シリーズ第6弾はずっと胡蝶の宮のターン!!胡蝶の宮が雪国(ニセ舞姫)と蜜を巻き込んで繰り広げる許婚騒動と舞姫と芝目達SECが請け負っていた依頼が絡み合って意外な展開を見せていくお話。
誇り高い“蝶間林家の長女”“ローズ・ロワイヤル盟主”としての胡蝶の宮と、健気で一途な普通の女の子としての蝶間林典子の間で揺れ動く彼女の姿がとても素敵だった。また、思い悩む彼女の心情がビシバシと伝わってくるだけに全てをふっきった終盤の彼女の行動には胸が熱くなるものがある。
こういう状況で出てくる許婚って悪役が多いというか自分の中ではそんなイメージがあるんだけど、ちょっと手段を選ばない部分はあるものの純粋に一途に胡蝶の宮を思っての結果ちょっと暴走しちゃってるだけの人、というキャラクター設定が個人的にはかなりニクイなぁと思った。スペックは雪国よりも数段上・性格的にも悪くなく、雪国と違って自分のことを愛してくれるという藤ノ原剣と、振り向いてくれるかもわからない雪国を天秤に掛けて、それでも雪国を取るという選択は彼女の中ではどれだけ大きい事か。大きな何かを振り切って、それでも自分の進みたい方向にまっすぐに歩いていく彼女の姿がとてもまぶしかった。
そんな彼女の活躍の裏で、蜜と鳥子が仲良くなったり…とまた新しい関係が生まれてきているのも事実。蜜も恋愛対象として“雪国”を意識し始めた描写が増えてきて、思わずにやりとしてしまいました。そして芝目あんた……そこでコクらなくてどうするんだっ!!!
ラストで不穏な伏線が貼られたことだし、次回はいよいよ雪国と蜜の関係が進展するターン?続きがとても楽しみです。
そしてシリアスムードをぶち壊す後書きのフリーダムっぷりに噴いた。
っていうかそろそろ「新異装戦士SH@PPLE」が文庫化してもいい頃のはず。
「学園キノ」的な何かっぽい感じで、外伝小説出せばいいよ!!
▼ 最近の記事
真・運命のタロット2 《正義》は我にあり
[著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉 “改変”を起こそうとする《教皇》達と対峙する《女教皇》と《魔法使い》。《教皇》達は“改変”を起こすためにゴーリキー教授を狙うが、ゴーリキー教授は自らの研究成果によって生み出した“虚数強化体”を使って、彼らに立ち向かう。どうやら、彼は『運命のタロット』の誕生に深く関わる事になる人物らしくて…… |
1983年に戻ってきた《女教皇》と《魔法使い》や《愚者》達との会話を聞いてると、じわじわ来るものがある。彼らへの態度はまだしも、本来の“彼女”の身近な人々であったはずの片桐先輩や佐倉くんやら安西さんやらにも余所余所しい言葉を使う姿に違和感を感じざるを得ないというか、序盤の平和な学園ラブコメっぽかった頃を思い出すと無性に切なくなる。そして、ますます「女教皇」から「教皇」の間で起こったであろう一連の出来事に関心が向いてきます。《女教皇》に転写されるまでの間に、もう一度でもいいからかつての学友たちと会話する機会があったんだろうかとか、そんなあたりが。
しかし、漸く舞台がかつての場所に戻ってきたというのに一難さってまた一難。《死神》とその協力者が二人にフェーデを挑んできて…って飛ばされたのはよりによってあの時代ですか!特に死神の協力者である“彼女”の出番はあそこで終わりだと思っていたのでびっくり…って、よく考えたら時間を自由に遡れる物語である以上未来で退場したくらいで出番がなくなるはずないのか。ある意味運タロで出てきた《太陽》コンビよりもラスボスっぽい二人組みというかなんというか…。
シチュエーションや状況的にはどうしても「神の家」で明かされたあの《魔法使い》の過去話への導線か!?と思ってしまうのですが、あの物語で登場したときの《女教皇》と《魔法使い》に至るには、お互いに様々なピースが欠けている様な気がするし、お互いの勢力も正反対だし…うーん……一体これからどうなるの!?とりあえず続きがとても楽しみです。
《正義》は良いショt(強制終了)
猫耳父さん
「週刊アスキー」の連載小説をまとめた表題作に、書き下ろし短編を加えて文庫化した作品。
