転び直したりしてたから……「あなたにここに居て欲しい」は良い百合なので好きな人はどうぞ。あと「おしまいの日」はいいぞ。
大体林原めぐみが悪い富士見全盛期
少女小説ばかり読んでいた頃に「らんま1/2」でドはまりした林原めぐみさんのラジオ経由で(ラジオ経由!)わかりやすくアニメ化直前の「スレイヤーズ」にすっころんだ大変わかりやすいオタクです。90年台後半のラジオにはラジオドラマなるドラマCDの連載版みたいなやつが連載されており、林原めぐみさんのラジオでは当時スレイヤーズのラジオドラマが流されていたのでした。
マンガみたいな軽快なノリの文章と、それとは裏腹にガンガンぶっこまれるヘビーな展開が衝撃で。スレイヤーズはアニメになったのが1部までだからあんまり話題にならないけど2部の重さが結構好きだったんですよね。ラストは子供なりに飲み込めないところもあったんだけど、「まあ神坂一だしな……」みたいな謎の納得があったのを覚えてます。そういう意味で一番刺さったのは3冊完結の「闇の運命を背負う者」だったかもしれない(2巻まででそこそこきれいに落としておいて3巻で突き落として重い物背負わせる感じがすごい)。
あかほり さとる,ことぶき つかさ (著)
KADOKAWA / 富士見書房
発行:2014-07-05
スレイヤーズで林原めぐみでわかりやすくこっちも好きだったオタクでした。セイバーマリオネットもアニメと違って原作の重たい展開が……とかずっと言ってたんですけどJtoXは原作とは全く別方向に重たかったなあ……。
ちなみに林原めぐみのラジオ経由というとこっちもそうですどんだけ罪深いんだ林原めぐみ。スレイヤーズとこれがほぼ同時期だったんじゃないかな……アニメはまともに見てなかったので特にヨーコはラジオドラマのイメージが強いです。ああいうの好きだったので今の声優ラジオには全く興味がもてなくてすまない……。
そして3年後には空前の「ロスト・ユニバース」期来るんですよ。私の青春の林原めぐみから逃げられてない感じすごすぎてツライ。そしてライトノベル原作で初めて人生を狂わされた男は間違いなくお前だケイン・ブルーリバー。「ヤシガニ屠る」とかいってはいけない。
今も大体好きなアニメのノベライズは追うけど当時はノベライズ頑張って読んでて、その中でも特に山本剛の「魔導物語」シリーズと北条風奈の「小説TWINSIGNAL」シリーズがお気に入りでした。あと書影がでてこないんだけど久美沙織の「MOTHER」シリーズ。後者は特に初めて同人的な方向でドハマリした作品だったので、死ぬほど読み返したし、当時の読書遍歴にも大分影響あったとおもう……というか当時は並行して国内・海外SFブームが来ていたので私のソノラマ全盛期はここです(秋山完がわりと好きです)。
良くも悪くもアニメ・マンガとともにあったスレイヤーズ全盛期のラノベ遍歴でした。
私の傷みでオタクの道を踏み外す
割とここまでメディアミックス済の作品をメディアミックスから入って原作まで追う、というわかりやすいオタクをしていた私に、当時ネット上でお付き合いのあったお姉さんが勧めてくれたのが電撃文庫の大定番「ブギーポップは笑わない」です。暫くはブギーポップとキノの旅を追いかける解りやすいオタクをしていたのですが、盛大に道を踏み外したのはこの2作品が元凶。当時の読書遍歴を思い出すと「ダブルブリッドで優樹さんが自分の目えぐるシーンやばい」「Missingの呪いのFAXの話こわくない?」「インフィニティ・ゼロの虫の描写やばかったほんとうにやばかった」とか言い出してなぜそんなに痛み描写の激しい小説ばかり読んでいたのか。
