リューラと対峙した際、自らの記憶について違和感を覚えたルシルは自らの過去の記憶を掘り起こす。それは彼が人をやめる前、幼い頃の記憶で……。
妹思いの少年が「ルシル」になるまでの物語
ルシルの過去と、エリス家が代々つないできた『悪魔』にまつわる物語。エリス家の狂ったしきたりも「血」のなせる業だったんだな……フェリスの過去は本編でも語られていたけど、本当にギリギリのところでルシルの助けが間に合って最後の人間性を失わずに済んだんだな、と。イリスがもう少し才能を持って生まれてきたら、母親がもうひとり子供を作れていれば……本当にあとひとつボタンの掛け違えがあったら…と思うとゾッとする。それにしてもいよいよリューラがすべての黒幕感出してきたな……(いやその後ろに更に何かいる可能性高そうではあるんですけど)人の枠から外れてしまったルシルが、それでも最後の人間性の証であるかのようにフェリスへの情を持ち続けているのは救いなのか絶望なのか。最後のエリス兄妹のやりとりがたまらなく尊い。
それにしても、フェリスも助けが入るの相当ギリギリだったなとおもうんですけど、今回の話って冷静に考えると1巻で複写眼を暴走させたライナが即処刑でもおかしくなかったはずなのに2年も牢屋に入ってた理由がおぼろげに見えてきますよね。ひょっとしてこっちも結構ギリギリのところでシオンの助けが入った感じだったのでは……。
愉快で楽しいローランド編の「舞台裏」
今回の雑誌連載短編はフェリスが新興宗教に潜入捜査してその組織が集めている金を巻き上げようとする「すとれんじ・さいと」と勇者の遺物と思しき謎のハサミにローランドが襲撃される前後編の「うぃっしゅ・おん・あ・すたあ」。「うぃっしゅ・おん・あ・すたあ」が襲撃してくるのがハサミとか生首のままツッコミ入れまくるライナとかそのへんのコミカル要素を全部うっちゃってとにかくしんどい。これまでだって平和なローランド編と同じ時系列で展開されるローランドの闇!みたいな話は多々あったけど、今回のはまさに直球にシオンとライナとフェリスが楽しく笑ってるところでシオンが一人だけ舞台袖に引っ込んで舞台裏で起きてる舞台装置の不具合を慌てて繕うみたいな話だったので、やはりここにも本当の意味で平穏なんてなかったのかみたいな……シオンにとってそれだけの価値のある、守りたい日常であったことは確かなんですけども。
例えばこの話を踏まえると前巻の「持つと死にたくなるナイフ」とかも今回のハサミと同じパターンだったのでは疑惑とか浮かんできますよね。冷静に考えるとこの件、シオンが誰もいないところでナイフ握ったら普通に危なかったもんな。