入れ替わり、人気投票、8年後、兄思いの弟など色々な意味で隙のない短編集5冊目。正直、玉野さんが予想以上にデカかった(まさかの翔子以上)ことが最大の衝撃だった気がします。人気投票がいろんな意味で予想GUYでしたけど確かにそんな話、10巻のあとがきでやってましたね!予想外だよ!!順位はよそうとおりだったよ!!明久泣かせたい。
僕と兄さんと謎の抱き枕
物語の欄外で色々とアレな目にあっていた久保君の弟・良光が文月学園に学校見学に行くお話。兄の抱き枕の相手(=明久)を知るところから始めようとFクラスに赴いてリサーチをかけていくうちにいつもの面々に振り回されて、彼の中の明久像が捻じ曲がっていくのが楽しすぎました。外部の中学生にも色々と容赦ないFクラスの面々も面白かったけど、良光のクラスメイトだったムッツリーニ妹の陽向が可愛すぎて生きるのが辛い。っていうかまさかの弟妹同士のラブコメ展開が可愛すぎて死んだ。
これだけ自分がクローズアップされた短編なのに最後しか出番ない久保君の歪みなさ……たった1日で微妙にあの空気の中に染まってる弟の様子を見てどこか暖かく見守ってる久保君の姿がなんだかとてもツボだったのですが、その後の久保兄弟の喧嘩とか色々な意味でみたかったです。そして間違いなく玲と葉月の次くらいに生徒の兄弟では存在感のあるキャラで、これだけ出番あったのにイラストでの出番をムッツ妹にもっていかれる久保君弟マジ久保君の弟…。
僕と雄二と危ない黒魔術
FBオンラインで先行掲載されて物議をかもしだした略。翔子の所持していた黒魔術の本の不思議な力で明久と雄二が入れ替わってしまって……!?からはじまる珍騒動。明久と雄二が「俺の身体」「僕の身体」いいすぎなのはわざとなんですか玉野さんホイホイすぎて玉野さんと一緒に小躍りするレベル。
雄二っぽいふてぶてしいいやらしい笑顔の明久とか想像するだけで萌え転がれるんですが、アキちゃんのこととなるとリミッター外れる玉野さんの暴走っぷり凄すぎてもう笑うしかない。そして案外不意討ちに弱い雄二の怯えっぷりが可愛すぎました。
中身姫路さんな雄二とか、終盤の美波in雄二と玉野in明久の喧嘩の前口上とか普通に挿絵つきで見てみたかったんですが……今回は全体的に挿絵が女子萌えメインでしたよね……。
僕と未来と召喚獣
今回のババア長枠。どういう形で召喚されるのかとおもったけど、召喚者の未来をシミュレートして、その自分と会話したり出来ると言うシステムでババア長マジ存在がSF。
大人の余裕を身につけた25歳明久がただのイケメンすぎてもれなく死ねる。挿絵も含めて酷い破壊力だった。25歳ムッツリーニはあれわざと過去の自分を煽ってるようにしか見えないんだけど、あのメールを見た工藤さんの感想が私気になります。あと、秀吉の性別不詳は多分過去にDメール送ると関係ない内容で世界線変動起きても性別が変わるとかそういうレベルなんだと理解。そして25歳雄二がまさかの全○……原作が常に私たちの斜め上を行き過ぎて雄二……
それにしても、未来の美波&美春の設定が正直おいしすぎてあれだけで番外編出して欲しいレベル。そして久保君マジゆがみない……
私とウサギと仄かな初恋
姫路さん視点から描かれる、明久と姫路さんの小学校時代の初恋話。明久が普通に隙のないクラスの人気者でビビる。周囲に気配り出来てスポーツ万能で愛嬌あって顔も悪くなくて女の子にモテモテだがいい感じに男子の恨みも買ってないとかなんですかどういうことなんですか。高校生時代よりも小学生時代のほうが間違いなく頭よさそうに見えるんですが彼になにがあったんでしょうか。
病弱だった事もあり引っ込み思案で後ろ向きな姫路さんが明るくて前向きな明久の行動がきっかけで少しずつ良いほうに変わっていく過程はとても可愛くて好きなんだけど、やや明久側の行動に含みを持たせた流れになってるのがとても気になる。この流れで明久が「姫路さんの初恋は僕じゃない」って誤解するのには間違いなくもう1クッションあるはずだし、今回の物語でも姫路さん側からでは見えてない不鮮明な部分(神田さんとか神田さんとか神田さんとか)があって、そこが凄く気になりました。もう1冊短編が出るフラグなのか、それとも本編最終エピソードで語られるべき物語なのか。『ウチと日本と知らない言葉』に対する『俺と喧嘩と不思議なバカども』のような、明久サイドから語られる小学生時代の物語があるんじゃないかなあと……原作の残り話数が少なくなってきていることもあり、そういうのを期待してしまう。
それにしても、小学生明久の挿絵が普通に可愛くてもう私は!!!姫路さんは容姿がコンプレックスになるくらいだからもうちょっとふくよかでもよかったとおもうのですが。普通に可愛いので「太ってる」が自分の思い込みなのかそれともガチで肥満体型だったのを葉賀フィルターで軽減させられているのか判断がつかないのでちょっと悩む。
今回も文句なしの面白さだったんだけど、あとがきで「次が本編最終エピソード」と語られているのが、10巻のあとがきでも告知されていたことだけど予想以上に寂しくて。とはいえ本編最終エピソードの後に短編が出る可能性だって本編が分冊される可能性だってまだ微粒子レベルで存在する……!!