特にダブルブリッドと出会わなかったら今のライトノベル読みみたいな自分はいないとおもうので文字通り足を踏み外した感じすごいんですけど、身を切られるような傷みの描写と傷つけ合いながら必死に関わろうとする人間と人間でないものの生き様に震え、最終巻付近になったら年単位で刊行ペースが開くようになって震えたあの日。本当にウン年ぶりで完結してくれてよかったです……あと中村恵里加の新作のためにいまだに電撃の新刊チェックしてる。
学園異能はいいぞ
ダブルブリッドで道を踏み外して暫くたった私に襲いかかったのは学園を舞台に超常能力を持った生徒達が世界の裏で暗躍する系ラノベ。なんかこの呼び方にも色々異論があるみたいなんですが言いづらいので以後とりあえず「学園異能」っていいます。定義は個人の解釈です。まだあんまりラノベ感想を書いててもラノベ感想サイトは漁ってない時期なので表紙やあらすじで「おっ」となったやつを片っ端から買って読んでいくスタイルだったんですが、特に好きだったのはこのあたり。三上延先生は「ビブリア」で一発当ててしまいましたが電撃のオサナナジミスト系学園異能系が本当に好きだったので原点回帰してくれないかなあ……。
「レジンキャストミルク」は心に欠落を抱える少年少女達がその欠落を異能の力として戦うみたいなお話なのですが異能力から感じる華やかさ、痛みや物語と挿絵のマッチ感が本当に好きで、あと殊子先輩が大好きだったので色々察して欲しい。きるらぶは何度も脱落しそうになりながら追いかけた記憶が割と強いんですけど、刹那的な世界観となんだかんだでご都合主義爆発なハッピーエンドがとても好きです。
バカテスから先はまだ歴史にはなってないのでこの辺で。
それではアイドルマスターSideMの学園異能イベント走ってきます。
クオリディア・コード
約30年前、突如として地球に襲来した謎の異生物アンノウン。人類は総力戦で対抗、辛くも勝利を収めるが、現在も散発的な侵攻に苦しめられていた。東京、神奈川、千葉の各防衛都市では、固有能力“世界”を身につけた少年少女が、アンノウンと戦い続けていた。傲岸不遜な東京首席・朱雀壱弥と次席の宇多良カナリア。天然だが規格外の豪腕を誇る神奈川首席・天河舞姫と次席の凛堂ほたる。常にマイペースな千葉首席・千種明日葉とその兄・霞。戦いが日常となった世界で時に反発し、時に協力し合いながら過ごす朱雀たちだが、この世界には大きな秘密が隠されていた…。TVアニメ放送中の「クオリディア・コード」完全ノベライズ、第一巻!! (「BOOK」データベースより)
渡航が描く、TVアニメ「クオリディア・コード」本編のノベライズ。第一巻ではアニメ4話までの物語を収録。アニメだけでは分かりづらい部分の補足や、各キャラクターの心の動きがわかるのが嬉しかった。全シリーズ読破の上で読むと二度三度美味しい、まさにプロジェクトの集大成といえる物語。DVD付属のシナリオブックを読む限り、シナリオ段階ではあったけど尺の都合等で削られた部分も少し織り交ぜられているようです。
千葉組のもはや愛の営みと言って良いんじゃないのってくらいのイッチャイチャな戦闘描写が凄い好きなんですけど、まさに阿吽の呼吸で敵を屠っていく二人の姿を見ているとランキング二百位台の霞が千葉次席になるのはもう当然のことなんだなあと思わせてしまうこの説得力が凄い。明日葉は強いけど、その強さは兄とふたりでひとつの強さなんだよなあ。というか、要所要所で千種兄妹はイチャイチャしすぎで最高でした。神奈川組以上に戦場でイチャついてた!いいぞもっとやれ!