38歳の猫耳オヤジというインパクト猛烈なミスマッチぶりに惹かれて手に取ったのですが、主人公である賢一郎の猫耳姿というキモさを存分に活かしつつ、それでいて物語本線は父娘の心の交流にペットを絡めたハートフル・ホームコメディという、いろいろな意味で奇跡的なバランスの作品でした…元が非ライトノベル雑誌で連載されていた作品という特色からか、サイズが小さい挿絵が大量に挿入されていて、どんどん挿絵でイメージ補完してくるのが素敵です。そして挿絵の回数が多い分、思う存分猫耳親父のキモイ姿が描かれているところがとても好印象でした。特にラノベだと、こういう萌えを狙えない挿絵は優先的にカットされる傾向がある気がするので…。
その一方で、『愛猫の死』と『父親の萌えキャラ化』という“事件”をきっかけに、すれ違っていた父娘の心が少しずつ近づいていく姿が丁寧に描写されていて、家族モノとして普通に良いお話でした。特にネーの火葬前後の父娘のシーンはなんともいえない寂寥感があって、そこに1Pまるまる使った挿絵が非常に良く映える。終盤では燃え展開もあって、そしてさりげなく泣かされました…。
同時収録の「未来の世界の犬型ロボット」は、高名な科学者の父親を持つ娘と、彼女が父親からプレゼントとして貰った犬型ロボット・“宇田川さん”のお話。こちらも形は違いますが不器用な父親と娘の関係に犬(ロボットだけど)を加えた家族モノで、短いながらもきゅんとさせられるお話でした。
家族モノとかが好きならこれは読むべき!そして父親のキモい容姿に惹かれて買っても割と損はしません。オススメ!!
GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン2(上)
[著]川上 稔 [絵]さとやす(TENKEY) 末世救済の鍵となる少女・ホライゾンを奪取した航空都市艦“武蔵”の面々は、次の大罪武装の譲渡を求め、聖譜連合に属していない英国へ向かう。しかし英国は三征西班牙(トレス・エスパニア)と『アルマダの海戦』の歴史再現を行う準備を始めていて…… |
英国と三征西班牙、双方の総長連合や生徒会メンバーが勢ぞろいして、キャラクターの把握だけで手一杯感が……まだ武蔵国内のメンバーの把握も結構ぎりぎりな感じなのに、新キャラが出る度に最初のキャラクター紹介に戻って勢力を確認するという状況が続いてました。うーん、各国2桁ずつキャラが増えていくので、相対するならせめて1国ずつを相手にしてほしいなあと思ったり……キャラクターを把握するのに、1巻上を読んだときよりも手こずったかもしれない。
一方で前巻でイマイチ目立ってなかった武蔵の面々がどんどん個性を露わにしてきて、彼らの突拍子のない行動にとてもニヤニヤしました。っていうか点蔵大躍進すぎる!忍者言葉とかからテンプレ的レギュラーモブかとおもっていたら、今回主役級の活躍でニヤニヤが止まらない。いいなあ、忍者いいなあ!!
そしてナルゼさんとお友達になりたいです。黒魔女同人作家!!
ナルゼと同じ所でネシンバラ×トーリという電波を受信した。
1巻からのメインキャラでも、「滑りキャラ」としてどんどんかわいそうな扱いになっていくセージュンとか、クールで激しいツッコミ(※対トーリ専用)が愛らしいホライゾンさんとか、マジボケキャラとして着実に成長する二代さんとか、そしてなぜか地の文で固有代名詞が「全裸」になるくらいに変態的な方向で個性を獲得した主人公など、素敵に変態的(褒めてる)なキャラクター達がたまりません。つか、全裸も酷かったけど紙芝居の破壊力半端ねえ。
英国との本格的な対峙は下巻に持ち越しですが、過去に何かありそうなシェイクピアとネシンバラの因縁の対決がとても気になる。トーリとホライゾンのデートの行方がどう転ぶかも楽しみです。……しかし、下巻は1250円って、あの「終わりのクロニクル7」と同じ値段か……。
それにしても普段はギャグ担当な葵姉弟が、いいところになると美味しい所を片っ端から浚っていくからほんと困る。
特に終盤での喜美姉の言葉にはシビれすぎた。
マテリアルゴースト
「生徒会の一存」シリーズの葵せきなさんのデビュー作。死にたがりだけど実際にその勇気は持ち合わせていない、“自殺志願”の主人公が美少女幽霊やら幼馴染の巫女娘やらちょっと変人な先輩やらに囲まれてラブコメったり自殺しようとしたり悪霊にモテたりするお話(違)です。
個人的には、回りくどい文章がイマイチ性に合わなかった。「戯言」のいーちゃんや「みーまー」みーくんも同じ理由でとても苦手なんだけど、思考そのまま垂れ流しというか余計な情報が地文に多すぎて、それが少々うざったく感じる事が…まあこの辺は好き嫌いの問題なんですが。
