ゲイルフィックラントとガスタークの戦争に、反ローランド同盟のリーダーとして参加することになったライナ。その戦場では『忘却欠片』が殺戮兵器として用いられ、ガスタークからの刺客に生命を狙われ、更にガスターク王レヴィアの持つ強力な大量破壊兵器まで待ち構えている。絶望的な状況をなんとかできるのは、自らの内なる力に覚醒したライナだけらしく……。
過酷な戦場で、内なる自分の「声」を聞け
ライナが前向きになるたびにどんどん話が不穏に、絶望的になっていくのはなぜなのか。この戦場で大きな犠牲を払うことで以後の戦場では国際的な取り決めで『忘却欠片』の使用に制限を掛けさせる──というヴォイスの言い分には一応納得できるものがあったけど、それが真意なのかどうかもわからないしなあ。そもそも、この言い分って(なにもないよりかはマシだけど)概ねシオンがネルファで殲滅戦をやったのと同じ理屈になっちゃうのでそれじゃあ何のためにライナがローランドを出たのかって話になっちゃう気がしなくもないんですよね。『忘却欠片』による大量殺戮、ガスタークの刺客達の襲撃……絶望的な戦況の中で遂にライナは倒れ、自分の中にいる『すべての式を解く者』の声を聞く。内心「化物」である自分の能力を恐れ、戦争で他者を殺すことを避けてきたライナが、自分は「人間」だと、仲間以外の人間を殺戮することを選ぶというのはなんかほんとうに……やるせないというか……。
ここにこの短編入れるの人の心がない
ライナが犠牲を払って「前に進む」ことを選んだこの話の後で、後ろに収録された『追憶から未来へ──』という短編がまたひどい。いや物凄く良かったのですけど本編の展開の後にこれよませようとするのひとのこころがない。ネルファを脱出してベリス主国にたどり着いたくらいの時系列。もう戻らない、かけがえのない日々の夢を見ながらシオンと決別するライナと、魘されているライナを心配するキファとフェリスを描くお話なんですけど、取り戻せない日々の夢を見ているライナがしんどいし、シオンとのやりとりの返答として「もう笑ってねえ」っていうとこで泣いちゃうし、そんなライナが自分のことを頼ってくれないことにもどかしさを感じるキファやフェリスの心の動きがニヤニヤしてしまう反面切ない。しかしもっと自分に頼って欲しいと思うフェリスがライナに気を使われて悔しい反面めちゃくちゃ嬉しくなっちゃうの本当にニヤニヤが止まりませんね。フェリスさんほんとうにライナのこと大好きだな!!
かつてローランドで過ごした騒がしかったけど穏やかな日々がもう戻らないと知りながら、それでもいつか3人で手を取り合う未来を諦めてはいない3人の姿が印象的な短編でした。いやほんとでも本編あの展開の後にこの話もってくるのひとのこころがないよ……。