千種兄妹も最高に良いんだけど男二人のケンカップル模様が大好きな私としては霞と壱弥の関係も色々見逃せないというか、随所で巻き起こる軽口の応酬がいちいち本当に好き。しかし、改めて文字にされると本当に霞も壱弥もお互いが大好きだよねといいますか、壱弥が独断専行したときにそれを見越して準備してる霞の破壊力が高すぎるし、水着回で小型アンノウンを狙撃したときの口にせずとも伝わってる具合、本当は仲いいよねこの人達……。
時折挟まれる各キャラクターのモノローグが沁みる。壱弥はまだプレ小説での例の事件を引きずっていて、カナリアの存在でかろうじて自分を保ってるだけなんだよなあ……。そしてぱっと見で対称的に思える霞のモノローグをしっかり読むと、びっくりするほど壱弥と根本が同じなんだよなあ……。そしてカナリアのモノローグが本当にプレ小説から変わってないんだよなあ……。
カナリアが傷ついたことをきっかけに壱弥がやっと周囲を頼ろうとして、信じようとして、そしてカナリアのアレなんだよなあ……と改めて壱弥視点からの心象描写ありで物語を読むとやるせない。
あとがきによると「1巻」とのことなので恐らく2巻3巻があるのではないかと思われるのでとても楽しみなのですが、正直プレ小説千葉編の2巻もあるし「俺ガイル」の12巻も……でそろそろ渡先生の仕事量が心配になるレベル。どれも続きが読みたいだけに悩ましいよなあ……。ぶっちゃけ2巻は橘先生かさがら先生にバトンタッチでも良いようなきがするんだけど、どうなるんだろう。
最強喰いのダークヒーロー 2
異能武闘の伝統を土足で踏み荒らし、連戦連勝の快進撃を魅せる双士郎。彼の力を認める者も現れ始め、「阿木先輩って、かっこいいですね」序列六位のアイドル、神峰弓までもがファンと化し、双士郎に急接近。そしてチーム戦が始まり、序列二位率いる学園最強チーム『楽斗』が立ちはだかる―。最悪の男を滅ぼすため錯綜する無数の謀略。悪意の坩堝と化した学園で、しかし双士郎は不敵に嗤らう。「せいぜい後悔しない。『真剣勝負』の土俵に足を踏み入れたことをよ」外道VS外道。悪意対悪意。最悪の勝負師はアイドルさえも毒牙にかける。悪党をさらなる悪党が喰らう、痛快大物喰い、第2弾!!(「BOOK」データベースより)
「祓魔祭」の学内予選を勝ち進む傍ら、団体戦に向けてついに動き出したチーム阿木。期待の転校生のリザと序列一位のルイを擁するチームは注目を浴びる。そんな彼らのところに学園のアイドルにして序列6位の少女・神峰弓が接近してくる。彼女にもまた何か思惑があるようで……?
新しい仲間である弓と双士郎、決して優しくない世界で生きてきたふたりの駆け引きがたまらなく楽しい。アイドルとしての道を選んでしまったばかりに本当の実力を見てもらえなかった弓にとっては、双士郎達だけが弓を過小も過大もせずに正しく評価してくれた相手で。リザにせよルイにせよ嘯く中にほんのすこしだけ混ざった双士郎の本音を感じ取るからこそ、自分から仲間になってくれたんだよなあ。
個人戦主体だった前巻と打って変わってチーム戦主体の展開が飽きさせず面白かった。エグい手を使いながらもギリギリの一線は超えずに下克上していく様子が見ていて爽快ですらある。しかし、最後のアレだけは若干純粋(?)な青年を弄んだ感じ凄くて双士郎ごめんなさいした方がいい気が……いやまああれは悪には悪をみたいなあれなのでいいのかな……。
それにしても、ルイくんから双士郎の好感度高すぎてちょっと心配になるというかアニメイト特典が普通にルイ双でどういうことなの(※特典タイトルが「同類双求」な上に先生のこの発言なのだった。決して我々の勘違いではなかったのだった……。)対する双士郎の方も、けなすところがなくて「王子」呼びで笑うしかなかったんだけど、実際ルイくんにとって「王子」という一面は褒め言葉ではないとおもうのでけなし言葉として間違っては居ないのか。それにしても男が同級生の男に「王子」呼びするの面白すぎるけど。