▼ 最近の記事
ビーズログ文庫アンソロジー オトキュン!
ビーズログ文庫の人気作品が大集合!「死神姫の再婚」の最強夫婦が教師と元生徒のイケナイ関係に!?「双界幻幽伝」の朧月が輝夜姫になって引きこもり…え、蒼刻が求婚!?「おこぼれ姫と円卓の騎士」のおこぼれ女王がマフィアのボスって、どういうこと!?ほか「闇の皇太子」「瑠璃龍守護録」「戦う王女」シリーズの短編を掲載。ここでしか見られない設定で胸キュン満載にお届けします。 (「BOOK」データベースより)
「ですから、今から少しでも学園の雰囲気に慣れておきたいので、来月の文化祭を一緒に回ってほしいんです。いえ、決して下心はありません。純粋な職業意識からです。手を繋ぎたいなどと贅沢は言いません。隙あらば人気のないところに行こうなどとは思っていません。そもそもあなたがお化け屋敷なんかで怖がってくれないことは分かっています。くそ……ああ、失礼。とにかく下心はありませんし、食べたい物があればなんでも奢りますから」
カシュヴァーン様 マジ残念(挨拶)
期待の更に上を行く最初から最後まで全開に残念なカシュヴァーン様に腹筋を破壊されましたルアークのツッコミがまた的確すぎて……本編がシリアス入っててこういう能天気なお話が殆どなかった分、余計に破壊力が……
ビズログ文庫の人気作・期待作の番外編を集めたアンソロジー。シリーズの中でマトモに読んでるのが「死神姫の再婚」のみでほぼそれ目当てで買ったのでちょっと他の作品についてはよく知らないんですが、多分「神とある国の物語」以外は完全なパロディ・パラレルネタな外伝の詰め合わせのようです。
個人的に「死神姫」以外で一番のお気に入りだったのは「おこぼれ姫と円卓の騎士 アンラッキースパイシーラブ」。突然マフィアの次期頭首候補として指名されてしまったヒロインが警察官のデュークと自分の立場を隠して恋に落ちるお話。実の兄をはじめとしたマフィアのファミリー達に振り回されながらも、ただ状況に振り回されるのではなく、彼らの上に立つ為の力を付けながら最終的には彼らを撲滅するため頑張ろうとする姿が男前過ぎました。
元の作品は、中世ファンタジーらしいよ!↓

「さっさと頭を下げなさい!」←この女王様が、スゴイ!!!
ソルヴェール国の第一王女・レティーツィアは、将来自分が“女王になる”ことを知っていた??。結果、優秀な兄たちの“おこぼれ”で王位が転がり込んできたレティは、王の専属騎士団(ナイツ・オブ・ラウンド)を作るべく、漢(おとこ)の中の男と評判の騎士・デュークを強引に勧誘。けれど彼は「『おこぼれ姫』の愛人と呼ばれるのは願い下げ」と一刀両断!!ますます彼がほしくなったレティは……!?第13回えんため大賞優秀賞受賞作!!
