映像編集が趣味の高校生・松尾は高校に入って以来疎遠になっていた幼馴染の織田から「ユーチューバーやろうぜ」と誘われる。一攫千金を夢見る織田に対して松尾は「男子高校生4人のゲーム実況ユニット」を提案し、織田と同じバスケ部の坂上、軽音部に所属する先輩・夏目を仲間に加えて実況ユニット『どうぞ愛をお叫びください(愛ダサ)』を結成する。再生数が伸びないことに頭を悩ませながらも松尾の家に集まり4人でゲームをやる日常は予想外に楽しかったのだが、投稿した動画がバズってしまったことをきっかけに4人の関係に亀裂が生じはじめて……!?
「仲良し男子高校生ゲーム実況ユニット」のウラオモテ
有名実況者となってしまった男子高校生4人のお話。実況者という今どきの題材を扱っているから当たり前なんですけど、テレビやニュースに対する感覚が本当にイマドキでジェネレーションギャップを感じざるを得なかった。える知ってるか、今をリアルタイムに生きる男子高校生はみんな21世紀生まれなんだぜ……。元々別に4人で仲良しという関係性ではなかった彼らが実況ユニットを組むために「仲良し4人組」という関係性を恣意的に構築していくというのが印象的な物語でした。幼馴染の織田と松尾、同じ部活で付き合いのあった織田と坂上、松尾に興味を持ってメンバーに加わった夏目。一部が微妙に知り合いという元々が難しい関係性の上に松尾に執着する織田、同じく松尾に興味を抱く夏目、人気と華のある織田・夏目の人気に嫉妬する坂上……という要素が加わって仲良くしていてもどこかから聞こえてくる関係性が軋む音にビクビクしてしまう。
そんな中でとある動画がバズって彼らは有名実況者となってしまう。「収益化」によって発生したお金の分配を巡ってひと悶着あり、彼らに惹かれて集まったはずのリスナー達からの無邪気な評価が突き刺ささり……それによって彼ら4人の間でもこれまで可視化されていなかった様々な歪みが剥き出しになっていって……全体的に男子高校生の無邪気なイチャイチャを楽しむというより、「仲良し男子高校生4人組」として「消費」されていく彼らのそれぞれの心情が胸に刺さりました。ナマモノジャンル、難しいね……(最悪コメント)
金銭問題・女性問題・ステマ・炎上・彼女バレ・リアルバレ……と、実況者関係で思いつく地雷全部踏みました!!な展開から業火の中でのクライマックス。色々あったけどやっぱり「この4人」だからいいんだと今にも置いていかれそうなメンバーに残り3人で手を伸ばしていく姿が印象的でした。最後までどこかシリアスになりきれない彼らのわちゃわちゃが大変可愛くてこれは人気も出ますよねと。Youtubeで配信者になるために作り上げられたハリボテのような関係だったとしても、様々な紆余曲折があったとしてもちゃんと後から「中身」が入っていってたんだなあとじんわりしました。
4人だけでは完結しない関係性がとても良かった
メインは「愛ダサ」の4人なんだけど、4人の周囲に様々な人々が居て、彼ら彼女らが物語に少しずつ影響を与えていくのもとてもよかった。個人的にはヒロイン・彼女アリな男同士の巨大感情が性癖なので、織田と夏目にそれぞれ彼女がいて松尾にも恋愛ではないかもしれないけど「想い人」が居て……という構図には大変興奮する。生放送の真ん中で「モテたい!!!」と叫んでいた坂上は強く生きて欲しい。「愛ダサ」の活動とともに語られていく、松尾が中学時代に経験した甘酸っぱい物語。それがただの過去話・きっかけ作りとして語られるのではなくて現在の物語にも変化と影響を与えていくのがとてもよかったです。彼女が実はコメント欄にいることには思わずニヤニヤしてしまうし、行き詰まったときに彼女と交わした言葉が実感を伴って蘇ってくるのも、愛ダサでの活動が最終的に彼女と再び巡り合うための道標となっていくのも好き。(愛ダサの活動によって遠回りしてしまったようにも見えるけど、あの活動がなかったらあのPVいつまでも完成しなかった気がするんですよね……)
それはそれとしてここまでの関係性を前提にして、織田が松尾に向けるクソデカ執着が大変美味いという話をついしたくなってしまう……個人的に本編での彼らの関係性には安易にそういう言葉で消費してはいけないような触れたら壊れそうなセンシティブな雰囲気があってそっとしておきたい気持ちなんですけど、エピローグでイチャイチャしすぎて桜田さんに「イチャイチャするな」って言われる織田・松尾と松尾の反撃で不意打ち喰らって頬染める織田はあまりにも可愛かったのでダメだとおもいます。あれはダメだよ!!!!(好き)