という特典トラップは置いておいて、何かと全力で双士郎を持ち上げるルイとか、あとチーム戦初戦の始まる前のやりとりとか最高に良いので正直そっちの方向でもそっと推していきたい……女子の皆様よろしくお願いします(何を)
自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う
自動販売機マニアが異世界に「自動販売機」として転生。ダンジョンの中で佇んでいたところを金髪の少女・ラッミスと出会う。異世界のダンジョンの中にある街で「ハッコン」と名付けられ第二の人生を始めた彼を様々な問題が待ち受けていて……「小説家になろう」で連載されている小説の書籍化。
自分では動くことも喋ることも自由にできない(移動は基本的に相方のラッミス頼り)中、自動販売機に登録されている限定された言葉を使い、異世界には存在しない自販機商品の使い方をあの手この手で教え、街の人たちと仲良くなったりトラブルを解決していくのが面白かったです。
自動販売機に並べることが出来るのは主人公が生前に買ったことのある商品のみ。商品の陳列や生命維持には「ポイント」が使用され、そのポイントは商品を購入することで追加される。趣味と実益と生命維持を兼ねて商品を売っていくんだけど、名が売れるにしたがってポイントが増えて置ける商品の範囲が広がっていく。「自販機マニア」なだけあって出せる商品の種類が幅広く、次に何が出てくるかわからない。エロ本や○ンドームが出てきたのには思わず笑ってしまった。
商品を並べるための縛りの多さとか少しずつ商売の規模が拡大していくところとか、全体的にファンタジー世界を舞台にした経営シミュレーションゲームを見ているような感覚で、とてもワクワクしました。続巻の予定も立っているみたいなので、そちらも楽しみにしてます。
なろう版プロローグの、行き倒れてるおっさん達を華麗に救って商品買わせるラッセルとハッコンのシーンが個人的に好きだったのでそこが新キャラ幼女とのシーンにさしかわってしまっていてちょっと残念なのですが、やはり商業に載せる場合オッサンよりょぅじょなのか。ラッミスとヒュールミが普通にめちゃくちゃ可愛いから正直テコ入れするなら男子キャラ方向にテコ入れしてほしかったのに。それにしてもあとがきが重い。
はたらく魔王さま! 12
銀髪となった漆原の病室に集まった一同。皆の前で恵美の母親であるライラがこれまでのことを告白すると、勇者として、娘として、恵美の怒りが大爆発!過去の真相を知った恵美は、ライラとの大喧嘩の末に病室を飛び出してしまう。追いかける千穂と鈴乃だったが、二人は恵美を見失ってしまい…。一方マグロナルド幡ヶ谷駅前店では、新サービスのマッグデリバリーがスタート。レッド・デュラハン一号(店のバイク)で街を駆け巡る魔王も、母親と大喧嘩した恵美のことを気に掛けていた。庶民派ファンタジー、混沌の第12弾!勇者と天使の壮大な母娘喧嘩に挟まれて、魔王さま大ピンチ!? (「BOOK」データベースより)
母・ライラの話を聞き、怒りを露わにする恵美。彼女だけでなく、真奥も非協力的な態度を貫いていた。エンテ・イスラを巡る状況が膠着する中、マグロナルドではいよいよデリバリーサービスがスタートして……?
復活した途端、自然に「お隣さん」の位置に収まってるガブリエルと、デリバリーが始まったのを良いことに大量注文で木崎さんを呼びつけるサリエルに笑ってしまった。ライラといい大天使勢がフリーダムすぎる。そして大天使側以上に人間世界に馴染みすぎなやりとりを繰り広げる芦屋と漆原のやりとりが微笑ましすぎて笑うけど本当にそれでいいのかこの人達。
前巻から引き続きエンテ・イスラに関する様々な真実が明かされて、その一方で恵美の元後輩の清水真季や真奥のマグロナルドでの同僚・川田など、今まで殆ど描かれてこなかった周囲の人々の姿が鮮明に描かれているのが個人的には凄く面白かったです。恵美はなんというか……むしろ女子にもてるタイプですよね…。