もうひとつ面白かったのは「双界幻幽伝 竹取物語だけどかぐや姫は月に還りたくないそうです。」。以前だれかにオススメされた時に聞いたときはヒロインの引きこもり属性がとても気になっていたんだけど、舞台が中世日本になったせいで聞いていたほど引きこもり属性的ななにかは感じず、その分、蒼刻の無双っぷりと静心のシスコンぶりが光っていたような。次から次へと無茶振りをふっかける静心の鬼舅具合とあるときは悠々と、またある時は必死に静心の出す試練を乗り越えていく蒼刻のやりとりが楽しかったです。
元の作品は、中華ファンタジーらしいです。

噂の「天然公主」は超引きこもり! 幽霊もビックリの中華ファンタジー開幕!
姚朧月は死者の霊=幽鬼が見える少女。ユーモラスな幽鬼に囲まれて育ったので、感性がちょっと変わっている。──ついたあだ名が「天然公主」! そんな彼女のもとに、劉蒼刻という武人がやってきた。幽鬼が見える朧月にどうやら依頼があるらしい。嫌がる朧月に、「とりあえず連れ出せば、あとはなるようになるだろう」と、蒼刻は無理やり連れ出してしまい──!?
しかし、本編とリンクがやや強いせいで世界観・キャラがつかみきれなかった「瑠璃龍守護録」と「神とある国の物語」、登場するキャラ数が多い「闇の皇太子」の3つに関しては、正直原作読んでないと厳しいものがある気がする。各作品、それなりに未読者への配慮はあるんですが……正直元作品のあらすじと簡単なキャラクター紹介くらいは載せてくれてもよかったんじゃないかなあ。楽しめた2つも含めて、世界観設定自体を変えてしまっている作品が殆どだったため結局これどういう話なんですかという話が多くて、そこはちょっと残念でした。
とりあえず、「おこぼれ姫」と「双界幻幽伝」はちかいうちによんでみたいとおもいます。
人類は衰退しました 7
「A拒んでますし!」
「ノンケにはちょっと強めのきっかけがいるんだ」
この人はもう手遅れなんです。
Yさんは至急B×Aに関する詳細レポートをまとめてください(真顔)
憎さあまって可愛さ百倍の憎み愛カプで壁ドンとかどうしろというんですか!!体格差のせいで押さえつけられたら抵抗できないけど意思だけは屈しない受とか!!体格差で勝ってるけど微妙に自分の行動に戸惑いを感じちゃってる攻とか!!最高じゃないですか!!!97Pの挿絵だけで死にましたほんとうにありがとうございました!!!なんか本編関係ないけど死ぬかとおもいましたかわいい!!
そんなわけで悪がき2人の壁ドン展開にYさんも私も大興奮なシリーズ第7巻。特徴的だったキャラクターデザインが変わってしまって新装版が出た時は正直かなりモヤっとしたのですが、間にアニメを挟んだせいか上手い事絵師変更の違和感はさほど感じずに物語りに入る事が出来ました。妖精さんだけはどうにも違和感ありますが、今だ……。
3人の問題児とその後ろに立ちはだかるモンスターペアレントと対決する「妖精さんたちの、ちいさながっこう」。男子2人+女子1人の複雑な家庭環境および三角関係(含:BL)にYさんとともに萌え転がったりしてたのですが、それはそれとして主人公の魔女っ娘姿に萌えざるをえませんでした。三人の問題児達を突き放しながらも過去の自分と重ね合わせて最終的には見捨てないようすがとてもかわいい。だが正直色々な意味でB×Aに全てを持っていかれた気がしてならない。彼らの壁ドンについてYさんと語り合いたい。
後半はヒトモニュメント計画の最中に記憶を失って目覚めた“わたし”が事態を解決するため奔走する「人類流の、さえたやりかた」。しょっぱなからクスノキの里が壊滅してて助手さんもYもお祖父さんもいなくて“わたし”は拘束されていたらしき痕跡があって、一体何が起こったのかと少しずつ遡っていきながら、正体もよく解らない“敵”に立ち向かう事になり……そこはかとなく感じていた違和感に対する答えが一気に突きつけられるラストの展開がすごかった。
しかし、どちらの話もとてもおもしろかったけどなんというか妖精さんのいやし分が足りない。もっとしっちゃかめっちゃかにしてくれちゃっていいのよ!!
