魔王城一限目 | 今日もだらだら、読書日記。

魔王城一限目

 
朝未

司令官に逆らい、ド田舎に左遷された軍人のエイゴ。彼を待ち受けていた任務は、何と魔王の申し子と呼ばれる歩く災厄―「魔人」たちの先生役だった!異形の身体と、生まれた瞬間に村ひとつ消し飛ばす魔力を持つ魔人。事実そうしていくつもの村を消滅させ、命を奪った存在を相手に、この自分が先生役!?と動揺するエイゴ。けれど、彼らの姿を知る中で、エイゴはある決断をすることに―。残酷な世界に抗う青年と子供たちの、痛みと優しさの物語、開幕。(「BOOK」データベースより)

「吉永さん家のガーゴイル」の田口仙年堂さんの新シリーズ。家族を"魔人"の暴走によって失い、軍人となった熱血直情型の青年が"魔人"の子供たちと出会うというお話で、「ガーゴイル」とはうってかわってかなりシリアスな雰囲気のファンタジー作品です。

熱血で直情的で一見ちょっと子供っぽいエイゴがその一方で着実に人間不信気味だった"魔人"の子供たちを手なずけていく手段が実に巧妙で、そのギャップが非常に魅力的。とにかく次の行動が読めないキャラで、エイゴが次に何をやらかすのかとワクワクしながら読み進んでいきました。子供たちに悪戯を仕掛けられたら「悪戯は楽しいものだと教える、でもそれはそれとしてちゃんと叱る」というような、柔軟な姿勢が面白かったです。子供たちだけではなく、"魔人"への偏見や恐怖に縛られてしまっている部下・バズのわだかまりも少しずつ解いていってしまうのだから凄い。天職としか思えないエイゴの先生っぷりから目が離せませんでした。

しかしその一方で、魔人への差別の問題や戦争中という時代背景もあり、エイゴたちにはしょっぱなから残酷な事実ばかりが降りかかっていきます。「ガーゴイル」で言うと9巻・10巻の頃の雰囲気に近いものがあるかも。あれを読んだときにも思いましたが戦争という存在のおぞましさとかその中で必死に生きる人々の描写がとてもリアルで、重い。自然に「戦争って嫌だなあ」と思わせてしまうような何かがあると思う。

ただ、救いの無い展開の中でも根底に流れるどこか優しく暖かい雰囲気があって、それがとても心地よかったです。ガーゴイルやコッペもそうだったけど、敵にも味方にも基本的に「悪い奴」がいないんですよね。魔人たちは好きで魔力を暴走させるわけじゃないし、軍人達にしても妙に人間味溢れていて、憎む気持ちになれない。ああ、でも、子供たちの不幸な境遇に対する怒りをどこにぶつけたらよいのやら…心はぽかぽか暖かいけどとてももどかしい!!責任転嫁できる悪役が居ないのが地味にもどかしい!!

子供たちを守ると決意したエイゴたちの前にはこれからも様々な困難が立ち向かっていきそうですが、どんな奇策でその困難を乗り越えていくのか、とても楽しみです。二限目が楽しみ…!!

ああ、その前にガーゴイルおるたの続きよまなきゃ…(と1月の刊行予定見てちょっと思った)

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