恵美親子の不和をきっかけに、これまで見据える暇もなかった“未来”のことを考える恵美や、そんな彼女の姿から自分の将来を考える千穂の姿が印象的でした。千穂の進路の話は色々胸に刺さるけど、大人になってみると真季が語るその進路選択の仕方は凄い納得できるなあと。
これまでの「かつてのサタンを導いた大天使」のイメージが強すぎるせいもあるんだろうけど、自分が表舞台に立たず事態を裏から動かして窮地になればサタンやエミリアを頼り、ふたりに拒否られてノルドの背中で涙目になってるライラには「これはエミリアもキレるわ」としかいえないんだけど、サタンの考えを聞き、サタンの「やり方」に合わせた形で攻め方を変えてくるあたりには流石に年の功を感じるというか本当に図太いなこの人……恵美は強く生きて欲しい。
ラブコメ的には空前の恵美回で、勇者の挟持とか色々見失いがちだった上に突然の母の登場と、母の側に立つ父の姿に目的も見失う恵美のデレが可愛すぎて凄いんだけど、これで恵美が真奥への好意を自覚してしまうとラブコメ的な意味でどう転がってしまうのか。アニメのおかげで千穂ちゃんの百面相が目に浮かぶようで微笑ましいけどほんとこれは先が読めないな……。
どうでもいい 世界なんて -クオリディア・コード-
正体不明の敵<アンノウン>によって、世界が崩壊した近未来。今も<アンノウン>との戦争を続ける防衛都市・千葉に暮らす千種霞は、今日も今日とて「終わらない残業と不毛な営業」と戦っていたーー。成績不振により天然系うっかり女子の蓮華と共に戦闘科から生産科へと出向させられた霞を待ち受けていたのは、しっかり者の上司・朝顔が仕切るブラックな職場環境。TVアニメ放送中の『クオリディア・コード』の「千葉編」前日譚、完全書き下ろし小説として登場! (レーベル公式サイトより)
正体不明の敵性体・通称アンノウンの侵略により壊滅的な被害を受けた世界。戦争中にコールドスリープに入った子供たちは、スリープ中に次々と“世界”と呼ばれる異能力に目覚め、アンノウンに対抗する力を手に入れた。戦争はいったん終結という形を取ったが引き続きアンノウンの侵攻は続いた。関東には東京・神奈川・千葉に3つの防衛都市が築かれ、そこでは能力を手に入れた子供たちがアンノウンと戦っている。(以上東京編の感想ry)
舞台は防衛都市・千葉。華形である戦闘科に入ったものの成績の振るわない千種霞は同僚の榴ヶ岡蓮華とともに生産科への出向を言い渡される。そこで待っていたのは上司からの理不尽な要求と無茶なノルマをつきつけられるブラックな職場環境だった。そんな中で、霞は生産科のトップ・鶴瓶朝顔が語る「新しい世界」に少しだけの期待を見出すが……?
あらすじと世界観は近未来学園異能SFだけど8割社畜ラノベだーー!?千葉メンバー特有のインテリヤクザ感とか、登場人物及びやってることの「高校生らしくなさ」とかが、余計社畜ラノベ感高まってしまう。むしろこいつら学生だっけ??って考え始めるまである。
選挙というシステム自体はあるものの、戦闘科のトップが首席を兼任する時代。生産科という存在を自らブランディングし、地位の向上を目指そうとする朝顔のひたむきな努力と、その本心を知り、力を貸そうとする霞や他の生産科のメンバーが一丸となって行く姿が印象的なのですが……まあ上しか見てないと足元掬われるよな。これだけ周到に根回ししていて、すぐ近くにあった小さな悪意みたいなものに気づけ無いのがなんだかやるせない。
東京編の悪意は割りと選民思想にコーティングされてるぶんそこそこむき出しだった気がするのですが、千葉編は東京編とは違った意味でどろどろしてるな…。表面上は取り繕いつつ水面下での腹芸と纏わりつくような悪意の応酬が凄かった。神奈川編は腹芸とか全部幼馴染百合で吹き飛ばすやつなので癒やしだな……ヒメかわいい(思考停止)。