ルートダブル - Before Crime * After Days - √Before
Xbox360で発売されたアドベンチャーゲーム「ルートダブル」のノベライズ。とある事件の顛末を立ち位置が全く違う2人の主人公の視点から追った物語で、今回発売された「√After」と「√Before」はひぐらし・うみねこでいう出題編のような位置づけになっています。√Bはごく普通の高校生“天川夏彦”が友人たちと共に、コミュニケーターと呼ばれる超能力者を狙うテロ事件に巻き込まれていく中で過去のトラウマと対面し、それを克服していく物語です。
√Aが「メルトダウンした原子力研究所の中で繰り広げられる極限系人間ドラマ/サスペンス」なので√Bを読むといきなりの女子高生ハーレム状態と学園異能モノ具合に驚くことになること請け合い。確かに√AでもBCと呼ばれる超能力の存在については語られてきたんだけど、表立ってこの能力を使うキャラクターが存在しないため完全にステルス設定化してるんですよね。
9年前、偶然ラボでの事件に巻き込まれて大きな精神的外傷を負った幼なじみの少女と、彼女を巻き込んだ事を負い目に感じながら平穏な生活を望むようになった主人公。殻に閉じこもる事で閉じた世界の中で停滞していた彼らが、√Afterで語られたラボでのメルトダウンに巻き込まれたことを切っ掛けに少しずつその心を開き、BC能力を開花させながらかつての姿を取り戻していく姿が熱い。
少しずつ前向きに変化していった夏彦に9年前の事故の真実の一端が襲いかかる場面は本当に衝撃的なんだけど、原作でこの事実を知ってからノベライズを読み直すと改めて……な場面が結構あって、面白かった。特に、夏彦の事をずっと見守ってきた彼女の行動の不自然さとその意味がわかると、なんというか胸にじんわり来るものが。周りの人々の本当の気持ちに触れ、自分がどれだけ彼女達に愛されて育ったのか目の当たりにすることで完全に「かつての自分」を取り戻す姿が頼もしい。
原作ゲームプレイ済視点からいくと彼女の動きをはじめとして小説だからこそ見えやすくなっている行動がある一方で、微妙にカットされたり変更された展開が多かったのが気になりました。√Aでも渡瀬がトイレで“彼女”の幻影を見るシーンがカットされたりしてるんだけど、√Bは夏彦達の放課後ショッピングや徹夜カラオケの描写が削られてしまったのがちょっと残念。個人的に、平穏な日常を象徴する二大ほのぼのエピソードだったんだけどなあ、あれ。
原作のままでいくと次の√Currentがかなり短いシナリオになるはずなので、これまでの微妙に変更された場面はそちらに関わってくる伏線なのか。多分グランドエンディングルートに行くんだろうけど√Doubleのグッド・ノーマルエンドがとても好きなのでそちらのエッセンスも盛り込んで欲しいなあというか、残りのルートの書籍化の際は小説ではないと見られないなんらかの仕掛けに期待したいです。
なお、原作ゲームではどちらのシナリオから進めても良いつくりになっていて、時系列的には√Afterの前、もう1人の主人公である“笠鷺渡瀬”が記憶を失う前の物語になるんだけど、√Afterに関する重大なネタばらしがあるので個人的には√After→√Beforeの順番で読み進めることをオススメしたいです。というか、√Aはやはり渡瀬の正体知らないまま読んで欲しいよね。記憶喪失のヒーローまじかっこいい。
そして大事なことなのでもう一回言うけどPC版は9月28日発売ですよ!!
ルートダブル - Before Crime * After Days - √After
Xbox360で発売されたアドベンチャーゲーム「ルートダブル」のノベライズ。とある事件の顛末を立ち位置が全く違う2人の主人公の視点から追った物語で、今回発売された「√After」と「√Before」はひぐらし・うみねこでいう出題編のような位置づけになっています。√Aはレスキュー隊の隊長“笠鷺渡瀬”がメルトダウンを起こした原子力研究所「ラボ」の事故の最中、なぜか記憶を喪ってしまい??という所から始まる物語です。
記憶が不確かなまま同僚のレスキュー隊員とともにある時は火事に立ち向かい、要救助者を助けながら研究所脱出の手がかりと、被爆を防ぐ為に1時間1本の摂取が必要な薬剤“AD”を求めてラボ内を捜索していくのですが、脱出の手がかりはまるで掴めないにもかかわらずADが人数分確保できなかったり他殺体が見つかったり……と割と絶望的な状況。徐々に生き残った人間達の間でも互いに不信が芽生え始めて…という流れは、本当に絶望的な展開しか予想できなくて、ゾクゾクする。