一時ラノベ感想サイトで話題になった主人公の性格については、ちょっと精神的に病んでる部分はあれど、根っこは基本的に中二病作品によく存在する「周囲の迷惑省みず自己犠牲になろうとして終盤で仲間に説教されるタイプの主人公」という範疇にギリギリおさまっているように思えました。ただ、このタイプが得てして抱え持つ病的な部分が悪い意味で強調されているので、ものすごく好き嫌い別れるかも。あと、この後の展開をある程度ネタバレで聞いているので許せるという部分はあるかな。前半のだるだる空気から一転、やたらと熱血王道な後半の展開+蛍が後でそんな自分を思い返して悶絶するエピローグは結構好き。
戦闘描写では「霊体を物質化する」という蛍の特殊能力ゆえの強み・弱みが存分に生きてくるのが興味深い。「霊体を強制物質化=霊体(魂)を自分の攻撃として使うために外に出したら外で勝手に物質になっちゃうから、使った後戻せない」とか良く考えてるなあ、と思った。しかし、この調子で霊力使いまくってると、そのうちどっかのバイトで魔術師やってるラノベの主人公みたく自滅しそうだな…。
それにしても、つくづく思った。
葵せきなのラノベで一番「非日常」なのは女子高生の制服のデザイン。
こんな美少女じゃなかったら全力で似合わないような洋服を学校の制服に指定されたら、発狂するわ!!!
NO CALL NO LIFE
まろんさんに背中を押されて、7月末の文庫化を前にいまさらながら読んでみた。発売日に買ったまま3年弱積んで熟成してたのは内緒だよ!
過去のとある出来事のせいで心に深い傷を持つ二人・有海と春川が織りなす、今にも擦り切れそうな青春と恋の物語。不思議な留守番電話を巡るミステリーっぽいお話を想像していたら、ものすごく青春でサツバツで病んでました。そうかこれは退廃的といえば良いのか…(←最後はざっと感想サイトを巡っての感想)
有海と春川が少しずつ近づいて行き、とある事件をきっかけに同棲するようになるのですが、読んでいる方には明らかに終わりの見えてしまっている二人の刹那的な幸せがなんともやるせない。もちろん当人達にもこの生活を長く続けられないことは判っているはずなのですが…「無敵になった気分」「怖いものなんて何もない」と根拠なんか何もない万能感に満たされている二人を見ると、ますますやるせなくなってしまう。
「欠落を埋め合っているような気がする」という言葉とは反対に、同じ場所にある欠落をただ舐め合っているだけの二人の姿を見ると作中で有海の従兄が言うとおり正直「一緒にならない方が良い」二人ではあるのだけど、あまりにも幸せそうな二人を眺めていると、“こういう形もありなのかもしれない”と思ってしまう不思議。でもやっぱり、二人の関係を見ているとその先には“何もない”のが判ってしまってなんともやるせない気分になってしまいます。
ラストは、ある意味ベタな展開だとは思うけど泣いた。
もっと本当の意味で幸せになった二人の姿が見てみたかったけど、心に残るエピローグでした。
真・運命のタロット1 《教皇》がiを説く
新展開で送る“運命のタロット”シリーズ第二幕。《教皇》とのフェーデの最中に起きたアクシデントで記憶を失ってしまった(らしい)《女教皇》がかつて知り合い達に偶然保護される…というお話。13巻のラストから続くのかと思ったら、プロローグが予想外の展開過ぎた!しかもライコが既に○○○○○になってるし!!新しいタロットの精霊や曰くありげな人物がばんばん現れて、気になるのなんの。前巻からこの物語に至るまでの空白期間に何があったんだろう。気になりすぎる。
それにしても学園異能系ラブコメ小説だったかつてのノリはいずこに……あとがきでホワイトハート移籍の噂もあったということですが、正直かつてのティーンズハートからは想像も付かないほど難しいお話が展開されてます。「虚数意識論」とか、高校時代に数学落第寸前だった私としてはとてもわけがわからなかったんだぜ…っていうか“虚数”とか普通に習った事さえ覚えてなかったんだぜ……初期のドタバタキュンキュンラブコメ時代もあまり得意ではなかったけど、ここまで跳躍されると逆にあの初期のノリが懐かしくなってしまうのはなぜだ…!!もうライコは学生には戻らないのかなあ…。
