[著]伏見 つかさ [絵]かんざき ひろ 何かと喧嘩ばかりしている桐乃と黒猫。沙織の提案でお互いの好きなアニメの鑑賞会を桐乃の家で開くことになったのだが、家に帰ってきた京介を待ち受けていたのはすっかりヘソを曲げた二人の姿だった。理由を聞いてみると、元凶はお互いの書いた“小説”にあるらしく… |
というわけで、イマドキの女子高生なのに隠れエロゲオタの妹に振り回される一般人の高校生・京介のお話第三弾。今回は突如ケータイ作家デビューしちゃった桐乃と実はワナビな黒猫さんのお話。箸休め(?)の幼馴染と京介の話がよい具合に癒されます。自宅だとちょっとだけダイタンな麻奈美可愛いよ麻奈美……
やはり二次とはいえ、創作をする者として面白かった…というか興味深かった…というか身につまされたのは(どれだよ)、京介と黒猫がとある事情から桐乃のために電撃文庫編集部に持込をする、というお話。ある意味、努力はするけど基本天才肌の桐乃vs実はかなりの努力型の黒猫の決して相容れない部分が見え隠れしたというか。それでも最後の最後で腐らず、桐乃の味方になってくれる黒猫がかっこよかった。素直じゃない言葉の裏に、紛れも無く桐乃への“友達”としての気遣いが見え隠れしていて、それがとても可愛らしかった。
なんかしかし、今回はなにより最後の編集さんの言葉が凄い心に響いた。
確かに、上手いとかヘタとか置いておいて、作者の描きたいって気持ちが溢れるように伝わってくる作品って、確かにあるよね。技術的な部分は何も考えず、ひたすら楽しんで描いた絵のほうが後で見直すと気に入ってたりするんだよなぁ…
僕が思うに、『その人にしか創れないもの』というのは一人一人必ずあって、それには多くの人に感銘を与える力がある。ケータイ小説のみならず、同人誌や同人ゲーム、WEB小説、それにニコニコ動画やpixivに投稿されているような作品群を含めてもいい。——そういったアマチュア作品全般には、作者固有の『創りたいもの』が、剥き出しのまま転がっていることが多い。商業作品として研磨されると消滅してしまう類の面白さがそのまま残されている。まさしくケータイ小説のように、アマチュア的な良さが活かされた商品を創ろう——そういうビジネスモデルが成り立っていることこそが、ときにアマチュアがプロを凌駕しうることの証明ではないでしょうか。
しかし、最近すっかりオタクがイラスト探すための必携ツール化してきたpixivはとにかく、Twitterはまだまだ一般で通じる単語ではないと思うのですがそのへんどうなのか!いやまあ、この小説のメイン読者層はおそらく「アキバblog」や「かーずSP」を愛読する猛者ばかりなのだろうから、いいんだろうけど、でも…!!!イヴの行動がついったー経由で筒抜けだったというネタが、あまりにも生々しすぎる…!!!
さてさて、桐乃の「最後の人生相談」という言葉が示すとおり、次の巻でターニングポイント?しかし短編集?どっちなんだ…!明らかに何か秘密を隠してそうな「沙織さん」の正体も気になりますし…続きがとても楽しみです。