記憶を失った渡瀬が、状況だけでなく時折聞こえてくる幻聴や自らの記憶の不整合さに不安と不審を覚えながらもとにかく仲間を救う為に出来る限りの事をしようと精一杯奔走する姿が不器用だけどかっこいい。苛酷な現実に押しつぶされそうになりながらも最後までなんとか活路を見出そうとする姿が印象的でした。そして、ゲームプレイ済だと最後に立ち上がったあの人の姿にニヤリとしてしまう。
…しかし、良い意味でも悪い意味でも原作を忠実にノベライズしているだけ感が強くあり、原作ゲームプレイ済だとあまり買う意味がないかも。基本的に私なんかは、ノベライズはゲームとは別の視点や、ゲームでは描ききれない隙間、会話劇だけでは表現しきれない主人公以外の感情の動きなんかを少しでも描いてくれるのを期待して買うのですが。特に、今回ノベライズされた部分はエンディングをコンプしようとすると余裕で何度か読み直す羽目になるので…なにかプレイ済でも楽しめる仕掛けが欲しかったです。……個人的にはあと挿絵欲しい(表紙絵がとても良いだけに、本文に一切挿絵がないのは残念)
ただ、ゲームシナリオ→小説への落としこみというか、再現度は非常に高いのでゲーム未プレイの人がストーリーを追うのには向いているかと思います。ちなみに、PC版は9月28日発売ですよ!!!Xbox版はハード的に手が出せない……というかたは是非ともこちらを。分岐エンドがかなり多いので(殆どがバッドエンドだけど)、小説を読んだ後でも楽しめると思います。
魔王様げ〜む! 3回戦
女子が好きすぎる魔王ディンゴに敗北し、姿を変えられて女子として魔王専属メイドとして魔王城で働く事になってしまった元勇者レイモンド(通称レモンちゃん)が繰り広げるTS系ドタバタコメディ第三巻。事実上「メガミ文庫」というレーベルごとお亡くなりになったと思われていた(リンク先参照)のですが、電子書籍という形で奇跡的に新刊刊行となりました。……という経緯があったので、紙媒体での刊行が絶望的なことくらいは小さい事だと……現実を受け止めないと……(遠い目)
幼なじみの王女様の登場と同時に元の姿に戻れなくても自分の済んでいた人間の住む世界へと帰るという選択肢が提示されて、現在の状況と自分の気持ちを見つめなおす事を強いられてぐるぐるするレモンの姿が大変美味しかった。少しずつ育っていく気持ちを素直に表す事が、最後の最後まで“女”としての自分を完全に受け入れる事が出来ずないレモンが、ディンゴへの気持ちを男としての矜持と敵対心で覆い隠そうとする姿が微笑ましかった。微妙に解り辛い遠まわしな魔王からの愛情というかなんというかにもニヤニヤするわけですが、相変わらずのディンゴの平等すぎる全世界への女性への愛にふきださざるをえない。本当に、1回戦からこの魔王は歪まないな!!
2回戦までのノリを持続しながら一応続きが出ても出なくても問題ないような終わりかたになっていて、良くも悪くもここが落としどころなんだろうなあ……というところで落ちた感じ。刊行の経緯からして、完全な打ち切りエンドじゃないのはむしろ救いなんですが。フリーダムさと不遇作品拾い上げに定評のある一迅社文庫あたりが拾い上げてくれるか、もしくは同人誌で続きが読めたりしないかなあ。まだまだ展開させようのありそうなお話だったので、ここで終わってしまうのはとても寂しいです。
あと受注限定生産でも構わないので、紙媒体でください。
“夕顔” ヒカルが地球にいたころ……(2)
是光が頼まれたのは、かつてヒカルと心を通わせた引きこもり少女・夕雨との『約束を果たす』ことだった。ところが、その約束の内容が判然としない。ヒカルも教えてくれず、困っているところになんだか話がややこしくなってきて……というお話。
是光のフラグ建築力が順調すぎる。このままだと平均で1巻1人ずつフラグを立てていく感じになってしまうがよろしいのか!!今回の夕雨はともかくとして、知らないところでフラグを建築して一切気づいてない是光が罪作りすぎて、是光の反応に一喜一憂する式部さんが可愛すぎてつらい。
日陰で傷みを解り合おうとするヒカルと彼女と似たような傷みを持ちながらも日向へ連れ出そうとする是光。全く対照的な二人に夕雨が惹かれていく姿が甘酸っぱく、彼女に関わった人間達が少しずつすれ違ってしまった結果ともいえる真実はせつなかった。正直今回も式部さん可愛すぎたので是光の初恋にかんしては「なん……だと…!?」となってしまった自分がいるけど。
ヒカルの死の真相といい、後ろに色々と黒いものが見え隠れしていてそっちが明かされていくのも楽しみ。
アニソンの神様
宝島社様より献本をいただきました!