ラストはとても重い展開に。まだ記憶を取り戻していないライコにとって、荒サンと織藤さんと島津は唯一といっていい「身近な人」だったわけで、彼らを助けようとした結果として拒絶されるというのは痛かっただろうなぁ……。
EVE TFA—亡き王女のための殺人遊戯
[著]桜庭 一樹 [原作]C's Ware うだるような真夏の昼下がり、ふとしたきっかけで天城小次郎が知り合った不思議な少女・セシル。本屋と喫茶店、それっきりの邂逅だと思っていたがその晩彼女は小次郎の探偵事務所に依頼を持ってきて…。一方、小次郎の元恋人・桂木弥生の元にはとある少女を探してほしいという依頼が舞い込み…。 |
小次郎・弥生の両視点から別々の依頼を操作しているうち、“殺人遊戯”と呼ばれる連続殺人の核心部分へとつながっていくという辺りはゲームと基本的に同じ流れ。以前読んだ「EVE ZERO」ノベライズは原作の「マルチサイトシステム」の特性を無理に小説に持ち込んで時系列がわかり辛いという状態になっちゃってましたが、今回は基本的に時系列順に物語が語られるので凄く判り易い。
特に、小次郎と弥生の邂逅が両視点から見れるのは面白いなあ。小次郎が「弥生が追いかけてくるような気がした」と語ったのと同時刻、弥生が本当に小次郎を追いかけようと動き出していたり…と二人のすれ違いやシンパシーがもろに伝わってくるのが面白い。というか桜庭さんは本当に弥生好きだね!小次郎に今も心囚われ続けてもがく彼女の心理が痛いほどに伝わってきます。
今回のゲストキャラで物語の鍵を握る少女・セシルのなんともいえない妖艶な無邪気さみたいなのが物凄い印象に残った。掴み所のない蝶のような少女ってこういう事を言うんだろうなあ。
まりなさんの出番が必要最低限に絞られているため、まりなファンの私としてはそこだけとても残念だったのですが、ラストは彼女が美味しいところをまとめてもっていってくれるのでとてもニヤリとする。エピローグでの小次郎との同性の友人のようなさっぱりした会話も好きだなあ。しかし何度読んでもこれ、オチが色々と酷いwww
夏コミ当選しました。
夏コミ当選しました!
スペースは8/16(金)西1ホールむ-18a 「CELESTE BLUE」となります。
また「バカとテストと召喚獣」でギャグ本とか出す予定。新刊入稿したら告知ページ作ります。
ついでに、これまで発行した同人誌のリストを作成したのでよかったらどうぞ。
通販もまだ受け付けてます。
こちらからどうぞ。
運命のタロット13 《女教皇》は未来を示す
[著]皆川 ゆか [絵]乱魔 猫吉 《魔法使い》への気持ちを自覚したライコは、坂崎と戦っている彼を助ける為に《女帝》とのフェーデを受ける事を決意する。ところが、彼女とのフェーデで提示された“改変”の内容は、ライコにとって思いもよらないものだった。“改変”を阻止するか、躊躇ってしまうライコだったが… |
大河と大河兄の関係とか、ライコ&《女帝》&《女教皇》の関係とか、おおむね予想したとおりだった。しかし、未来の唯との別れや《女帝》とのフェーデの場面は本当に胸に痛かった。大河兄があの時代に存在したという事は……というのは予想できていたけど、ライコ・大河・唯の報われない一方通行の姿が凄く悲しい。大河兄の名前も、いざ物語のキャラクターの言葉として聞かされるとまた全然重みが違う。しかし、唯の物言いから言うと、ライコがあの時点で消えてから13年間一切会ってないような言い方に思えるのは気のせいかしら。《女教皇》の事を考えると、どこかの時点で……というのは間違いないとは思うのですが。
《女帝》とのフェーデの内容も、これまで「誰かを救いたい」という形で“改変”を食い止めていたライコにとっては、その逆に回らなければいけないという事はこの上なくつらいことで……でも、ある意味それが致命的な形となって彼女の前に提示されるような形になるまえに自覚出来たのは不幸中の幸いというべきなのか。今後ティターンズのやってることの一端を知ったライコがどう動くのかも気になる。
ラストで漸くライコと《魔法使い》、二人の思いが通じた……と思ったらこういう形になるのか!!《女帝》の最期を見ていると、ある意味この後のライコが辿る道は読者には見えてしまっているわけで、第二部ではイチから二人の関係をリセットして、待ち受ける運命を“改変”していくような方向になるのかなあ。第二部の物語がとても楽しみです。