千種兄妹のさらっとしつつも、いざとなるとお互いを立てあってる関係性が好きでした。表面上何を言ってても明日葉は霞のこと大好きなんだよな……。霞もなんだかんだ言いながら、「妹に釣り合う自分」になろうと努力していて、それでも自分とは関係ない部分でそこに届かないもどかしさを感じているのが印象的でした。逆に、だからこそ「妹の足枷にはならない」と言い切る霞が自称「妹の七光り」で千葉次席をやってるアニメ版にどう繋がるのか、とても気になる。良くも悪くもアニメの副読本的な役割も果たしているシリーズなので、早めに続きが出ると良いなあ。
しかし、アニメ版で成績やランキングなど気にしないと嘯く霞だけど、少なくても千葉編の1巻時点ではめちゃくちゃ気にしてるよね。というか、まあアニメ版も気にしてなかったらあんな微妙な順位即答出来る程度に覚えてないよね……霞が壱弥の事好きじゃないの、別に壱弥が出て来るわけでもないのにこれ読むとひしひしと伝わってきて萌えます。
クズと金貨のクオリディア
底辺高校生・久佐丘晴磨と、天使のような後輩・千種夜羽。同じ階層にいられるはずのなかった二人は、とある偶然をきっかけに接近してしまう。異常気象、異常現象、異常行動…少しずつ歯車が狂いだしていく二人の日常と奇妙な都市伝説。曰く「ランダム十字路」―真夜中、突き当たったT字路で誤った道を選ぶと、二度と帰ってこられない。行方不明の女子をなりゆきで一緒に追うなか、晴磨と夜羽の思惑は大きくすれ違い…!?レーベルを越えて広がる新世代プロジェクト第一弾!これはふたつの視点から紡がれる、終わりゆく世界とめくるめく青春の物語―。(「BOOK」データベースより)
友達いない底辺高校生・久佐丘晴磨はとあるきっかけから後輩の美少女・千種夜羽と出会う。半ば脅されるような形で行方不明になった彼女の“友人”を一緒に探す羽目に。見え隠れする“同業者”の姿と、「ランダム十字路」なる都市伝説の噂。事態は二人の想像もしなかった方向に転がっていって……!?
プロジェクト・クオリディアのアニメ・小説世界の更に前日譚となる物語。旧世界が<アンノウン>の襲撃によって終わりを迎えるまでの姿が物語の幕間幕間で示唆されつつも、そんなことは全部うっちゃってサイコパス美少女とやれやれ系男子高校生の奇妙な関係性を描く物語です。
わたりん節全開な晴磨のとりとめのない一人称と、さがら総が描くどこまでもクレイジーでサイコパスな夜羽の一人称がキャッチボールという名の相互壁打ち(決してお互いにボールを獲り合ってはいない)やってる感じが、めちゃくちゃ読んでて疲れるけどクセになる。最初から最後まで一貫して噛み合わず、思考はどこまでもあらぬ方向に脱線しながら、それでもつかず離れず寄り添うように進んでいく展開が面白い。
夜羽側の家庭の事情やこんな性格になった一端もそれとなく明かされるのですが、晴磨がそういった事情に絆されるわけでもなく、「お前はクソ女だ」という思いが最初から変わることはなく。それでも「一目惚れだ」って言ってしまうのが本当に凄い。最初から最後までどこかすれ違っていて、それなのにラストは本当にびっくりするほどラブラブで……唐突に終わる世界と、晴磨と夜羽ふたりだけのとびきり甘くて閉じたセカイが同時に描かれていくのが印象的でした。その後ふたりがどうなったのかどうとでも解釈できる、アニメのCパートのような終わり方が最高に好き。
「千種」「朱雀」「天河」「凛堂」とその後のクオリディアの中心となるメンバーと同じ名字が登場して、明確な示唆はされないんだけど彼らの“親世代”の物語になるのかな(特に朱雀に関しては壱弥が『父親が生徒会長だった』といってるのでほぼ間違いないとは思うけど)。晴磨と夜羽の物語には全く関係ない、各章の扉から描かれる旧世界の終わりの姿が、クオリディア・コードの3作品とアニメ4話までを踏まえると明確な形を見せてくるのが色々想像できて楽しかった。関連作品を知らずに読んだら全く違う感想になったと思うので、最後に読んでしまったのが少しもったいなかった気がする。
それにしても、カナリアの名字だけが登場しないのは意図的なモノを感じてしまう。明かされない彼女の『夢』といい、何か秘密がありそうだしなあ。