アニソン大好きなドイツ人の女の子・エヴァには「いつか日本でアニソンを歌いたい」という夢があった。日本への留学の話に飛びついた彼女は憧れの地で“アニソンバンド”を作ろうと、メンバー集めに奔走する…というお話。
ドイツからやってきたエヴァをボーカルに、才能は髄一だけど周囲に溶け込めず孤立しているギター、隠れオタクのドラム、ボカロPのキーボード、ナンパなベースと色々な意味でばらばらだった5人が少しずつ1つのバンドとしてまとまっていく姿がとても青春でした。また、「アニソンもの」ということでオタクとしては凄くニヤニヤできるネタが多いんだけど、それ以上に「アニメソング」というジャンルだからこその懐の深さというか、アニソンのなんでもあり感が物語を絶妙な感じで包み込んでいる感じというか、そういう雰囲気が凄く良かったです。
しかし、作中のアニソンの選曲がイチイチ絶妙すぎるんだけど、クライマックスのライブシーンの選曲は本当に卑怯。1曲目から2曲目の入りでもう無条件にテンション上がってしまうわけですが、3曲目マジ卑怯。アニメ見て無いけど曲は知ってるってオタクも大量にいるはずの超名曲ですよね。(というか私もアニメ自体は見て菜いんだけど)
エヴァがカラオケで歌う場面やライヴシーンの、なんともいえない臨場感も凄くぐっと来るものがあって、とてもよかったです。面白かった!
"葵" ヒカルが地球にいたころ……(1)
気はいい奴だけどとにかく目つきや表情がきついせいでヤンキー呼ばわりされたり噂に尾ひれがつきまくって皆に敬遠されている是光が、学園のイケメン皇子の幽霊になつかれてしまい、彼の“心残り”を晴らすために行動することになるお話。
それぞれの理由から友人関係に恵まれず、孤独を感じていた是光とヒカルが、だんだんとかけがえのない「親友」になっていく姿がたまりませんでした!!上手く笑えない不器用ヒーローと、上手く泣けないイケメン皇子ってもうその組み合わせだけで萌えるんですけど!!それだけでなく、ヒカルが女の子にだらしなくなってしまった理由とか、ヒカルが是光に声をかけた理由とか、是光の字が上手い理由とか是光が謝られることが苦手な理由とか細かいところでジワジワツボを刺激してくる。凄くジワジワくる。
男子二人のやりとりだけでもうご飯おかわりいけるんですけど、女子がまた物凄く可愛い。クールビューティなツン女子だと思われていた式部さんの意外な一面が暴露されるところからどんどんデレが入ってくる流れとか本当に可愛すぎて、困る。葵がかたくなに閉ざしていた心を少しずつ溶かしていくのもよかった。
ヒカルが死んだ理由や彼を取り巻く人間関係など今後に続くような謎も多くあって、続きが楽しみでしょうがないです。
オカルトリック 02
宝島社様より献本をいただきました!
狐憑きの探偵助手・玉藻と引きこもりのオカルト探偵のねえさんと、最強メンヘラ・イソラたんが繰り広げる物語。
なんか最初から最後までどこまでもイソラたんのメンヘラキ女っぷりに振り回され、そして圧倒された感が強いんだけど同じくらいねえさんの過去から現在に繋がるまでの物語の破壊力も凄かった。イソラの妄執ともいえる強く凶悪な愛と、どんな酷い目に遭っても手放せなかったヒトカケラを一身に注ぐねえさんの愛と、全てを知り、そしてその上で受け止めようとする玉藻の愛と。うまく言葉にできないけど、3人の綴ろうとする「愛」があまりにも強烈で。それぞれの「幸福」を追い求める3人の繰り広げる、文字通りの「愛」の物語に圧倒された。
ラストがまた、終わってみるとここ以外に落としようが無いって思うくらい絶妙な所に落とされてて。確かに、この3人がそれぞれの形で「幸福」になるにはこの形しかないよなあ。イソラとねえさんが本当に幸せなのかどうかはわからないけど、そうなってると信じたい。だって、これは3人の「愛」の物語であると同時に「幸福」の物語でもあったんじゃないかなと思うのです。
ほんと、面白かった。次回作も楽しみにしてます。
玉藻のメイド服姿に挿絵がなかったのだけが心残りです。